先輩、それ絶対わざとじゃないですよね!?

naomikoryo

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番外編⑦社会人編・第4話 「風間晴翔、ご挨拶で情報漏洩しすぎ問題」

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大事な日なのに、胃が全然動かない。
まさか――

 

(親へのご挨拶に、すでにプロポーズ済みで挑む日が来るなんて。)

 

というのも、あの男――風間晴翔は、地元情報番組の生放送中にスーツ&花束&指輪でプロポーズしてくれた、
私の彼氏である。
しかも、全国ネットだった。
同棲中であることも、靴下が勝手に揃ってることも、冷蔵庫ゾーンの話も、全国に流れた。

 

で、今日。
その彼と、私の実家に“結婚のご挨拶”に行く。
すでに挨拶もプロポーズも終わってるのに。
というか、同棲すら、私が「一緒に住むから」と言った時点で、うちの両親はふたつ返事でOKしてくれていた。

 

母なんて「柚葉が靴下揃えてるってテレビで言ってた彼ね、よろしく頼むわ~」と笑っていたし、
父も「まぁ……あんな全国で言ったなら責任取るしかないな」と苦笑しながらうなずいていた。

 

――そう。
両親側は、すでに100%歓迎ムード。
なのに。

 

問題は、風間晴翔本人。

 

彼は、いま――
柚葉家の玄関前で、顔面蒼白&手汗で扉に反射してるレベルで緊張している。

 

「ねぇ……大丈夫?」

 

「……無理かもしれません。」

 

「いや、玄関先で“無理”って言わないで。」

 

「だって、柚葉さんのご両親ですよ?
 僕の人生の審査員みたいなものでしょ?」

 

「審査はとっくに終わってます。」

 

「え、でも……でも……面接って、毎回ゼロからっていうじゃないですか……!」

 

「これ、面接じゃなくて“家族会議”ですから!」

 

そして、私が背中を押してピンポンを押し、
ガチャッと開いた扉の向こうには、母の笑顔と父のあいまいな笑み。

 

「よく来たねぇ、風間くん。どうぞどうぞ、上がって。」

 

「お、お邪魔します……!」

 

玄関で靴を脱ぐ手が震えていて、
玄関マットに靴を揃えるのに3回やり直してた。
(落ち着け、イケメン……!)

 



 

テーブルには、母の手料理。
さすが母、見た目も味も完璧で、料理上手な晴翔も「すごい……」と目を輝かせていた。

 

会話も順調だった、最初は。

 

母「テレビのプロポーズ、ほんと笑ったわ~!
  あの“靴下の妖精”って表現、最高だったわよ。」

晴翔「ありがとうございます……でもほんと、最初、柚葉さんが妖精だって気づいてなかったんです。」

柚葉「だからそこ掘り下げなくていいから。」

 

父「うちは最初、あんまり細かいこと言わない主義でね。
  娘が“この人がいい”って決めたら、それでいいって思ってるよ。」

晴翔「……うっ(感動)。」

 

柚葉「泣かないで。まだ始まったばっかりだから。」

 

ところが。
ここから、風間晴翔、暴走モード突入。

 

晴翔「でもほんとに……柚葉さんには、毎日助けられてばかりで。
   たとえば、あの……冷蔵庫とか、食事とか、生活の7割くらいは支えてもらってて……。」

 

母「まぁ、仲が良いのねぇ。」

 

晴翔「はい。たとえばこの前も、僕、歯ブラシ持ったまま寝ちゃって、
   朝起きたら口の中ミントで死にそうだったんですけど、
   柚葉さんが“これはもう使い捨てにしよう”って冷静に処理してくれて……」

 

柚葉「……その話はやめよう。」

 

晴翔「あっ、あと、寝言で“冷蔵庫に入りたい”って言ってたらしくて……」

 

母「えっ、どういう夢?」

 

柚葉「知らないです。ていうかそれ、初耳です。」

 

晴翔「え、言わなかったっけ?あと、“靴下の左だけ逃げる”って寝言も……」

 

父「……なかなか個性的だね。」

 

柚葉「ほんとそれなんですよ。」

 

晴翔「あ、でも!柚葉さんは、寝起きが最強に可愛いんですよ!
   こう、目が半開きで、ふにゃってしてて、あれはもう、拝みたくなるというか――」

 

柚葉「やめろ!!!!」

 

完全に脱線した。
プロポーズの挨拶が、冷蔵庫と寝言と寝起き顔の実況中継になってる。

 

(なにしてんのこの人!?)

 

でも、ふと横を見ると――
母が笑いすぎて肩を震わせていた。
父も苦笑しながらも、グラスを置いて、ぽつりと言った。

 

「……まぁ、うちの娘を、毎日笑わせてくれてるなら、それがいちばんだよ。」

 

 

その言葉に、晴翔はぴしっと背筋を伸ばし、深く頭を下げた。

 

「一生、大事にします。
 どんな寝言でも、どんな靴下でも、全部受け止めます。」

 

「うん、それ自分の寝言だけどね。」

 

「はっ……!!」

 

笑いがまた広がる中、私は肩の力が抜けた。
家族になっていくって、きっとこういうことなんだろう。
完璧じゃなくていい。
バカで、天然で、でも、あったかい。
そんな彼となら、きっとやっていける。

 

そして帰り際。

母は、手土産と一緒に、こう言った。

 

「これからも、全国の皆さんに、もっともっと“家の中身”見せてちょうだいね?」

 

「……できれば局外では見せたくないです。」

 

父も笑いながら一言。

 

「たまには寝言、録音して送ってくれ。」

 

「やめて……やめて父さん、それはただの拷問。」

 

でも――
笑い声に包まれた玄関を出る頃には、
晴翔は少し、ホッとした顔をしていた。

 

そして帰り道、手を繋いだまま言う。

 

「……柚葉さんの家族、あったかかったです。」

 

「でしょ?だからって全部さらけ出すのは違うけどね。」

 

「でも、“これが僕です”って受け入れてもらえた気がして、
 ちょっと泣きそうでした。」

 

「うん、泣いてなかったけど、口がゆるんでたね。」

 

「たぶん、感動と一緒にヨダレも出てました。」

 

「帰ったら、うがいして。」

 

私たちの結婚は、もうすぐ。
そして、彼の“天然との戦い”も、きっとずっと続く。

でも、それでいい。
この人となら、きっと、笑いながら歳をとっていける気がするから。
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