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第五十五話:「あなたの目が、私の“女の部分”だけを震わせてくるのが、悔しいくらい嬉しい」
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“その目で、私を見つめないで”
あれは、本心だった。
でも――
本心の、ほんの一部にすぎなかった。
あの瞬間、
あの子の目に、私は“女”として映っていた。
それが、悔しいくらい嬉しかったのだ。
**
視線なんて、これまでいくらでも浴びてきた。
取引先の男たち、若い社員、営業先の編集者。
好意や敬意や、時には打算すら混じった視線を。
けれど――
“見られている”と感じるたびに、
私は心のどこかで、鎧をまとっていた。
理奈社長としての顔。
月灯社のトップとしての立ち居振る舞い。
どんな場面でも、決して“女”を見せるわけにはいかなかった。
なのに。
彼だけは、
何の躊躇もなく――
私の“女”の部分だけを、まっすぐに見てくる。
まるで、それが当然のように。
自然なことのように。
その真っ直ぐさが、こわい。
でも、それ以上に、うれしい。
**
給湯室でのあの一言のあと、
私は何事もなかったふりでオフィスに戻った。
彼も、何も言わずについてきた。
その沈黙が、優しさに思えた。
(優しい子……本当に、そう)
私の動揺を悟って、深く追ってこない。
答えを急がせない。
それでも、見ている。
あの目が忘れられなかった。
清らかで、真剣で、
けれど、確かに私を“女性”として見ていた。
(私……まだ、女だったのね)
そんなこと、忘れたふりをしていたのに。
**
夜、自宅。
バスルームの鏡の前で、
ふと自分の顔を見つめた。
肌のハリが衰えてきたことも、
髪の艶が減ってきたことも、
メイクが映えなくなったことも、
全部、自分が一番よく知っている。
でも――
今夜の私は、少しだけ頬が赤い。
たった一人の男の視線だけで、
こんなにも自分が“女”に戻れるなんて。
(あなたは、魔法みたいね)
恋を思い出させてくれた。
身体の奥で、感情が震える感覚を。
心が熱を持ち、
誰かを想うだけで呼吸が変わってしまうあの感覚を――
**
ベッドに横になっても、
思い出すのは、彼の目ばかり。
何も言葉にしていないのに、
あんなにも想いを伝えてくる視線なんて、反則だわ。
私がもう一度恋をするなら、
それはこういう形なのだと、今さら理解する。
言葉じゃなくて、
優しさでもなくて、
“在り方”で伝えてくる恋。
理屈じゃない。
年齢差も立場もすべて越えて、
ただ、目があった瞬間にわかってしまう――
(私はこの人に、恋をしている)
**
こんな風に思われることが、
どれほど幸せか、私はきっとまだ全部わかっていない。
でも。
今だけは、この気持ちに素直になってもいいと思った。
彼の目が、私の“女の部分”を震わせてくる。
それが、悔しいくらいに嬉しいのだ。
あれは、本心だった。
でも――
本心の、ほんの一部にすぎなかった。
あの瞬間、
あの子の目に、私は“女”として映っていた。
それが、悔しいくらい嬉しかったのだ。
**
視線なんて、これまでいくらでも浴びてきた。
取引先の男たち、若い社員、営業先の編集者。
好意や敬意や、時には打算すら混じった視線を。
けれど――
“見られている”と感じるたびに、
私は心のどこかで、鎧をまとっていた。
理奈社長としての顔。
月灯社のトップとしての立ち居振る舞い。
どんな場面でも、決して“女”を見せるわけにはいかなかった。
なのに。
彼だけは、
何の躊躇もなく――
私の“女”の部分だけを、まっすぐに見てくる。
まるで、それが当然のように。
自然なことのように。
その真っ直ぐさが、こわい。
でも、それ以上に、うれしい。
**
給湯室でのあの一言のあと、
私は何事もなかったふりでオフィスに戻った。
彼も、何も言わずについてきた。
その沈黙が、優しさに思えた。
(優しい子……本当に、そう)
私の動揺を悟って、深く追ってこない。
答えを急がせない。
それでも、見ている。
あの目が忘れられなかった。
清らかで、真剣で、
けれど、確かに私を“女性”として見ていた。
(私……まだ、女だったのね)
そんなこと、忘れたふりをしていたのに。
**
夜、自宅。
バスルームの鏡の前で、
ふと自分の顔を見つめた。
肌のハリが衰えてきたことも、
髪の艶が減ってきたことも、
メイクが映えなくなったことも、
全部、自分が一番よく知っている。
でも――
今夜の私は、少しだけ頬が赤い。
たった一人の男の視線だけで、
こんなにも自分が“女”に戻れるなんて。
(あなたは、魔法みたいね)
恋を思い出させてくれた。
身体の奥で、感情が震える感覚を。
心が熱を持ち、
誰かを想うだけで呼吸が変わってしまうあの感覚を――
**
ベッドに横になっても、
思い出すのは、彼の目ばかり。
何も言葉にしていないのに、
あんなにも想いを伝えてくる視線なんて、反則だわ。
私がもう一度恋をするなら、
それはこういう形なのだと、今さら理解する。
言葉じゃなくて、
優しさでもなくて、
“在り方”で伝えてくる恋。
理屈じゃない。
年齢差も立場もすべて越えて、
ただ、目があった瞬間にわかってしまう――
(私はこの人に、恋をしている)
**
こんな風に思われることが、
どれほど幸せか、私はきっとまだ全部わかっていない。
でも。
今だけは、この気持ちに素直になってもいいと思った。
彼の目が、私の“女の部分”を震わせてくる。
それが、悔しいくらいに嬉しいのだ。
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