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第五十六話:「“年上のあなた”じゃなくて、“あなたそのもの”が、僕の人生に必要なんです」
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彼女に惹かれた理由は、いくつもある。
強さ。
優しさ。
美しさ。
大人としての余裕。
静かな情熱。
でも、今日――
ようやく言葉にできた。
(年齢なんか、関係ない)
僕が求めているのは、“年上の理奈さん”じゃない。
“理奈さんそのもの”なのだ。
彼女という存在そのものが、
僕の人生に、必要なのだ。
**
その日、僕たちは編集部で打ち合わせをしていた。
夜に差しかかる頃、予定していた内容をすべて終え、
他の社員たちは帰路についた。
帰ろうと立ち上がる理奈さんに、僕は声をかけた。
「理奈さん……少しだけ、話せますか?」
彼女は少し驚いたように眉を上げ、
それから静かにうなずいた。
僕たちは再び会議室に入った。
あの、ふたりきりになったあの空間。
きっかけは、いつもここからだった。
**
「今日の打ち合わせ……ありがとうございました。
いろいろ配慮してくださって」
「私は、ただあなたの作品に期待しているだけ。
それ以上の意味は――」
「僕はあります」
彼女の言葉を遮るように言ってしまった。
自分でも驚くほど、はっきりと。
(抑えられなかった。もう、理性ではどうにもならなかった)
「……“年上のあなた”に惹かれてるわけじゃないんです」
理奈さんの目が、大きく揺れた。
「あなたの強さも、弱さも、
寂しさも、優しさも……
全部を知って、
それでもあなたを“女の人”として見ています」
「純くん……」
「僕の人生に必要なのは、
あなたじゃなきゃ、ダメなんです」
声が震えていた。
でも、言葉は真っ直ぐに彼女へと向かっていた。
**
理奈さんは何も言わなかった。
ただ、こちらを見ていた。
目の奥で何かが揺れて、
でも確かに“受け止めよう”としている眼差しだった。
静かな時間が流れる。
時計の針の音さえ、遠くなっていくようだった。
彼女の唇が、小さく震えた。
ほんの一歩、近づいた。
それだけで、僕の心臓は跳ね上がる。
でも逃げたくなかった。
ここで目を逸らしたら、きっと一生、後悔する。
もう一歩、踏み出した。
彼女の瞳が、
ほんの少しだけ――瞼を伏せた。
**
ゆっくりと、手を伸ばす。
頬に触れることはしなかった。
ただ、彼女の表情を見つめながら、そっと顔を近づけていった。
そして――
言葉も、理性も、
何もかも越えて、唇が重なる。
**
柔らかくて、あたたかくて、
そして少しだけ震えていた。
長くも短くもない、
ほんの数秒のキス。
けれど、その一瞬に、
僕の人生のすべてが詰まっていた気がした。
**
唇を離したあと、
理奈さんは目を開け、少しだけ困ったように笑った。
「……本当に、もうどうしようもない子ね」
「すみません」
「謝ることじゃないわ」
そして――
「……もう少しだけ、近くにいて」
それは、“許可”なんかじゃない。
“命令”でも、“受け入れ”でもない。
彼女が、自分の気持ちを、
ようやく“誰かに明け渡そうとした”瞬間だった。
僕は頷いた。
言葉にならなかった。
ただ、そっと彼女の手の近くに、自分の手を置いた。
それ以上は、触れなかった。
でも、きっとそれでよかった。
これは始まりなのだから。
恋の、ふたりの、そして“人生の”始まり。
強さ。
優しさ。
美しさ。
大人としての余裕。
静かな情熱。
でも、今日――
ようやく言葉にできた。
(年齢なんか、関係ない)
僕が求めているのは、“年上の理奈さん”じゃない。
“理奈さんそのもの”なのだ。
彼女という存在そのものが、
僕の人生に、必要なのだ。
**
その日、僕たちは編集部で打ち合わせをしていた。
夜に差しかかる頃、予定していた内容をすべて終え、
他の社員たちは帰路についた。
帰ろうと立ち上がる理奈さんに、僕は声をかけた。
「理奈さん……少しだけ、話せますか?」
彼女は少し驚いたように眉を上げ、
それから静かにうなずいた。
僕たちは再び会議室に入った。
あの、ふたりきりになったあの空間。
きっかけは、いつもここからだった。
**
「今日の打ち合わせ……ありがとうございました。
いろいろ配慮してくださって」
「私は、ただあなたの作品に期待しているだけ。
それ以上の意味は――」
「僕はあります」
彼女の言葉を遮るように言ってしまった。
自分でも驚くほど、はっきりと。
(抑えられなかった。もう、理性ではどうにもならなかった)
「……“年上のあなた”に惹かれてるわけじゃないんです」
理奈さんの目が、大きく揺れた。
「あなたの強さも、弱さも、
寂しさも、優しさも……
全部を知って、
それでもあなたを“女の人”として見ています」
「純くん……」
「僕の人生に必要なのは、
あなたじゃなきゃ、ダメなんです」
声が震えていた。
でも、言葉は真っ直ぐに彼女へと向かっていた。
**
理奈さんは何も言わなかった。
ただ、こちらを見ていた。
目の奥で何かが揺れて、
でも確かに“受け止めよう”としている眼差しだった。
静かな時間が流れる。
時計の針の音さえ、遠くなっていくようだった。
彼女の唇が、小さく震えた。
ほんの一歩、近づいた。
それだけで、僕の心臓は跳ね上がる。
でも逃げたくなかった。
ここで目を逸らしたら、きっと一生、後悔する。
もう一歩、踏み出した。
彼女の瞳が、
ほんの少しだけ――瞼を伏せた。
**
ゆっくりと、手を伸ばす。
頬に触れることはしなかった。
ただ、彼女の表情を見つめながら、そっと顔を近づけていった。
そして――
言葉も、理性も、
何もかも越えて、唇が重なる。
**
柔らかくて、あたたかくて、
そして少しだけ震えていた。
長くも短くもない、
ほんの数秒のキス。
けれど、その一瞬に、
僕の人生のすべてが詰まっていた気がした。
**
唇を離したあと、
理奈さんは目を開け、少しだけ困ったように笑った。
「……本当に、もうどうしようもない子ね」
「すみません」
「謝ることじゃないわ」
そして――
「……もう少しだけ、近くにいて」
それは、“許可”なんかじゃない。
“命令”でも、“受け入れ”でもない。
彼女が、自分の気持ちを、
ようやく“誰かに明け渡そうとした”瞬間だった。
僕は頷いた。
言葉にならなかった。
ただ、そっと彼女の手の近くに、自分の手を置いた。
それ以上は、触れなかった。
でも、きっとそれでよかった。
これは始まりなのだから。
恋の、ふたりの、そして“人生の”始まり。
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