25歳差の恋愛指南、それは人生最大の不覚でした

naomikoryo

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第六十八話:「そろそろ2人、どうにかしなさいってば」

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最近の結城理奈と新田純は、明らかに“変”だ。
いや、本人たちはうまく隠してるつもりかもしれないけど、
こっちから見れば、不自然な“自然体”ほど目立つものはない。

会議でたまたま隣になったときの、あの絶妙な距離感。
提出された原稿を渡すときの“ちょっとだけ余る目線”。
打ち合わせ後のタイミングで、同じエレベーターに乗る頻度の高さ。

あれを「何もない」と思える人間がいたら、それはもう鈍感の権化よ。

そして何より――

「最近の理奈さん、顔がやわらかいっていうか……優しくなったと思いません?」

って、昨日編集部の清美まで言い出した。

(でしょ!? やっぱ気づくよね!?)

なのに、誰もそれ以上踏み込まない。
清美ですら、「まあ、良いことですけどね」って話を流す。

(良くないのよ、そろそろ誰かが言ってあげなきゃ)
(あの2人、たぶん“気持ちは通じ合ってる”のに、“関係がどうなってるのか”を自覚してない)
(そして誰より、理奈さんがビビってる)

**

私は別に、自分が“指導役”だった過去に未練があるわけじゃない。
確かに、最初は軽くイイナと思ってたけど。
今はもう、はっきりわかってる。

私には、ああいう真っ直ぐすぎる男は無理だ。
でも、理奈さんには――
ちゃんと、向いてると思うのよ。

年齢差?
社内の関係?
世間体?

そんなもん、好きになったもん勝ちでしょ。

**

昼休み、オフィスのコーヒースペースで、
理奈さんと2人になったタイミングを狙ってみた。

「最近、純くん……雰囲気変わりましたね」

理奈さんは、ほんの少しだけ顔を上げたけど、
目を逸らさずに「そうかしら」と返した。

やばい、この顔は“悟られてるかも”って思ってる顔だ。

「前より、ちゃんと“大人の男”って感じがするというか。
言葉選びも、堂々としてきたし……なんか、守りたい人ができた男の顔になったっていうか」

そう言ったとき、
理奈さんが一瞬だけコーヒーを口に運ぶ手を止めたのを、
私は見逃さなかった。

(ほら見なさい……図星よ)

**

でもそこで私は追い打ちはかけなかった。

理奈さんって、誰かに“押される”と一歩引くタイプだって、
長年見てきてわかってるから。

だから代わりに、こう言った。

「……なんか、いいですね。
ああいうの見てると、“誰かを大事にするって素敵だな”って思える」

理奈さんは、ゆっくりと微笑んだ。

そして、ほんの一言だけ。

「ええ……本当に、そうね」

(あーーもう!それ完全に認めたよね!?!?)

そう叫びたいのを必死に堪えた。

**

午後の会議。
純くんが提出した新作のタイトル案を理奈さんが読み上げたとき。
その声が、どこかやわらかくて、
彼もまた、照れたように視線を落としていた。

(ああ、もう!やっぱり付き合ってるでしょ!)

**

仕事終わり。
帰り際、清美が私にぽつりと言った。

「凜華さん、最近ちょっと優しいですよね」

「は? いつも優しいわよ」

「いや、なんか……あの二人のこと、見守ってます感が出てるっていうか……」

私は笑った。

「放っておいたら永遠に“今のまま”で満足しそうな2人なのよ。
だからせめて、“好き”ってことくらい自覚してもらわないとね」

清美が首を傾げた。

「もう……とっくに“自覚”してるんじゃないですか?」

その言葉に、少しだけ返すのが遅れた。

(……そうね。
たぶん、本人たちだけが“気づいてないフリ”してるだけかも)

**

夜、自宅のソファでスマホをいじりながら、
ふと思う。

(いいな、あの2人。
ちゃんと“求め合ってる”)

私もいつか、
誰かに“守られたい”じゃなくて、
“隣で戦いたい”って思えるような、
そんな恋ができるのかな。

そう思ったら、少しだけ、
静かに胸がチクっとした。

(理奈さん。
純くんを離しちゃダメよ?
あんなまっすぐで、誠実な子、
そうそういないんだから)
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