ねこまど~猫と人がつなぐ、奇跡のカフェ~

naomikoryo

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53)オーナーの息子と対面

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1
「……本当に行くのか?」

 翌日――。

 猫カフェ「ねこまど」の開店前。

 昭人(あきと)は、腕を組みながら峰子(みねこ)を見た。

「当然でしょ。オーナーの息子さんと話をつけなきゃ、何も進まないもの」

「まあ、そりゃそうだけど……」

「にゃ!(ゴー!)」

「にゃん!(突撃だ!)」

「にゃぁ~!(気をつけてな!)」

「いや、お前らは留守番な」

「にゃぁぁぁ!(行きたかった!)」

 猫たちの熱い応援(?)を背に、峰子・昭人・真緒(まお)・琴葉(ことは)の4人は オーナーの息子の家 へと向かった。

2
「……ここ?」

 峰子たちが訪れたのは、オーナーの息子 川島優斗(かわしま ゆうと) のアパート。

 築年数の古い、小さな賃貸物件だった。

 昭人が ピンポーン とインターホンを押す。

『……どちら様?』

「ねこまどの店長、藤井峰子です」

『……は? なんで?』

「お母様のことで、お話があります」

『……』

 一瞬、沈黙。

 やがて、カチャリと ドアが開いた。

3
「……で、何の話?」

 現れたのは、30代半ばの男性だった。

 無精ひげがうっすらと生え、やや疲れたような表情をしている。

「あなたの借金について、お母様からお話を聞きました」

「……あぁ」

「そのせいで、お店を手放そうとしていること、ご存じですよね?」

「……まぁ、そうらしいね」

 淡々とした態度。

 まるで他人事のようだった。

「悪いけど、それしか方法がないんだよ」

「本当にそうですか?」

「……は?」

「お母様ですら、借金の詳細を把握していないみたいです。どれくらいの額で、何に使ったのか、ちゃんと説明してください」

「……いや、それは……」

「何に使ったか、わからないってことはないですよね?」

「……」

 優斗の 表情がこわばる。

4
「……ギャンブルとかですか?」

 昭人が、まっすぐに優斗を見つめながら言った。

「……!」

「この感じ、当たりですね?」

「……関係ないだろ」

「いや、大いに関係あります。ねこまどを売らせてまで返済しようとしてるんですよね?」

「……」

「それに、お母さんはあなたを信じてお店を手放そうとしてる。でも、それで本当に借金がなくなるのか、誰も確証が持ててないんです」

「……」

「それなのに、あなたは何も話そうとしない。それ、どうなんです?」

「……っ」

 優斗は ギリッと歯を食いしばった。

 そして――

「……俺だって、好きでこんなことになったわけじゃない」

 ついに、本当のことを話し始めた。

5
「……確かに、最初はギャンブルだった」

「……」

「ちょっと競馬で儲けて、それが楽しくなって……気づいたら、もう手がつけられなくなってた」

「……」

「それで、消費者金融に手を出したんですか?」

「……最初はそう。でも、それだけじゃ追いつかなくなった」

「……」

「で……ヤバいところから借りた」

「……!!」

「それで、取り立てが始まった……ってことですね?」

「……そうだ」

 優斗は 疲れたようにため息をついた。

「俺だって、どうしようもないってわかってる。でも、もうどうしたらいいのかわからなくて……」

「……」

6
「オーナーは、あなたを助けたいって言ってます」

「……わかってる」

「でも、だからって、お店を手放すのは違うと思いませんか?」

「……」

「お母様の居場所でもあるし、猫たちの家でもある。それを、あなたのせいで奪っていいんですか?」

「……っ」

 優斗の 顔が歪む。

「俺だって……こんなつもりじゃなかったんだよ……!!」

「なら、一緒に解決方法を考えませんか?」

「……」

「俺たちも、ねこまどを守るために動いてます。あなたの問題を解決する方法、みんなで探しましょう」

「……」

「お母様の負担を減らすためにも」

「……」

 優斗は、しばらく うつむいていた。

 そして――

「……わかった」

 ついに、話し合いに応じる決意をした。
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