ねこまど～猫と人がつなぐ、奇跡のカフェ～

60）最後の大勝負

1
「……ダメだ、流れが悪すぎる」

　峰子（みねこ）は ため息をつきながら、ノートパソコンの画面をじっと見つめた。

　クラウドファンディング開始から 1週間。

◆ 有名猫アカウントとのコラボ → 断られまくる
◆ オリジナルグッズ販売 → 納品が遅すぎて間に合わない
◆ 推し猫投票イベント → まさかの大荒れ

「にゃ……（これはマズい）」

「にゃん……（どうすれば……）」

「にゃぁ～……（誰か助けて……）」

　目標金額800万。現在の支援額は230万。

（まだ半分にも届いてない……）

（このままじゃ、ねこまどは守れない……）

　焦りが募る。

2
「……もう、こうなったら最後の大勝負を考えるしかないわ」

「最後の大勝負？」

「そうよ。今までのやり方じゃ、伸び悩んでる。でも、ここで一発大きく跳ねる策があれば……！」

「でも、そんなこと……」

「にゃ！（待て！）」

　ボス（茶トラ♂）が 突然、前に出た。

「にゃ！（俺たちの姿を見ろ！）」

「……？」

　ボスが示した先では――

　ミルク（白猫♀）が、お客さんの足元にすり寄りながら、甘えるようにゴロゴロと転がっていた。

「……にゃぁ～（ねこは、人を癒す）」

「……」

（……そうだ）

（ねこまどの魅力って、やっぱり“猫たち”そのものなんだ）

3
「……よし！！ これしかない！！！」

　峰子は、パソコンのキーボードを叩きながら叫んだ。

「“ねこまど1日支配人”企画をやるわ！！」

「にゃ！？（なにそれ！？）」

「にゃん！（新しい試み！？）」

「にゃぁ～！（詳しく！）」

4
 “ねこまど1日支配人”企画とは？
◆ クラウドファンディングの特別リターンとして、1日だけ「ねこまどの支配人」になれる権利！
◆実際にお店に立ち、猫たちの世話をしたり、お客さんをもてなしたりできる！
◆ 限定5名、10万円の特別リターンとして設定！

「これなら、支援額を一気に増やせるかもしれない！」

「うおおお！ それ面白いっすね！！」

「猫好きなら絶対やりたいよ！！」

「にゃ！（俺たちの上司になる！？）」

「にゃん！（部下として扱われる！？）」

「にゃぁ～！（逆に猫たちが指導する！？）」

「いや、猫が指導するのは違うでしょ！？」

5
「よし、この企画を今すぐクラウドファンディングに追加して、宣伝しまくるわよ！！」

「うおおお！ いっけええええ！！！」

「にゃ！（頑張れ！）」

「にゃん！（いける気がする！）」

「にゃぁ～！（ねこまどは負けない！）」

　こうして――

　ねこまど存続をかけた 「最後の大勝負」 が始まった。