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第17話「好きやって言うてもええかな」
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金曜日の夜、手をつないだまま歩いた帰り道。
本庄の手の温度は、確かに冷たかったけど――それでも、ほんの少しあったかかった。
それだけで、舞子の心は、しばらくぽかぽかし続けていた。
(あの人、ちゃんと一歩踏み出そうとしてくれてるんや)
でも、それと同時に――
あの手が、“いつでも引けるような軽さ”で触れていたことも、舞子は気づいていた。
(うちが、しっかりつないでへんかったら、たぶん……また離れてまうんやろな)
だからこそ、ちゃんともう一度、伝えなあかん。
“うちは、あなたが好きです”って。
心の中だけで繰り返してるうちは、何も変わらん。
本庄さんは、自分の気持ちに**“許可”を出せないでいる人や**。
なら、うちが言うたる。何度でも。
「好きや」って、言うたる。
土曜の午後。
少し春の気配を感じる晴れた日。
本庄から届いたメッセージは短かった。
「明日、会社で少しだけ作業があります。よければ手伝ってもらえませんか?」
それは、ほんのちょっとした口実やと舞子は思った。
でも、ちゃんと“会いたい”って気持ちが伝わってきた。
そして、その場を作ってくれたことが、うれしかった。
(うちも、ちゃんと向き合わなあかんな)
日曜の午後。
オフィスの会議室には、資料とコーヒーの香りと、やわらかな静けさが流れていた。
ふたりで黙々と資料の校正をしていると、不意に舞子が口を開いた。
「……なんか、こうして並んでるの、ちょっと不思議ですね」
「そうですか?」
「会社でこうしてるのに、“仕事だけの関係”ちゃう感じがして。
……うれしいです」
本庄は手を止めて、少しだけ舞子に視線を向けた。
「僕も……そう感じています」
(いまだ。今、言わな)
舞子はペンを置いて、正面から彼に向き合った。
「本庄さん。うち、もう一度ちゃんと伝えたいことがあります」
「……」
「うち、やっぱり……本庄さんのことが、好きです。
前に言うたときは、“あかんかもしれん”って思いながらやったけど、
今は、“それでも言いたい”って、思ってます」
本庄は目を伏せた。
けど、逃げるような感じじゃなくて――受け止めようとする間のようやった。
「……ありがとう、宮本さん」
その言葉のあと、彼は少しだけ苦笑したような、でもどこか“弱さ”のにじむ表情を見せた。
「僕はずっと、“誰かを好きになってはいけない”と思っていました。
でも、今はそれが“臆病な自分の言い訳”だったんじゃないかって、思うようになってきました」
舞子の胸がぎゅっと締めつけられる。
「じゃあ、今は……もう、言い訳しなくていいですよ。
怖くても、うちは逃げへんし、ちゃんと隣にいますから」
「……」
本庄はしばらく何かを噛みしめるように黙ってから、静かに言った。
「君のその言葉が、今の僕には、いちばん強い薬です」
「……ええ言葉出すなぁ、ほんま」
ふたりの間に、静かな笑いがこぼれた。
そして、ほんの数秒の沈黙ののち――
本庄が、ゆっくりと手を伸ばして、舞子の手の甲に触れた。
指先だけ、そっと重なる。
「好きです、宮本さん」
「……!」
「あなたが僕を選んでくれるなら、僕も――あなたを選びたいと思っています」
その言葉に、舞子の胸がじわじわと熱を帯びていく。
(ああ……いま、ほんまに“好き”が届いたんや)
さっきまで、ふわふわしてた“手をつないだ関係”が、
ようやく、しっかり地面に足をつけた。
ちゃんと、お互いの目を見て、「好き」と言い合えた。
こんな幸せ、ほんまにあってええんやろか。
でも、そう思えるくらい――うれしくて、うれしくて、涙がにじみそうやった。
その夜。
帰り道、本庄が小さく言った。
「……こんなふうに“想いを返す”のは、久しぶりすぎて、まだ不安です」
「じゃあ、うちが毎日言いますわ。“好き”って。
本庄さんの不安、うちの“好き”で毎日ちょっとずつ薄めてったる」
「……ずるいですね、君は」
「でしょ」
舞子は笑った。
本庄も、ほんの少しだけ――声を立てて笑った。
夜風がやさしく吹いて、ふたりの肩にそっと触れていった。
本庄の手の温度は、確かに冷たかったけど――それでも、ほんの少しあったかかった。
それだけで、舞子の心は、しばらくぽかぽかし続けていた。
(あの人、ちゃんと一歩踏み出そうとしてくれてるんや)
でも、それと同時に――
あの手が、“いつでも引けるような軽さ”で触れていたことも、舞子は気づいていた。
(うちが、しっかりつないでへんかったら、たぶん……また離れてまうんやろな)
だからこそ、ちゃんともう一度、伝えなあかん。
“うちは、あなたが好きです”って。
心の中だけで繰り返してるうちは、何も変わらん。
本庄さんは、自分の気持ちに**“許可”を出せないでいる人や**。
なら、うちが言うたる。何度でも。
「好きや」って、言うたる。
土曜の午後。
少し春の気配を感じる晴れた日。
本庄から届いたメッセージは短かった。
「明日、会社で少しだけ作業があります。よければ手伝ってもらえませんか?」
それは、ほんのちょっとした口実やと舞子は思った。
でも、ちゃんと“会いたい”って気持ちが伝わってきた。
そして、その場を作ってくれたことが、うれしかった。
(うちも、ちゃんと向き合わなあかんな)
日曜の午後。
オフィスの会議室には、資料とコーヒーの香りと、やわらかな静けさが流れていた。
ふたりで黙々と資料の校正をしていると、不意に舞子が口を開いた。
「……なんか、こうして並んでるの、ちょっと不思議ですね」
「そうですか?」
「会社でこうしてるのに、“仕事だけの関係”ちゃう感じがして。
……うれしいです」
本庄は手を止めて、少しだけ舞子に視線を向けた。
「僕も……そう感じています」
(いまだ。今、言わな)
舞子はペンを置いて、正面から彼に向き合った。
「本庄さん。うち、もう一度ちゃんと伝えたいことがあります」
「……」
「うち、やっぱり……本庄さんのことが、好きです。
前に言うたときは、“あかんかもしれん”って思いながらやったけど、
今は、“それでも言いたい”って、思ってます」
本庄は目を伏せた。
けど、逃げるような感じじゃなくて――受け止めようとする間のようやった。
「……ありがとう、宮本さん」
その言葉のあと、彼は少しだけ苦笑したような、でもどこか“弱さ”のにじむ表情を見せた。
「僕はずっと、“誰かを好きになってはいけない”と思っていました。
でも、今はそれが“臆病な自分の言い訳”だったんじゃないかって、思うようになってきました」
舞子の胸がぎゅっと締めつけられる。
「じゃあ、今は……もう、言い訳しなくていいですよ。
怖くても、うちは逃げへんし、ちゃんと隣にいますから」
「……」
本庄はしばらく何かを噛みしめるように黙ってから、静かに言った。
「君のその言葉が、今の僕には、いちばん強い薬です」
「……ええ言葉出すなぁ、ほんま」
ふたりの間に、静かな笑いがこぼれた。
そして、ほんの数秒の沈黙ののち――
本庄が、ゆっくりと手を伸ばして、舞子の手の甲に触れた。
指先だけ、そっと重なる。
「好きです、宮本さん」
「……!」
「あなたが僕を選んでくれるなら、僕も――あなたを選びたいと思っています」
その言葉に、舞子の胸がじわじわと熱を帯びていく。
(ああ……いま、ほんまに“好き”が届いたんや)
さっきまで、ふわふわしてた“手をつないだ関係”が、
ようやく、しっかり地面に足をつけた。
ちゃんと、お互いの目を見て、「好き」と言い合えた。
こんな幸せ、ほんまにあってええんやろか。
でも、そう思えるくらい――うれしくて、うれしくて、涙がにじみそうやった。
その夜。
帰り道、本庄が小さく言った。
「……こんなふうに“想いを返す”のは、久しぶりすぎて、まだ不安です」
「じゃあ、うちが毎日言いますわ。“好き”って。
本庄さんの不安、うちの“好き”で毎日ちょっとずつ薄めてったる」
「……ずるいですね、君は」
「でしょ」
舞子は笑った。
本庄も、ほんの少しだけ――声を立てて笑った。
夜風がやさしく吹いて、ふたりの肩にそっと触れていった。
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