21 / 42
番外編①「バレても、終わらへんかった恋のその後」
しおりを挟む
東京の梅雨明け。
オフィスに夏の空気が流れはじめた頃、舞子はひとり、デスクで缶コーヒーを開けた。
「ふう~……冷えたブラック、沁みるわ~」
本庄さんがロンドンから帰国して、ちょうど2ヶ月。
今では彼は“経営企画室 副室長”として、新プロジェクトの舵を握っている。
舞子は以前と変わらず営業企画部にいるが、プロジェクト支援で週に2回は本庄のチームと動くことが多い。
つまり――
公私ともに隠しようのない接近戦。
「……そろそろ“バレたら終わりや”ちゃうやろ、もう“バレてるやろ”や」
「うん、それな」
後ろから返ってきたのは、佐伯奈々の声。
「ちょっとぉ、ふたりで社食でカレー食べてたとき、あんた“辛っ!”って言うたら課長が水すっ……て渡してたの見たからな?」
「う、うそやん、そんなん完ッ全にバレバレやん」
「てか“バレてても誰も止めん”ぐらい空気ええしな。
冷血って言われてた課長が、あんたの前では普通に笑うようになったし」
舞子は頭を抱えた。
(……いやでも、嬉しいけどな)
確かに、昔の本庄さんと今の本庄さんは、似てるけど全然ちゃう。
誰に対しても冷静で無表情だった彼が、
今は少しずつ、感情を言葉や顔に出してくれるようになった。
それが、うれしい。
ほんまに、心の底から。
でも――まだ会社では「ちゃんと付き合ってる」とは誰にも言っていない。
理由はもちろん、“あの人の照れ”や。
「……社内恋愛って、公にする必要があるのでしょうか」
「あります。こっちは命かけてるんで」
「それは大げさです」
そんなやりとりを何度したことか。
でも、いい。
今の関係が、ちゃんとふたりで築いてきたもんやって、自信があるから。
その日の夜。
ふたりは渋谷の路地裏にある、小さなレストランにいた。
予約してくれたのは本庄さん。
「珍しいですね。こういうお店、予約してくれるの」
「……たまには、僕からちゃんと“恋人らしいこと”をしたいと思って」
舞子はニヤニヤが止まらない。
「恋人らしいこと、って。じゃあ、次は“夏祭り”とかどうです?
浴衣とか着て……うわ、想像しただけで萌えるわ」
「……少し考えます」
「ええ~~~考えんと行きましょや~~~」
会話は、いつも自然に笑いになる。
無理して笑わせてるんやなくて、気づけばお互い、笑ってしまってる。
こんな恋があるなんて――ほんまに、人生ってわからんもんやなあと思う。
食後、外に出ると夜風が少し涼しくて、
ふたりは自然と並んで歩いていた。
「……舞子さん」
「ん?」
「“バレたら終わりや”って、昔言ってましたよね」
「うん。言うてたな。ビビってたからなぁ」
「僕は今、むしろ“バレても、終わらせない自信がある”と思っています」
「……!」
「もし誰かに何かを言われても、
僕はあなたとの関係を隠さない。
それだけの想いを持って、あなたを選びました」
(……泣く。いや、ほんまに泣く)
舞子は黙って、本庄の腕に自分の腕を絡めた。
「ほんま、うちのこと、愛してくれてるんやなぁって思います」
「……はい。愛してます」
静かな返事やったけど、
それはたしかに、“本庄誠のすべて”が詰まったひとことやった。
✿ エピローグ ✿
数日後、社内掲示板にひとつの告知が掲示される。
社内報インタビュー「副室長の横顔」より一部抜粋:
「最近笑顔が増えたと噂されてますが、理由は?」
→「大切にしたい人が、近くにいるので」
舞子はそれを見て、ひとりで顔を覆った。
「バッ……バレてるやん!!」
奈々は隣で爆笑していた。
でも――うれしかった。
“バレたら終わり”やと思ってた恋は、
バレても、まっすぐ続いていく恋に変わってた。
そうやって、今日も舞子は笑っている。
そして、彼の隣に立ち続けている。
オフィスに夏の空気が流れはじめた頃、舞子はひとり、デスクで缶コーヒーを開けた。
「ふう~……冷えたブラック、沁みるわ~」
本庄さんがロンドンから帰国して、ちょうど2ヶ月。
今では彼は“経営企画室 副室長”として、新プロジェクトの舵を握っている。
舞子は以前と変わらず営業企画部にいるが、プロジェクト支援で週に2回は本庄のチームと動くことが多い。
つまり――
公私ともに隠しようのない接近戦。
「……そろそろ“バレたら終わりや”ちゃうやろ、もう“バレてるやろ”や」
「うん、それな」
後ろから返ってきたのは、佐伯奈々の声。
「ちょっとぉ、ふたりで社食でカレー食べてたとき、あんた“辛っ!”って言うたら課長が水すっ……て渡してたの見たからな?」
「う、うそやん、そんなん完ッ全にバレバレやん」
「てか“バレてても誰も止めん”ぐらい空気ええしな。
冷血って言われてた課長が、あんたの前では普通に笑うようになったし」
舞子は頭を抱えた。
(……いやでも、嬉しいけどな)
確かに、昔の本庄さんと今の本庄さんは、似てるけど全然ちゃう。
誰に対しても冷静で無表情だった彼が、
今は少しずつ、感情を言葉や顔に出してくれるようになった。
それが、うれしい。
ほんまに、心の底から。
でも――まだ会社では「ちゃんと付き合ってる」とは誰にも言っていない。
理由はもちろん、“あの人の照れ”や。
「……社内恋愛って、公にする必要があるのでしょうか」
「あります。こっちは命かけてるんで」
「それは大げさです」
そんなやりとりを何度したことか。
でも、いい。
今の関係が、ちゃんとふたりで築いてきたもんやって、自信があるから。
その日の夜。
ふたりは渋谷の路地裏にある、小さなレストランにいた。
予約してくれたのは本庄さん。
「珍しいですね。こういうお店、予約してくれるの」
「……たまには、僕からちゃんと“恋人らしいこと”をしたいと思って」
舞子はニヤニヤが止まらない。
「恋人らしいこと、って。じゃあ、次は“夏祭り”とかどうです?
浴衣とか着て……うわ、想像しただけで萌えるわ」
「……少し考えます」
「ええ~~~考えんと行きましょや~~~」
会話は、いつも自然に笑いになる。
無理して笑わせてるんやなくて、気づけばお互い、笑ってしまってる。
こんな恋があるなんて――ほんまに、人生ってわからんもんやなあと思う。
食後、外に出ると夜風が少し涼しくて、
ふたりは自然と並んで歩いていた。
「……舞子さん」
「ん?」
「“バレたら終わりや”って、昔言ってましたよね」
「うん。言うてたな。ビビってたからなぁ」
「僕は今、むしろ“バレても、終わらせない自信がある”と思っています」
「……!」
「もし誰かに何かを言われても、
僕はあなたとの関係を隠さない。
それだけの想いを持って、あなたを選びました」
(……泣く。いや、ほんまに泣く)
舞子は黙って、本庄の腕に自分の腕を絡めた。
「ほんま、うちのこと、愛してくれてるんやなぁって思います」
「……はい。愛してます」
静かな返事やったけど、
それはたしかに、“本庄誠のすべて”が詰まったひとことやった。
✿ エピローグ ✿
数日後、社内掲示板にひとつの告知が掲示される。
社内報インタビュー「副室長の横顔」より一部抜粋:
「最近笑顔が増えたと噂されてますが、理由は?」
→「大切にしたい人が、近くにいるので」
舞子はそれを見て、ひとりで顔を覆った。
「バッ……バレてるやん!!」
奈々は隣で爆笑していた。
でも――うれしかった。
“バレたら終わり”やと思ってた恋は、
バレても、まっすぐ続いていく恋に変わってた。
そうやって、今日も舞子は笑っている。
そして、彼の隣に立ち続けている。
13
あなたにおすすめの小説
腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~
有木珠乃
恋愛
両親を亡くし、二人だけの姉妹になった一ノ瀬栞と琴美。
ある日、栞は轢き逃げ事故に遭い、姉の琴美が務める病院に入院することになる。
そこで初めて知る、琴美の婚約者の存在。
彼らの逢引きを確保するために利用される栞と外科医の岡。
「二人で自由にならないか?」を囁かれて……。
妖狐の嫁入り
山田あとり
恋愛
「――おまえを祓うなどできない。あきらめて、俺と生きてくれ」
稲荷神社の娘・遥香(はるか)は、妖狐の血をひくために狐憑きとさげすまれ、ひっそり生きてきた。
ある日、村八分となっている遥香を探して来たのは怨霊や魔物を祓う軍人・彰良(あきら)。
彼は陰陽師の名門・芳川家の男だった。
帝国陸軍で共に任務にあたることになった二人だったが、実は彰良にもある秘密が――。
自己評価は低いが芯に強さを秘める女が、理解者を得て才能を開花させる!
&
苦しみを抱え屈折した男が、真っ直ぐな優しさに触れ愛を知る!
明治中期風の横浜と帝都を駆ける、あやかし異能ロマンス譚です。
可愛い妖怪・豆腐小僧も戦うよ!
※この作品は、カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
時間を止めて ~忘れられない元カレは完璧な容姿と天性の才能を持つ世界一残酷な人でした 【完結】
remo
恋愛
どんなに好きになっても、彼は絶対に私を愛さない。
佐倉ここ。
玩具メーカーで働く24歳のOL。
鬼上司・高野雅(がく)に叱責されながら仕事に奔走する中、忘れられない元カレ・常盤千晃(ちあき)に再会。
完璧な容姿と天性の才能を持つ世界一残酷な彼には、悲しい秘密があった。
【完結】ありがとうございました‼
距離感ゼロ〜副社長と私の恋の攻防戦〜
葉月 まい
恋愛
「どうするつもりだ?」
そう言ってグッと肩を抱いてくる
「人肌が心地良くてよく眠れた」
いやいや、私は抱き枕ですか!?
近い、とにかく近いんですって!
グイグイ迫ってくる副社長と
仕事一筋の秘書の
恋の攻防戦、スタート!
✼••┈•• ♡ 登場人物 ♡••┈••✼
里見 芹奈(27歳) …神蔵不動産 社長秘書
神蔵 翔(32歳) …神蔵不動産 副社長
社長秘書の芹奈は、パーティーで社長をかばい
ドレスにワインをかけられる。
それに気づいた副社長の翔は
芹奈の肩を抱き寄せてホテルの部屋へ。
海外から帰国したばかりの翔は
何をするにもとにかく近い!
仕事一筋の芹奈は
そんな翔に戸惑うばかりで……
花も実も
白井はやて
恋愛
町で道場を営む武家の三男朝陽には最近、会うと心が暖かくなり癒される女性がいる。
跡取り問題で自宅に滞在したくない彼は癒しの彼女に会いたくて、彼女が家族と営む団子屋へ彼は足しげく熱心に通っているのだが、男と接客している様子を見ると謎の苛立ちを抱えていた。
【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました
藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。
次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる