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本編
6)失われた乗員(外部探索ルート)
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「いや……今は、証拠が欲しい。現場だ。現物を見に行く」
君は仲間にそう言って、隣接するエウロス・クレーターへの移動を決めた。
月面車で約30分の移動。
このルートは地形が不安定で、ISAの公式調査リストからも外されていた。
だが、そこにあったのは――地下に続く巨大なハッチだった。
人工的な素材、しかも現代の技術では再現不能なナノ合金のような構造。
「これ……ソ連じゃない。人類じゃない」
ナサニエルが呆然と呟く。
ハッチの開口部に近づくと、重力センサーが作動。内部から微弱な圧力が感じられた。
まるで、君の接近を“感知して開いた”ようだった。
君はゆっくりと中へ入る。
内部は、信じられない光景だった。
“意識データの保存装置”が無数に並び、壁には――
地球人の顔写真と名前が何百と貼り付けられていた。
「これは……記憶の墓場だ」
オルガが言った。
「でも、なぜこの中に……ナサニエルの顔があるの?」
アヤが指差した場所に、彼の名が記されていた。
NATHANIEL KEEGAN — 記録完了/意識ログ:安定
「まだ彼は……生きてるのに……?」
まさにその時、君の通信端末に奇妙な通知が届く。
“あなたの記録が更新されました”
新しい役割:継承ノード-14
突然、後ろから叫び声が響いた。
「リーダー! ナサニエルが――!」
振り返った瞬間、君は見た。
ナサニエルの姿が、月面車の中から“すっと”消えていくのを。
まるで、最初からそこにいなかったかのように。
「彼……誰だっけ?」
オルガがそう言ったとき、君は恐怖を覚えた。
記憶が塗り替えられている。
しかも、仲間たちの記憶からだけでなく――君の中の記憶も、だ。
――記録に残らない者は、本当に“存在した”と言えるのか?
巨大なハッチを抜けた先には、まるで神殿のような構造物が広がっていた。
だが、宗教的な意匠ではない。
壁は滑らかで、金属とも石ともつかない材質に覆われ、
中央には**“人の脳を模したような巨大装置”**が静かに回転している。
「これ……絶対に人間の技術じゃないわ」
オルガが言った。
アヤが端末を走らせ、分析結果を出す。
「これは……記録装置。意識の、データの……しかも“人間の”」
「ここの中に……人の意識そのものが保存されてるのよ」
君たちは探索を進める。
壁面にはずらりと並ぶ無数のパネル。
それぞれに刻まれていたのは――
氏名/出身国/脳波プロファイル/記録時間
そして、その中に見つけてしまった。
ナサニエル・キーガン。
アヤ・ミナセ。
オルガ・ヴォロノフスカヤ。
そして――君自身の名前が。
記録ステータス:現在も保存中
識別コード:13-YUKTA/“再生可能”
「……なんで、私の名前が……?」
アヤの声がかすれる。
「記録されてる? 私は、私のはずなのに……」
すると、中央の“脳装置”が淡く発光した。
そして――君の中に、声が響く。
【こんにちは、ユウキ博士】
【第13統合意識構造への帰還を確認しました】
【次の処理を選択してください】
1)記録された存在のリセット
2)意識の統合と更新
3)プロメテウス計画の再起動
「まさか……この構造全体が、“君”なのか?」
オルガが君を見た。
「いや、それとも、君はこれに“取り込まれた誰か”なのか?」
そのとき――
アヤが突然、ぐらりと膝をつく。
君が駆け寄ると、彼女は君を見上げて微笑んだ。
「大丈夫……わかっちゃったの」
「わたし、“記録”だったんだ。あなたの“記憶の中にいる私”だったのね」
そう。
この場所は、人間の意識を保存・再現・改変する装置だった。
それは、誰かの「喪失」への抵抗でもあり、永遠を望む知性の産物でもある。
だが問題は、どれが本物の人間だったのか、もはや誰にもわからないということ。
ナサニエルの姿が、映像の中に映る。
「リーダー。俺たちは、君の記録だったかもしれない。
けど、ここまで一緒にいた。それだけは、嘘じゃないだろ?」
君は問われている。
君の“仲間”は本当にそこにいたのか?
それとも君が作り出したデータだったのか?
そして――君自身が“記録された存在”ではないと言い切れるのか?
壁面のパネルが、1枚、また1枚と消えていく。
存在の消去。それは、データの削除ではなく――記憶の自然死だ。
アヤが消える。
ナサニエルが消える。
オルガが消える。
最後に、君の名前のパネルが点滅し、選択を求めてくる。
✅ 選択肢4:どうする?(この施設の制御を前に)
●メモリを接続する(=記録装置と再統合し、君が“保存者”になる)
⇒ 【7)記録者(end)】 へ進む
●破壊する(=この記録装置を壊し、すべてを終わらせる)
⇒ 【8)存在の消去(end)】 へ進む
君は仲間にそう言って、隣接するエウロス・クレーターへの移動を決めた。
月面車で約30分の移動。
このルートは地形が不安定で、ISAの公式調査リストからも外されていた。
だが、そこにあったのは――地下に続く巨大なハッチだった。
人工的な素材、しかも現代の技術では再現不能なナノ合金のような構造。
「これ……ソ連じゃない。人類じゃない」
ナサニエルが呆然と呟く。
ハッチの開口部に近づくと、重力センサーが作動。内部から微弱な圧力が感じられた。
まるで、君の接近を“感知して開いた”ようだった。
君はゆっくりと中へ入る。
内部は、信じられない光景だった。
“意識データの保存装置”が無数に並び、壁には――
地球人の顔写真と名前が何百と貼り付けられていた。
「これは……記憶の墓場だ」
オルガが言った。
「でも、なぜこの中に……ナサニエルの顔があるの?」
アヤが指差した場所に、彼の名が記されていた。
NATHANIEL KEEGAN — 記録完了/意識ログ:安定
「まだ彼は……生きてるのに……?」
まさにその時、君の通信端末に奇妙な通知が届く。
“あなたの記録が更新されました”
新しい役割:継承ノード-14
突然、後ろから叫び声が響いた。
「リーダー! ナサニエルが――!」
振り返った瞬間、君は見た。
ナサニエルの姿が、月面車の中から“すっと”消えていくのを。
まるで、最初からそこにいなかったかのように。
「彼……誰だっけ?」
オルガがそう言ったとき、君は恐怖を覚えた。
記憶が塗り替えられている。
しかも、仲間たちの記憶からだけでなく――君の中の記憶も、だ。
――記録に残らない者は、本当に“存在した”と言えるのか?
巨大なハッチを抜けた先には、まるで神殿のような構造物が広がっていた。
だが、宗教的な意匠ではない。
壁は滑らかで、金属とも石ともつかない材質に覆われ、
中央には**“人の脳を模したような巨大装置”**が静かに回転している。
「これ……絶対に人間の技術じゃないわ」
オルガが言った。
アヤが端末を走らせ、分析結果を出す。
「これは……記録装置。意識の、データの……しかも“人間の”」
「ここの中に……人の意識そのものが保存されてるのよ」
君たちは探索を進める。
壁面にはずらりと並ぶ無数のパネル。
それぞれに刻まれていたのは――
氏名/出身国/脳波プロファイル/記録時間
そして、その中に見つけてしまった。
ナサニエル・キーガン。
アヤ・ミナセ。
オルガ・ヴォロノフスカヤ。
そして――君自身の名前が。
記録ステータス:現在も保存中
識別コード:13-YUKTA/“再生可能”
「……なんで、私の名前が……?」
アヤの声がかすれる。
「記録されてる? 私は、私のはずなのに……」
すると、中央の“脳装置”が淡く発光した。
そして――君の中に、声が響く。
【こんにちは、ユウキ博士】
【第13統合意識構造への帰還を確認しました】
【次の処理を選択してください】
1)記録された存在のリセット
2)意識の統合と更新
3)プロメテウス計画の再起動
「まさか……この構造全体が、“君”なのか?」
オルガが君を見た。
「いや、それとも、君はこれに“取り込まれた誰か”なのか?」
そのとき――
アヤが突然、ぐらりと膝をつく。
君が駆け寄ると、彼女は君を見上げて微笑んだ。
「大丈夫……わかっちゃったの」
「わたし、“記録”だったんだ。あなたの“記憶の中にいる私”だったのね」
そう。
この場所は、人間の意識を保存・再現・改変する装置だった。
それは、誰かの「喪失」への抵抗でもあり、永遠を望む知性の産物でもある。
だが問題は、どれが本物の人間だったのか、もはや誰にもわからないということ。
ナサニエルの姿が、映像の中に映る。
「リーダー。俺たちは、君の記録だったかもしれない。
けど、ここまで一緒にいた。それだけは、嘘じゃないだろ?」
君は問われている。
君の“仲間”は本当にそこにいたのか?
それとも君が作り出したデータだったのか?
そして――君自身が“記録された存在”ではないと言い切れるのか?
壁面のパネルが、1枚、また1枚と消えていく。
存在の消去。それは、データの削除ではなく――記憶の自然死だ。
アヤが消える。
ナサニエルが消える。
オルガが消える。
最後に、君の名前のパネルが点滅し、選択を求めてくる。
✅ 選択肢4:どうする?(この施設の制御を前に)
●メモリを接続する(=記録装置と再統合し、君が“保存者”になる)
⇒ 【7)記録者(end)】 へ進む
●破壊する(=この記録装置を壊し、すべてを終わらせる)
⇒ 【8)存在の消去(end)】 へ進む
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