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第3話「婚活講師の教えは、婚活女子にキツすぎる」
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「いいですか皆さん。婚活市場は、恋愛市場とはまったく違います。」
その瞬間、会議室の空気がピキッと凍った。
目の前に立つ女が、また一段階、口調を強める。
「“ありのままの自分を好きになってくれる人”なんて言ってるうちは、結婚できません」
ずらりと並ぶ参加者たち――婚活講座の受講者である女性たちの顔が、いっせいに曇った。
私も、そのひとり。
「……ッスね……」
「え?」
「なんでもないですぅー」
おっと、口をすべらせた。講師の目が鋭すぎて、思わず元ヤン魂が顔を出しかけた。
この女、ヤバい。名前は美城 静香(みしろ しずか)。
年齢35歳。婚活アドバイザー界隈では“婚活の女帝”と呼ばれているそうな。
いやいや、女帝どころか、口撃型爆撃機だわ。
ことの発端は、あの男――川原翔太からのLINEだった。
「婚活講座、空き出ました。プロの女帝が指導しますが、メンタルは鋼推奨です。行く?」
なにその地雷原ツアーみたいなノリ。
とはいえ、現状突破するには何かが必要だ。
私は覚悟を決めて、その講座に申し込んだ。そして、今ここにいる。
講座のテーマは「婚活で勝つ・負けるの境界線」。
タイトルからしてカチコミ臭がするが、内容はもっと激しかった。
「女性は30歳を超えたら、条件だけでは勝てません。魅力を戦略的に演出する能力が必要です」
「見た目を磨くことも当然。けれどそれ以上に、“自分をどう売るか”がカギなんです」
パワポに映し出された言葉が、私の胸をグサグサ刺していく。
“30代女性が陥りやすい7つの地雷”
・自己肯定感がやたら高い
・過去の恋愛を引きずる
・理想が高い
・現実を受け入れられない
・男を見る目がない
・受け身すぎる
・“選ばれる”意識がない
――全部、私じゃん。
だんだん講座というより、公開処刑に近づいている気がしてきた。
「恋愛経験があるからこそ、婚活では強く出られる――そう思っていませんか? 違います。婚活では過去の武勇伝など、1ミリも意味を持ちません」
講師の美城が会場を見渡す。その視線が鋭すぎて、思わず目をそらす。
いや、無理よ。そんなサイボーグ婚活なんて……。
講座の休憩時間。
同じテーブルに座っていた女性が、ちらりと話しかけてきた。
「けっこう、グサッときますよね……あの講義」
「うん、マジで“心の内臓”ごとえぐられてる感じ」
「わかります~、でも、なんか、あれくらい言われないと目が覚めないっていうか……」
この人は確か、看護師って言ってたっけ。30歳で、2年婚活してるとか。
「婚活って、“自分で自分に引導を渡す作業”なんですね、たぶん」
なんて詩的なことを言うんだ、この人。
その後も少し話をしたが、思ったよりみんな“ちゃんと悩んでいる”ことに驚いた。
てっきり「男ウケの服~」とか言ってるイージーモード女子ばかりだと思ってたのに。
元ヤンの私よりも、よっぽど真剣に、よっぽど繊細に、自分と向き合ってた。
婚活って、戦場だったんだな……。
講座の最後、美城講師が締めくくった。
「婚活は、恋愛の延長線ではありません。“結婚相手”としての自分を、他人にプレゼンする行為です」
「“理想の王子様”を探す前に、まず自分が誰かの理想になりうるのかを考えましょう」
しーん……と静まり返る会場。
私の胸には、不思議と納得と、ちょっとの悔しさが残った。
プレゼン……か。
あたし、今まで何をアピールしてきたんだろ。
帰り道。川原からメッセージが来ていた。
「女帝どうだった?」
「ガチで心臓にクラック入った」
「で、なに学んだ?」
「婚活ナメてました。やり直します。指導よろ」
「おう。まずは“言葉遣い”からな」
「うっせーぞ、てめぇ」
「おう、最高だなそのノリ」
ふっと、笑った。
たぶん私は、恋愛がしたいんじゃない。
“誰かと人生を並べて歩くこと”がしたいんだ。
そのために、ちょっとくらいプライドも殴り捨ててやる。
元ヤンだからって、幸せになる権利がないわけじゃない。
今度こそ、本気で。
その瞬間、会議室の空気がピキッと凍った。
目の前に立つ女が、また一段階、口調を強める。
「“ありのままの自分を好きになってくれる人”なんて言ってるうちは、結婚できません」
ずらりと並ぶ参加者たち――婚活講座の受講者である女性たちの顔が、いっせいに曇った。
私も、そのひとり。
「……ッスね……」
「え?」
「なんでもないですぅー」
おっと、口をすべらせた。講師の目が鋭すぎて、思わず元ヤン魂が顔を出しかけた。
この女、ヤバい。名前は美城 静香(みしろ しずか)。
年齢35歳。婚活アドバイザー界隈では“婚活の女帝”と呼ばれているそうな。
いやいや、女帝どころか、口撃型爆撃機だわ。
ことの発端は、あの男――川原翔太からのLINEだった。
「婚活講座、空き出ました。プロの女帝が指導しますが、メンタルは鋼推奨です。行く?」
なにその地雷原ツアーみたいなノリ。
とはいえ、現状突破するには何かが必要だ。
私は覚悟を決めて、その講座に申し込んだ。そして、今ここにいる。
講座のテーマは「婚活で勝つ・負けるの境界線」。
タイトルからしてカチコミ臭がするが、内容はもっと激しかった。
「女性は30歳を超えたら、条件だけでは勝てません。魅力を戦略的に演出する能力が必要です」
「見た目を磨くことも当然。けれどそれ以上に、“自分をどう売るか”がカギなんです」
パワポに映し出された言葉が、私の胸をグサグサ刺していく。
“30代女性が陥りやすい7つの地雷”
・自己肯定感がやたら高い
・過去の恋愛を引きずる
・理想が高い
・現実を受け入れられない
・男を見る目がない
・受け身すぎる
・“選ばれる”意識がない
――全部、私じゃん。
だんだん講座というより、公開処刑に近づいている気がしてきた。
「恋愛経験があるからこそ、婚活では強く出られる――そう思っていませんか? 違います。婚活では過去の武勇伝など、1ミリも意味を持ちません」
講師の美城が会場を見渡す。その視線が鋭すぎて、思わず目をそらす。
いや、無理よ。そんなサイボーグ婚活なんて……。
講座の休憩時間。
同じテーブルに座っていた女性が、ちらりと話しかけてきた。
「けっこう、グサッときますよね……あの講義」
「うん、マジで“心の内臓”ごとえぐられてる感じ」
「わかります~、でも、なんか、あれくらい言われないと目が覚めないっていうか……」
この人は確か、看護師って言ってたっけ。30歳で、2年婚活してるとか。
「婚活って、“自分で自分に引導を渡す作業”なんですね、たぶん」
なんて詩的なことを言うんだ、この人。
その後も少し話をしたが、思ったよりみんな“ちゃんと悩んでいる”ことに驚いた。
てっきり「男ウケの服~」とか言ってるイージーモード女子ばかりだと思ってたのに。
元ヤンの私よりも、よっぽど真剣に、よっぽど繊細に、自分と向き合ってた。
婚活って、戦場だったんだな……。
講座の最後、美城講師が締めくくった。
「婚活は、恋愛の延長線ではありません。“結婚相手”としての自分を、他人にプレゼンする行為です」
「“理想の王子様”を探す前に、まず自分が誰かの理想になりうるのかを考えましょう」
しーん……と静まり返る会場。
私の胸には、不思議と納得と、ちょっとの悔しさが残った。
プレゼン……か。
あたし、今まで何をアピールしてきたんだろ。
帰り道。川原からメッセージが来ていた。
「女帝どうだった?」
「ガチで心臓にクラック入った」
「で、なに学んだ?」
「婚活ナメてました。やり直します。指導よろ」
「おう。まずは“言葉遣い”からな」
「うっせーぞ、てめぇ」
「おう、最高だなそのノリ」
ふっと、笑った。
たぶん私は、恋愛がしたいんじゃない。
“誰かと人生を並べて歩くこと”がしたいんだ。
そのために、ちょっとくらいプライドも殴り捨ててやる。
元ヤンだからって、幸せになる権利がないわけじゃない。
今度こそ、本気で。
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