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第4話「元ヤンバレそう!猫かぶり大作戦」
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「どう思います? このスカート、ウエストキツすぎて内臓3つ潰れてますけど」
そう問いかけながら、私は店の鏡に向かってポーズを取っていた。
膝下丈のふわっとしたベージュスカート。
シフォン素材の白ブラウス。
そして、極めつけは“髪を結ぶ時だけに使う”予定だったリボン付きカチューシャ。
――うん、気持ち悪い。誰だこの女。
「これで婚活デート行くとか、もう事故だろ……」
元ヤン・大庭ひかり、30歳。婚活4戦目。
今回は**“とことん清楚に寄せてみる作戦”**で挑むことにした。
なぜかって? 婚活講師・美城静香の教えだ。
「“ありのままの自分”など、所詮は市場において非戦力。需要に寄せるのが鉄則です」
つまり、“素の自分”にこだわってても結婚できねぇよって話。
なるほど。やってやろうじゃん。
今回のデート相手は、アプリでマッチングした「さとるさん(33)」
職業:銀行マン。趣味:読書、カフェ巡り、文鳥飼育。
プロフィール写真は、シンプルなニット姿で、雰囲気は“優しそうな地味メン”。
年収もそこそこ、実家暮らしで貯金が趣味という堅実男子。
最初のメッセージもすごく丁寧だった。
「お話できて嬉しいです☺️ほんのりオタク気質ですが、よろしくお願いします」
やっべぇ、逆に新鮮。
私は“完全文系男子”との初接触に、地味に期待していた。
待ち合わせは、表参道の有名な紅茶専門店。
名前からして意識高い。“Teasalon FLEUR”とかいう、私の地元にはまず存在しないような場所。
「ひかりさんですか? はじめまして、佐藤さとるです」
現れた男は、写真通りの“空気みたいな男”だった。
メガネ、小柄、モヘアのカーディガン、手にはトートバッグ。
まったく威圧感がない。なんなら物理的にも存在感が薄い。
だが、それがよかった。うん、逆に癒し。
「今日は素敵なところをご提案いただきありがとうございます」
私は作り笑顔とともに、上品ぶった声で挨拶した。
「おしとやかキャラ・演出モード」オンだ。
「こちらこそ、来てくださってありがとうございます……実は、初めて会う人と外で食事するの、緊張するんです」
「わたしも……緊張、してますぅ」
(うわ、語尾どうした。自分、誰だ)
その後の会話は、終始“優しいけど微妙に会話が噛み合わない”という、もどかしいラリーが続いた。
「僕、最近推しが増えちゃって……」
「推し……?」
「アイドルマスターと、あと、ガンダムSEEDのラクス」
「あ、あー……なるほど、かわいいですよね、ああいうキャラ」
(やべぇ、話広げられねぇ……!)
「ちなみに、ひかりさんは最近どんな本読みました?」
「えっと……“婚活を成功させる7つの鉄則”って本を」
「あっ、僕も読みました!」
なぜだ。
どこまで意識高いんだこの男。私の“演出力”が逆にバグってきてる気がする。
極めつけは、帰り際。
会計をしようとした私に、さとるさんが突然言った。
「あの、僕、そういうの、あんまり得意じゃなくて……できれば、割り勘で」
「あ、もちろん、ですよぉ……」
作り笑顔がついに限界を迎え、口角が痙攣し始めた。
帰り道、カフェの紙袋をぶら下げながら私はつぶやいた。
「……しんどいわ」
元ヤンが“清楚”の仮面を被っても、得られるのはストレス性胃炎だけだった。
その晩、私は婚活エージェンシーに顔を出し、担当の川原に愚痴をぶちまけた。
「無理だって! あんなのキャラ作ってたら、3時間で酸欠!」
「で?」
「で、じゃねぇ! もうちょっと何か言えよ、こっちの心情に寄り添って!」
「だから言ったじゃん、“猫かぶっても意味ない”って」
川原はソファに座りながら、あくびまじりに言った。
「つーか、キャラ作ってモテても、その後ずっと演じ続けんの? 絶対バレるし、続かないって」
「う……」
ぐうの音も出ねぇ。
「じゃあどうしろってのさ……“元ヤンですけどなにか?”って開き直れって?」
「少なくとも、“清楚系ぶって胃潰瘍”よりは幸せになれる確率高いと思うけどね」
うわーもう、正論がむかつく。
「じゃ、逆に聞くけどさ。お前が女だったら、あたしみたいなのアリか?」
川原は少し考えてから言った。
「アリじゃね? なんか楽しそうだし」
「……そっかよ」
なんかその言い方、ずるい。
私は思わず、ソファのクッションを投げつけた。
川原は笑いながらそれを受け止めた。
「次は、素でいけよ。“元ヤンっぽいけど、笑ったらかわいい人”って、わりと需要あるって」
……まじか?
自分を偽るより、受け入れてくれる人を探した方が、たぶん早い。
そう思えたのは、たぶんこの夜が初めてだった。
そう問いかけながら、私は店の鏡に向かってポーズを取っていた。
膝下丈のふわっとしたベージュスカート。
シフォン素材の白ブラウス。
そして、極めつけは“髪を結ぶ時だけに使う”予定だったリボン付きカチューシャ。
――うん、気持ち悪い。誰だこの女。
「これで婚活デート行くとか、もう事故だろ……」
元ヤン・大庭ひかり、30歳。婚活4戦目。
今回は**“とことん清楚に寄せてみる作戦”**で挑むことにした。
なぜかって? 婚活講師・美城静香の教えだ。
「“ありのままの自分”など、所詮は市場において非戦力。需要に寄せるのが鉄則です」
つまり、“素の自分”にこだわってても結婚できねぇよって話。
なるほど。やってやろうじゃん。
今回のデート相手は、アプリでマッチングした「さとるさん(33)」
職業:銀行マン。趣味:読書、カフェ巡り、文鳥飼育。
プロフィール写真は、シンプルなニット姿で、雰囲気は“優しそうな地味メン”。
年収もそこそこ、実家暮らしで貯金が趣味という堅実男子。
最初のメッセージもすごく丁寧だった。
「お話できて嬉しいです☺️ほんのりオタク気質ですが、よろしくお願いします」
やっべぇ、逆に新鮮。
私は“完全文系男子”との初接触に、地味に期待していた。
待ち合わせは、表参道の有名な紅茶専門店。
名前からして意識高い。“Teasalon FLEUR”とかいう、私の地元にはまず存在しないような場所。
「ひかりさんですか? はじめまして、佐藤さとるです」
現れた男は、写真通りの“空気みたいな男”だった。
メガネ、小柄、モヘアのカーディガン、手にはトートバッグ。
まったく威圧感がない。なんなら物理的にも存在感が薄い。
だが、それがよかった。うん、逆に癒し。
「今日は素敵なところをご提案いただきありがとうございます」
私は作り笑顔とともに、上品ぶった声で挨拶した。
「おしとやかキャラ・演出モード」オンだ。
「こちらこそ、来てくださってありがとうございます……実は、初めて会う人と外で食事するの、緊張するんです」
「わたしも……緊張、してますぅ」
(うわ、語尾どうした。自分、誰だ)
その後の会話は、終始“優しいけど微妙に会話が噛み合わない”という、もどかしいラリーが続いた。
「僕、最近推しが増えちゃって……」
「推し……?」
「アイドルマスターと、あと、ガンダムSEEDのラクス」
「あ、あー……なるほど、かわいいですよね、ああいうキャラ」
(やべぇ、話広げられねぇ……!)
「ちなみに、ひかりさんは最近どんな本読みました?」
「えっと……“婚活を成功させる7つの鉄則”って本を」
「あっ、僕も読みました!」
なぜだ。
どこまで意識高いんだこの男。私の“演出力”が逆にバグってきてる気がする。
極めつけは、帰り際。
会計をしようとした私に、さとるさんが突然言った。
「あの、僕、そういうの、あんまり得意じゃなくて……できれば、割り勘で」
「あ、もちろん、ですよぉ……」
作り笑顔がついに限界を迎え、口角が痙攣し始めた。
帰り道、カフェの紙袋をぶら下げながら私はつぶやいた。
「……しんどいわ」
元ヤンが“清楚”の仮面を被っても、得られるのはストレス性胃炎だけだった。
その晩、私は婚活エージェンシーに顔を出し、担当の川原に愚痴をぶちまけた。
「無理だって! あんなのキャラ作ってたら、3時間で酸欠!」
「で?」
「で、じゃねぇ! もうちょっと何か言えよ、こっちの心情に寄り添って!」
「だから言ったじゃん、“猫かぶっても意味ない”って」
川原はソファに座りながら、あくびまじりに言った。
「つーか、キャラ作ってモテても、その後ずっと演じ続けんの? 絶対バレるし、続かないって」
「う……」
ぐうの音も出ねぇ。
「じゃあどうしろってのさ……“元ヤンですけどなにか?”って開き直れって?」
「少なくとも、“清楚系ぶって胃潰瘍”よりは幸せになれる確率高いと思うけどね」
うわーもう、正論がむかつく。
「じゃ、逆に聞くけどさ。お前が女だったら、あたしみたいなのアリか?」
川原は少し考えてから言った。
「アリじゃね? なんか楽しそうだし」
「……そっかよ」
なんかその言い方、ずるい。
私は思わず、ソファのクッションを投げつけた。
川原は笑いながらそれを受け止めた。
「次は、素でいけよ。“元ヤンっぽいけど、笑ったらかわいい人”って、わりと需要あるって」
……まじか?
自分を偽るより、受け入れてくれる人を探した方が、たぶん早い。
そう思えたのは、たぶんこの夜が初めてだった。
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