元ヤン女子、婚活はじめました ~結婚って魂のぶつけ合いだよね!

naomikoryo

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第18話「離れる決意、ほんとは苦しい」

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春が近づいていた。
気がつけば、コンビニのおでんは終わり、街路樹には淡い芽がのぞいていた。

私の中の何かも、そっと、終わりかけていた。

――婚活を、やめた。

厳密に言えば「休止」。
アプリも消した。エージェントへの連絡も切った。
川原にも、会っていない。

あんなに感情出し切ったあとに“すぐ切り替え”なんて、私には無理だった。

むしろ、何かを失った感覚が強すぎて、
“婚活どころじゃない”が正直なところだった。

「ひかりさん、最近……なんか、落ち着きましたよね」

常連のマダムがそう言った。
美容室の鏡越し、目元を緩めながら。

「落ち着いたっていうか……諦めた?」

「諦めちゃったの?」

「うん、婚活」

「えええ~~!?あんなに頑張ってたのに!」

「だから、疲れちゃったんだってば」

それでも私は笑った。
ちゃんと、笑えた。

悲しいとか、寂しいとか、そういうのとは少し違う。
むしろ、今は**“自分を取り戻してる”**気がしてた。

誰かのためじゃなく、
条件のためじゃなく、
ただ、自分の人生を自分のテンポで進める。

それだけで、充分尊く感じていた。

夜。営業を終えて、椅子に深く沈む。

「……川原、どうしてるかな」

思わずつぶやいた自分に、苦笑する。

「何日会ってない?」

スマホのトーク履歴を開いたまま、指が止まる。

《ひかりがどうしたいか、ちゃんと待ってる》

最期に来たのは、それだけだった。
スタンプも、軽口も、どこかで止まった。

私が「追いかけたくない」と言ったから。
川原は、その通りに「止まって」くれてる。

誠実で、まっすぐで、
そして、バカみたいに律儀な男。

わかってる。
彼も“迷ってる”んだ。
あたしを大切に思ってるのも、本当なんだ。

でも、いまは……離れていたい。

自分の中の濁りが晴れるまで。
誰にも依存しない強さを取り戻すまで。


川原サイド――

オフィスの窓際に座りながら、川原は缶コーヒーを傾けていた。

机の上には、誰も使っていない面談用のファイル。

《大庭ひかり:ステータス保留中》

ステータスなんて、データの中でしか存在しない言葉。

今の彼女は、婚活から離れた。
そして、自分からも。

「あいつ、やっぱ強えよな……」

ぽつりと漏れた声は、自嘲でも、尊敬でもあった。

誰かに依存せず、ちゃんと“自分で立ってる”。

それが、どれだけ難しいことか。
あの日、正面から気持ちをぶつけてきた彼女を思い出す。

「好きだったけど、もう追いかけたくない」

本当は、その言葉が、いちばん胸に刺さっていた。

ちゃんと好きだった。
でも、“答え”を出せなかった。
彼女が欲しかった未来を、「今は無理」としか言えなかった。

それが、情けなくて、悔しかった。

でも今は、彼女の強さをちゃんと受け止めて、
自分もそれに追いつきたいと思っている。

逃げずに、“覚悟”を持てる男にならなきゃ――。


数日後――

私は、川沿いの遊歩道を歩いていた。
あの場所。川原と“模擬デート”をした、あの道。

春の風が、髪を揺らす。

スマホに届いていた、川原からの通知。

《今日、そっちの店、何時まで?》

返事をするつもりはなかった。
けれど、指が、勝手に動いた。

《18時まで》

その1分後。

《じゃあ、迎えに行く》

やめてよ。
そういうタイミングで来られたら、
また期待しそうになるじゃんか。

でも――待ってる自分がいた。
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