元ヤン女子、婚活はじめました ~結婚って魂のぶつけ合いだよね!

naomikoryo

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第20話(最終話)「“この人でよかった”って言える日」

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結婚って、もっとドラマチックなものかと思ってた。
プロポーズのセリフとか、指輪のサイズとか、涙のサプライズとか。

でも実際は――

「え、じゃあさ、どうする?来月の連休、うちの親んとこ行っとく?」

「いやちょっと待て。まず俺の親に会えや」

「じゃあじゃんけんで順番決めるか」

「はいはいはい、安定の“お前の勝ち”なやつな」

焼肉屋のカウンター。
目の前でジュウジュウ焼かれてるハラミと共に、
ふたりの“結婚話”はゆるゆると進んでいた。

川原翔太と付き合って3ヶ月。
驚くほど、自然だった。

仕事の合間に連絡を取り合い、週末はカジュアルに会い、
お互いの生活を邪魔せず、それでも“寄り添ってる”感覚。

付き合ったからって、劇的な何かが変わったわけじゃない。
でも、それがいい。
変わらないままで、ちゃんと恋ができてるのが嬉しかった。

ある日。私の部屋で、川原がぽつりと言った。

「結婚ってさ、“誓う”もんじゃなくて、“選び続ける”もんだよな」

「は?」

「いや、ふと思ったんだ。
式とか契約とかで『一生を共に』って言うけど、
本当は毎日、相手を選び直していくもんなんじゃねえかなって」

「……深いんだか面倒なんだか分かんねーな、その思考回路」

「でも、毎朝起きて、“今日もこの人でいい”って思えるのって、すごくね?」

私は少し黙って、それから頷いた。

「たしかに。
あたし、毎朝思ってるもん。
“今日もこのうるせぇ奴、嫌いじゃないな”って」

「うるせぇは余計だろ」

「でも、ほんとだよ」

そして、あの日がやってきた。

ふたりでふらっと入った雑貨屋で、何気なく見てた指輪。
シルバーのシンプルなペアリング。

「これ、どうする?」

「……欲しいか?」

「うん。なんか、持ってたい。別に高いのじゃなくていい。
“これからも一緒にいよう”って、
自分たちだけがわかる印があれば」

「じゃあ買うか。てか、買ってやるよ」

「割り勘でいいよ。どうせそのうち財布一緒になるし」

「……それ、今のとこで一番プロポーズっぽくね?」

「マジで?やっべ、言い直そか?」

「や、いい。“らしい”から」

そうして選んだ指輪をつけたその日、
川原が笑いながら言った。

「じゃあさ、これから先、いろいろあるだろうけど――」

「うん」

「喧嘩しても、飴で許してくれる?」

私は笑った。

「飴よりも、この指輪で引っ叩くぞ?」

「やべぇ、最高にお前らしいわ」

結婚って、“特別なゴール”じゃなかった。

“この人でよかった”って、毎日思えるか。
そして、“この人といる自分”が好きでいられるか。

たぶん、それが“幸せ”ってやつなんだ。

春の終わり。

美容室の前で、川原が車を停めて待っている。
助手席には、今日会いに行く予定の私の母へのお土産。

「マジで今日、緊張するって」

「大丈夫。うちの母、あんたのこと“顔はいい”って言ってたから」

「そこだけかよ!」

「まあ、あとは……“あんたといると、私が楽しそう”って」

川原は少しだけ黙って、それから小さく笑った。

「……なら、もう十分だな」

私は助手席のドアを開けて、
笑いながら、こう言った。

「さ、うるせぇけど、頼りにしてる“未来の旦那”さん。行きますか」

《完》

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