魔法少女は会社員

naomikoryo

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第3章:旧戦線再結集

第7話:再び仲間に

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日曜の夕方、雨が降り出す直前の新宿。
駅前の人波がざわめく中、ミユキはナナとアイナと共に、一本裏通りの雑居ビルへと入っていった。

「……ここで間違いないわよ。報告があったのは昨日の夜。
“路上で無意識に魔力反応を発していた女性が保護された”って」

「しかも“精神混濁状態”のまま、“自己名も名乗れなかった”らしいわ」

アイナが言う。

「魔力は強い?」

「核の残響としては“生存者級”。
つまり――私たちの仲間だった者、の可能性が高い」

ミユキは無言で頷いた。

雑居ビルの五階、精神ケア施設と掲げられた扉の奥。
受付に事情を伝えると、すぐに個室へと案内された。

その部屋の奥に――彼女はいた。

ベージュのパーカーに、無地のロングスカート。
うつむき加減で、ただ静かに座っている。
肩まで伸びた髪の先に、かすかに魔力の揺らぎ。

「……まどか?」

ミユキの声が、かすかに震えていた。

女は、ゆっくりと顔を上げた。
その目に、確かに記憶の影が揺れる。

「――……ミユ……キ?」

声が出た。震えながらも、確かに名前を呼んだ。

「まどか……! やっぱり、あなた……!」

ミユキが駆け寄り、そっと肩に触れる。

まどかの体が、一瞬ビクリと震える。
だが拒絶はない。

「久しぶりだね……みんな、変わってない……」

かすれた声に、ナナもアイナも言葉を失った。

「あなた、今までどこに……?」

「わからないの。ある日、目が覚めたら“自分が誰か”分からなかった。
でも時々、夢を見てた。光の中で、剣を振るう女の子たちがいた夢……
それが、あなたたちだった」

「記憶の摩耗……じゃなくて、魔力遮断による断片化ね」

ユリが、小声でミユキに伝える。

「彼女は“自分から力を閉じた”のではなく、“何者かによって切られた”痕跡がある」

「誰かに……?」

「強制断魔。稀に使われる手段。
魔力と記憶を同時に切ることで、戦闘者の人格を安全化する処置だ」

「そんな……人の記憶を、勝手に……」

ミユキの拳が震える。

だが、まどかは微笑んだ。

「不思議と、悲しくはないの。
こうして、あなたたちに会えてるからかな……
本当に、懐かしいなって、思えるから」

ミユキは、そっとまどかの手を握った。

「今も、あなたの中に“核”が残ってる。
魔法はまだ、消えてない。
だから、私たちは、まだ“仲間”になれる」

「……なって、いいの?」

まどかの目に、ほんの少し光が戻る。

ナナが言った。

「もちろんよ。あなたの帰る場所は、ここにある」

「ずっと一緒に戦ってきたじゃない。忘れてたって関係ないわ」

アイナも続く。

まどかの目から、ぽろりと涙がこぼれた。

「……ありがとう」

その一言に、三人はそっと寄り添った。

魔法が戻るのは、記憶が戻るからじゃない。
“誰かと再び繋がった”とき、魔力は目を覚ます。

その瞬間――まどかの胸元に、微かな光が灯った。

「……これは……」

「魔法核の再点火だ」

ユリが言う。

「彼女は、再び魔法を持つ資格を得た。
強制的に奪われた力が、今、自らの意思で戻ってきた」

ミユキは微笑んだ。

「おかえり。私たちの戦線へ」

まどかは涙を拭い、そっと頷いた。

「……ただいま」

その言葉が、魔法よりも強い力を持って、彼女たちを包んだ。

かつての仲間は、再び歩き出す。

記憶が欠けても、傷があっても、繋がりが残る限り、再び立ち上がれる。

彼女たちは、もう一度“仲間”になったのだ。
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