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第8章:その力で、何を選ぶか
第4話:襲撃
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夜の東京は、いつもより静かだった。
異界の発生に伴い都心部の交通は規制され、人の気配が消えていく。
それでも、LinkLineの本部へと戻る途中のミユキの足取りは迷いなかった。
柏木から知らされた“志織の記録”。
彼女が制度と異星体の実験に利用され、感情を提出させられた事実は、ミユキに深い怒りと決意を刻み込んだ。
(魔法は、誰かに与えるもの――
それが、記録のためだけに搾り取られていたなんて)
空を見上げる。
灰色の雲の隙間に、異界のひび割れのような光が、かすかに瞬いていた。
そんな時だった。
「……神代ミユキ」
名を呼ばれた瞬間、背筋が氷の刃で撫でられたような感覚が走る。
反射的に振り向くと、そこに“人の形をしたもの”が立っていた。
黒衣に身を包み、顔は半透明の仮面で覆われている。
かつてミユキたちが対峙した“仮面の男”とは異なる、新たな個体。
だが、放たれる気配は明らかに同じ源を持っていた。
「あなたは……」
「リンクライン構成員、神代ミユキ。
本体クラモチに対し、感情干渉による秩序破壊を試みた対象として、排除を決定」
瞬間、空間が歪む。
(来る!)
魔法の核が反応するよりも速く、男の腕から射出された光線が空気を裂いた。
咄嗟に体をひねり、避ける。
スカートの裾が焦げ、熱が肌を焼く。
「これ……ただのエネルギーじゃない……“記録情報”を破壊する波動!」
まるで、記録媒体そのものを壊すために設計された魔法。
人間にとっての“命”ではなく、“存在そのもの”を抹消する力。
「……あなた、何者……なの?」
「我々は“記録意思”。
クラモチ本体の判断に基づき、“地球にとっての感情という誤謬”を再構成する装置である」
まるでプログラムのような言葉。
感情も、憎しみもない。
そこにあるのは、“排除”という一語だけ。
(やばい……このままじゃ……)
ミユキが剣を抜こうとしたその瞬間、
横合いから誰かが飛び込んできた。
「ミユキっ……!」
視界が揺れた。
次の瞬間、何か重いものが自分を押し倒していた。
そして――
「ぐっ……!」
鈍い音と共に、何かが裂け、血の匂いが広がった。
「柏木……!?
なんで、ここに……」
「来る……と思ってた……
あいつら、君を消しに来るって……わかってたから」
柏木の胸には、はっきりと撃ち抜かれた痕があった。
さっきの光線とは違い、直接心臓を狙った“殺すため”の魔力弾だった。
「どうして……自分の体だって……!」
「志織の記録を読んだとき……やっと気づいたんだよ。
僕は……制度の一部にいるふりをして、
ずっと復讐にしがみついてた。
志織のために、“倉持”を利用しようとしてた。
……でも、本当は、僕の方がずっと、あいつに利用されてたんだ」
ミユキは、膝の上の柏木を必死に支えながら叫ぶ。
「黙って!そんなこと、今言わなくていいから!
救急車呼ぶから!治療班、LinkLineに連絡して……!」
「聞いてくれ……僕は、制度の中で……
“名前のない記録”を見てきた。
意味を持たないと思っていたその記録が……
今、君を守ろうとしてるんだよ」
「意味がなかったわけないでしょ!」
ミユキは叫ぶ。
「だって、私たちはその記録を信じてきた!
名前がなくても、意味がなくても、
“残したい”と思った感情が魔法になるって、ずっと言ってきた!」
柏木の口元に、かすかな笑みが浮かぶ。
「……君の魔法、やっぱり……好きだったな……」
その瞬間、仮面の襲撃者がゆっくりと手を引く。
「目標:生命反応残存。
処理完了――一時的撤退。
記録対象に“痛み”を刻むことに成功」
空気がひび割れ、男の姿は歪んだ異界の裂け目の向こうに消えた。
ミユキは、呆然と立ち尽くす。
その後、柏木はLinkLineと連携する魔力医療班の手で運ばれた。
傷は深く、心臓はかろうじて動いていたが、意識は戻らなかった。
ミユキは、ベッドの横で膝をついたまま、しばらく泣いていた。
涙はとめどなく、声も出なかった。
ただ一つ――彼女の中に、揺るがぬ炎が芽生えていた。
(この戦い、終わらせる。
もう誰一人、“記録から消させない”)
その想いが、静かに魔法核を灯す。
淡い光が、病室の床を照らしていた。
異界の発生に伴い都心部の交通は規制され、人の気配が消えていく。
それでも、LinkLineの本部へと戻る途中のミユキの足取りは迷いなかった。
柏木から知らされた“志織の記録”。
彼女が制度と異星体の実験に利用され、感情を提出させられた事実は、ミユキに深い怒りと決意を刻み込んだ。
(魔法は、誰かに与えるもの――
それが、記録のためだけに搾り取られていたなんて)
空を見上げる。
灰色の雲の隙間に、異界のひび割れのような光が、かすかに瞬いていた。
そんな時だった。
「……神代ミユキ」
名を呼ばれた瞬間、背筋が氷の刃で撫でられたような感覚が走る。
反射的に振り向くと、そこに“人の形をしたもの”が立っていた。
黒衣に身を包み、顔は半透明の仮面で覆われている。
かつてミユキたちが対峙した“仮面の男”とは異なる、新たな個体。
だが、放たれる気配は明らかに同じ源を持っていた。
「あなたは……」
「リンクライン構成員、神代ミユキ。
本体クラモチに対し、感情干渉による秩序破壊を試みた対象として、排除を決定」
瞬間、空間が歪む。
(来る!)
魔法の核が反応するよりも速く、男の腕から射出された光線が空気を裂いた。
咄嗟に体をひねり、避ける。
スカートの裾が焦げ、熱が肌を焼く。
「これ……ただのエネルギーじゃない……“記録情報”を破壊する波動!」
まるで、記録媒体そのものを壊すために設計された魔法。
人間にとっての“命”ではなく、“存在そのもの”を抹消する力。
「……あなた、何者……なの?」
「我々は“記録意思”。
クラモチ本体の判断に基づき、“地球にとっての感情という誤謬”を再構成する装置である」
まるでプログラムのような言葉。
感情も、憎しみもない。
そこにあるのは、“排除”という一語だけ。
(やばい……このままじゃ……)
ミユキが剣を抜こうとしたその瞬間、
横合いから誰かが飛び込んできた。
「ミユキっ……!」
視界が揺れた。
次の瞬間、何か重いものが自分を押し倒していた。
そして――
「ぐっ……!」
鈍い音と共に、何かが裂け、血の匂いが広がった。
「柏木……!?
なんで、ここに……」
「来る……と思ってた……
あいつら、君を消しに来るって……わかってたから」
柏木の胸には、はっきりと撃ち抜かれた痕があった。
さっきの光線とは違い、直接心臓を狙った“殺すため”の魔力弾だった。
「どうして……自分の体だって……!」
「志織の記録を読んだとき……やっと気づいたんだよ。
僕は……制度の一部にいるふりをして、
ずっと復讐にしがみついてた。
志織のために、“倉持”を利用しようとしてた。
……でも、本当は、僕の方がずっと、あいつに利用されてたんだ」
ミユキは、膝の上の柏木を必死に支えながら叫ぶ。
「黙って!そんなこと、今言わなくていいから!
救急車呼ぶから!治療班、LinkLineに連絡して……!」
「聞いてくれ……僕は、制度の中で……
“名前のない記録”を見てきた。
意味を持たないと思っていたその記録が……
今、君を守ろうとしてるんだよ」
「意味がなかったわけないでしょ!」
ミユキは叫ぶ。
「だって、私たちはその記録を信じてきた!
名前がなくても、意味がなくても、
“残したい”と思った感情が魔法になるって、ずっと言ってきた!」
柏木の口元に、かすかな笑みが浮かぶ。
「……君の魔法、やっぱり……好きだったな……」
その瞬間、仮面の襲撃者がゆっくりと手を引く。
「目標:生命反応残存。
処理完了――一時的撤退。
記録対象に“痛み”を刻むことに成功」
空気がひび割れ、男の姿は歪んだ異界の裂け目の向こうに消えた。
ミユキは、呆然と立ち尽くす。
その後、柏木はLinkLineと連携する魔力医療班の手で運ばれた。
傷は深く、心臓はかろうじて動いていたが、意識は戻らなかった。
ミユキは、ベッドの横で膝をついたまま、しばらく泣いていた。
涙はとめどなく、声も出なかった。
ただ一つ――彼女の中に、揺るがぬ炎が芽生えていた。
(この戦い、終わらせる。
もう誰一人、“記録から消させない”)
その想いが、静かに魔法核を灯す。
淡い光が、病室の床を照らしていた。
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