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第8章:その力で、何を選ぶか
第6話:再び、魔法少女に
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LinkLineの記録ホールには、ひとつの箱が置かれていた。
かつて柏木悠真が、誰にも告げず、密かに設計していた魔法機構――
名称は「再同調魔法媒体生成装置」。
簡単に言えば、“かつて魔法少女だった者が一時的に魔法を再現する”ための装置だった。
柏木はそれを、自らの妹・志織のために開発していた。
彼女の失われた感情を、記録を、もう一度形にするために。
だが、その装置は一度も起動されることなく、記録保管庫の奥で眠っていた。
今――それが必要とされていた。
「本当に動くの、これ?」
ナナが眉をひそめながら、箱を見つめる。
その装置は、あまりにシンプルだった。
円筒状の中央媒体、内部に魔法核の残響を保存するマトリクス構造、そして感情入力用の小型端末。
「この装置は、記録から魔法を“引き出す”ものです」
アイナが説明する。
「魔法少女本人の“魔法使用時の記録波形”を読み込み、
一時的にその状態へと肉体を同期させる。
ただし、使用可能時間は数分程度。
一度使えば、“記録媒体そのものが破損”する可能性が高い」
「つまり、最後の一回ってことだな」
ナナが肩をすくめた。
「うん。もう一度“魔法少女”になるための、たった一度の魔法」
ミユキが静かに言った。
「これを、全国の元契約者に転送するの?」
「正確には、感情同期媒体の設計図。
地方ごとの支部で、それぞれ組み立ててもらう形になる。
魔法の“記録”はすでにLinkLineの非公式ファイルに残ってる。
だから、回路が完成すれば、装置が彼女たちを“魔法に戻す”」
「本当に、やるのね」
つかさが小さく息を吐く。
「私たちは、もう制服のスカートも履けない年齢なのに」
「関係ない」
ミユキはきっぱりと答えた。
「魔法は、“誰かを守りたい”って思った瞬間にしか宿らない。
だから、私たちが“今”それを望むなら――
今が、私たちの変身のときだよ」
その夜、全国各地の元魔法少女たちのもとに、感情同期媒体の設計情報が届いた。
■ 北海道・如月しの(32)
カフェの地下に設置された魔力制御盤。
しのは自作の装置にデータを読み込ませる。
媒体に触れた瞬間、若いころの“あの感覚”が戻ってくる。
「また“私の魔法”が、街を守れるなら――
そのためだけに、もう一度“変身”してもいいと思った」
■ 福岡・原口セラ(29)
コンクリートのビルの屋上。
セラは、自分の記憶の中の“契約の瞬間”に手を触れる。
「私は一度逃げた。
魔法から、制度から、戦いから。
でも、あの記録を見た時――
“誰かが覚えてくれてた”って思えた。
……なら、戦える」
■ 大阪・天野マユ(35)
学校の旧備品室。
魔法核のない変身を、マユは一度だけ試みる。
「これは奇跡じゃない。
記録の連続にすぎない。
でも、“最後の一ページ”は、自分で書くと決めた」
媒体が淡く光り、彼女の手の中に再び杖が現れる。
ミユキたちの前でも、魔力の波が震えた。
「来てる……全国各地から、魔法反応が届いてる」
ユリが表示するホログラムマップのあちこちに、小さな光点が灯る。
それはまるで、かつて灯され、そして消えた無数の魔法たちが――
再び、空へ昇っていくようだった。
「記録は、終わってなかった」
アイナが呟く。
「書き終えたと思ったページが、“めくれた”だけだったんだ」
「そして、そのページをめくったのは、
記録に名前がなかった私たち自身だった」
ミユキの目に、金色の光が宿る。
夜明け前。
LinkLine本部の中庭にて、メンバーたちは最後の点呼を行った。
ナナは、かつての戦闘服に袖を通しながら苦笑する。
「……ちょっと腹きついけど、何とか入った」
まどかが「ナナさん……」と笑いながら見ている。
つかさとすみれも、旧式の変身媒体を調整しながら立ち上がる。
そしてミユキが一歩前に出ると、全員が静かになった。
「魔法少女として、
じゃなくて――“私たちとして”戦います」
「制度じゃなくて、記録のために」
「この星を守るんじゃない。
“魔法が生きてきた証”を守るんだ」
全員が頷いた。
そして、全員の手に、それぞれの媒体が輝き始めた。
魔法は戻ってきた。
それは制度でも、管理でもなく、
“記録に宿った感情”そのもの。
再び魔法少女に。
ただ、それだけの理由で、彼女たちは変わる。
戦いが始まる。
最後の記録を刻むために――
かつて柏木悠真が、誰にも告げず、密かに設計していた魔法機構――
名称は「再同調魔法媒体生成装置」。
簡単に言えば、“かつて魔法少女だった者が一時的に魔法を再現する”ための装置だった。
柏木はそれを、自らの妹・志織のために開発していた。
彼女の失われた感情を、記録を、もう一度形にするために。
だが、その装置は一度も起動されることなく、記録保管庫の奥で眠っていた。
今――それが必要とされていた。
「本当に動くの、これ?」
ナナが眉をひそめながら、箱を見つめる。
その装置は、あまりにシンプルだった。
円筒状の中央媒体、内部に魔法核の残響を保存するマトリクス構造、そして感情入力用の小型端末。
「この装置は、記録から魔法を“引き出す”ものです」
アイナが説明する。
「魔法少女本人の“魔法使用時の記録波形”を読み込み、
一時的にその状態へと肉体を同期させる。
ただし、使用可能時間は数分程度。
一度使えば、“記録媒体そのものが破損”する可能性が高い」
「つまり、最後の一回ってことだな」
ナナが肩をすくめた。
「うん。もう一度“魔法少女”になるための、たった一度の魔法」
ミユキが静かに言った。
「これを、全国の元契約者に転送するの?」
「正確には、感情同期媒体の設計図。
地方ごとの支部で、それぞれ組み立ててもらう形になる。
魔法の“記録”はすでにLinkLineの非公式ファイルに残ってる。
だから、回路が完成すれば、装置が彼女たちを“魔法に戻す”」
「本当に、やるのね」
つかさが小さく息を吐く。
「私たちは、もう制服のスカートも履けない年齢なのに」
「関係ない」
ミユキはきっぱりと答えた。
「魔法は、“誰かを守りたい”って思った瞬間にしか宿らない。
だから、私たちが“今”それを望むなら――
今が、私たちの変身のときだよ」
その夜、全国各地の元魔法少女たちのもとに、感情同期媒体の設計情報が届いた。
■ 北海道・如月しの(32)
カフェの地下に設置された魔力制御盤。
しのは自作の装置にデータを読み込ませる。
媒体に触れた瞬間、若いころの“あの感覚”が戻ってくる。
「また“私の魔法”が、街を守れるなら――
そのためだけに、もう一度“変身”してもいいと思った」
■ 福岡・原口セラ(29)
コンクリートのビルの屋上。
セラは、自分の記憶の中の“契約の瞬間”に手を触れる。
「私は一度逃げた。
魔法から、制度から、戦いから。
でも、あの記録を見た時――
“誰かが覚えてくれてた”って思えた。
……なら、戦える」
■ 大阪・天野マユ(35)
学校の旧備品室。
魔法核のない変身を、マユは一度だけ試みる。
「これは奇跡じゃない。
記録の連続にすぎない。
でも、“最後の一ページ”は、自分で書くと決めた」
媒体が淡く光り、彼女の手の中に再び杖が現れる。
ミユキたちの前でも、魔力の波が震えた。
「来てる……全国各地から、魔法反応が届いてる」
ユリが表示するホログラムマップのあちこちに、小さな光点が灯る。
それはまるで、かつて灯され、そして消えた無数の魔法たちが――
再び、空へ昇っていくようだった。
「記録は、終わってなかった」
アイナが呟く。
「書き終えたと思ったページが、“めくれた”だけだったんだ」
「そして、そのページをめくったのは、
記録に名前がなかった私たち自身だった」
ミユキの目に、金色の光が宿る。
夜明け前。
LinkLine本部の中庭にて、メンバーたちは最後の点呼を行った。
ナナは、かつての戦闘服に袖を通しながら苦笑する。
「……ちょっと腹きついけど、何とか入った」
まどかが「ナナさん……」と笑いながら見ている。
つかさとすみれも、旧式の変身媒体を調整しながら立ち上がる。
そしてミユキが一歩前に出ると、全員が静かになった。
「魔法少女として、
じゃなくて――“私たちとして”戦います」
「制度じゃなくて、記録のために」
「この星を守るんじゃない。
“魔法が生きてきた証”を守るんだ」
全員が頷いた。
そして、全員の手に、それぞれの媒体が輝き始めた。
魔法は戻ってきた。
それは制度でも、管理でもなく、
“記録に宿った感情”そのもの。
再び魔法少女に。
ただ、それだけの理由で、彼女たちは変わる。
戦いが始まる。
最後の記録を刻むために――
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