悪役令嬢が攻略対象ではないオレに夢中なのだが?!

naomikoryo

文字の大きさ
2 / 136

第1話『数学教師、異世界の食堂で職を得る』

しおりを挟む
 「こっちじゃ、カイ。食堂で腹を満たすとええ」

 学園長――本名、ヴェルナー=エインスヴァルトは、まるで祖父のような穏やかな笑顔でそう言った。

 目の前に現れたのは、まるで宮殿の中にでもあるような食堂。
 天井は高く、シャンデリアが吊るされ、磨かれた大理石の床が目をくらませるほど光ってる。

 「いやいやいや、どこの高級レストランやねん……学生食堂って聞いとったけど、ワイの想像とちゃうで……?」

 頭上で飛ぶ光球。料理を運ぶ魔法のトレイ。
 異世界感、全開や。

 席に案内されると、制服姿の給仕が丁寧にメニューを渡してくる。
 そこには見慣れない料理名がずらり。

 『ドラフ鳥の香草焼き』
 『マギスープ』
 『ルルパンのグリル・ユーカリソース』
 『ポンメル茸の蒸し焼き』

 「読めるけど味が想像つかん……ええい、いっちゃん上に書いてるやつ、頼むわ!」

 少し後、運ばれてきた料理は――なんと丸ごと焼かれた巨大な鶏のもも肉。

 「でっか……ほんで、めっちゃええ匂いするやん……! うっわ、うまそ!」

 ひと口かじった瞬間、口いっぱいに広がる旨味と香草の香り。
 皮はパリパリで中はジューシー。
 味付けは塩と魔法スパイスのみやのに、深みがすごい。

 「うっっっっま! おいちょっとこれ……大阪帰ったら絶対流行るやつやで……!」

 カイがあまりにも感動しすぎて、周囲の生徒たちが「何者やこいつ」と振り返ってきたのは、言うまでもない。

◆◇◆

 食事を終えると、学園長に連れられて一つの教室に入った。
 そこには3人の老人が待っていた。魔導省から派遣された数学担当の学識者らしい。

 「彼が……異世界の“数学”を知っているという?」

 「試してみよう。貴殿、これを解いてみたまえ」

 渡されたのは、ルーン魔法陣の解析問題。
 複雑な文様、幾何学的な配置、法則に基づく魔力流動式が詰まった紙。

 「うわ、まるでセンター模試の図形問題みたいやな。ええで、ちょい待ってな……」

 カイは紙とペン(魔道用の筆記具)を手に、式を整理し始める。
 楕円形の中心座標、ベクトルの内積、角度の変換、流入と流出のバランス式――

 「ふむふむ……つまり、これはX軸の魔力密度がYに依存してて……おおっと、ここは補助線引いた方が楽やな……」

 ものの数分でカイは計算を終える。

 「ほい。これでたぶん、全部解けるはずや。あと、ここ修正せんと魔法暴発するで」

 魔導教授たちは紙を覗き込んで、硬直した。

 「……ま、間違いない。彼は、“魔導式の構造”を……式で解析している……!」

 「そ、そんな……この式を理解できる者など、王国には数人しかおらぬぞ……!」

 「というか、こんな短時間で理解するなど……バケモノか?」

 カイはポカンとしてた。

 「え……これ、日本の高校やと普通に教えとるレベルやで……?」

 (……いや、嘘やな。ちょっと難しすぎるか。ワイが変やったんか……)

 その後、会議は即断で決まった。

 「彼を、ロゼリア王立魔法学園の臨時数学教師として採用する!」

 こうしてカイは、正式に学園の一員となった。
 着替えさせられた教員用ローブは、妙に似合ってて、生徒に「誰あの若いイケメン?」と噂されるレベル。

 「いや、イケメンは言いすぎやろ……せやけど、ありがとう、これでやっと寝床と飯にありつける……」

◆◇◆

 その日の午後。カイは学園内を散策していた。
 全体的に石造りの荘厳な建築。広大な敷地に庭園、噴水、馬車が通る道――どれを取っても、平民には想像もつかん贅沢さ。

 「あー……せやな。こういうのが“貴族の学園”っちゅうやつか」

 ふと、豪奢な噴水の前に人だかりができていた。

 「なんやなんや……もめてる?」

 人垣をかき分けて見てみると、そこには一人の少女と、貴族風の青年が向かい合っていた。

 「……ルーティア、お前との婚約は破棄させてもらう」

 そう言ったのは、王国第一王子、レオン・アーデルハイト。
 金髪碧眼の完璧王子。ゲームでいうとこの、ド本命攻略対象や。

 そして向かい合う少女――金髪に宝石のような紅の瞳。
 勝気な表情、完璧なドレス姿。

 彼女こそ、この乙女ゲーム世界における“悪役令嬢”――ルーティア・フォン・ヴァレンシュタインその人やった。

 「……ほう? ふざけてるのかしら、レオン。私との婚約を破棄? その理由は?」

 「もう君に、心がないからだ。僕は……他に好きな人がいる」

 「他に……? まさか、あの平民の……フィリアとかいう娘のこと?」

 ざわ……と生徒たちがざわついた。まさかの“婚約破棄イベント”真っ最中。

 (あかん……これ、乙女ゲームとかでようあるやつや……)

 カイが呆然と眺めていると、急に視線がぶつかった。
 ルーティアの視線が、カイを真っ直ぐに捕らえた。

 「……何よ、そこの男。庶民風情が、私を見るとはいい度胸ね」

 「は? いやいや、ワイなんもしてへんで?」

 「その喋り方……気に食わないわ。学園に紛れ込んだ変人かしら?」

 「あんたなぁ、初対面でそれはないやろ……関西弁に偏見持ちすぎやて……」

 「っ……何その言語、妙に耳に残って……イライラするっ!」

 (えええええぇぇぇぇぇ!?)

 ――それが、悪役令嬢ルーティアとの最悪の出会いやった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

処理中です...