悪役令嬢が攻略対象ではないオレに夢中なのだが?!

naomikoryo

文字の大きさ
35 / 136

第34話『豪華すぎる朝食と奥様気取りの令嬢』【カイとルーティアの夏休み編③】

しおりを挟む
 夕食を終えたあと、エレオノーラ夫人が静かに告げた。

 「カイ先生。今夜からはルーティアと同じ部屋でお過ごしになっても構いませんよ」

 「なっ……!?」
 カイは椅子から転げ落ちそうになった。

 「ちょ、ちょっと待ってください夫人! それだけは……!」

 ルーティアは当然といった顔で頷く。
 「そうですわね。夫婦ですもの、同じ部屋で――」
 「まだ夫婦ちゃうから! そこは一線引かせてもらいます!」

 カイは必死に手を振り、声を張った。

 「これは教師としても、男としても守らなあかんラインや! ワイは絶対にゲストルームで寝る!」

 使用人たちは目を丸くし、夫人も思わず笑みをこぼす。
 「真面目なのね……でも、そういうところが信頼できるわ」

 結局、公爵邸の一角にある豪華なゲストルームがカイの部屋となった。

 ただし――

 「……でも毎朝のお迎えは、私がしますからね?」
 そうルーティアが言ったときだけは、カイも押し黙った。

 「……それぐらいやったら、しゃあないか」
 「はい、決まりですわ」

 その瞬間、ルーティアは勝ち誇ったように笑った。

◆◇◆

 翌朝。

 豪華なベッドの上で、カイはぼんやりと目を開けた。
 窓から差し込む朝日が白いカーテンを透かしている。
 「……夢やないんやなぁ。ホンマに公爵邸におるんか」

 と、次の瞬間。

 ガチャッ、とドアが開いた。
 「旦那様ぁ、朝ですよぉ」

 ルーティアがにこにこと入ってきた。
 白のネグリジェ姿に薄手のガウン。長い髪は寝癖ひとつなく整っていて、まるで舞踏会の姫のよう。

 「な、なんでそんな格好で来るねん!?」
 「だってあなたをお越しに来たんですもの。奥様の務めですわ」
 「奥様ちゃうて言うてるやろ!」

 ルーティアは遠慮なくベッドに腰掛け、毛布を引っ張る。
 「ほら、早く起きてくださいまし。朝食が冷めますわ」
 「うわ、ちょ、乱暴やな! ワイ、寝起き弱いんや!」

 そのまま無理やり引き起こされ、髪を撫でられる。
 「ふふっ、寝癖がかわいい」
 「かわいい言うな! ワイは男や!」
 「はい、かわいい旦那様ですわ」
 「話聞けーー!」

◆◇◆

 身支度を整え、二人は食堂へ向かう。
 そこには長いテーブルいっぱいに並べられた豪華な朝食が待っていた。
 香ばしいパン、黄金色のオムレツ、香草をまぶしたソーセージ、新鮮なフルーツ。
 「うわぁ……ビュッフェやん」
 「びゅっふぇ?」
 「ええわ、朝から食い過ぎ注意やな」

 席につくと、ルーティアが当然のように隣に座る。
 そしてナイフとフォークを手に取り、パンをちぎってカイの皿に置き、ソーセージを切り分けて差し出した。

 「はい、あーん」
 「誰があーんするか!」
 「奥様の務めですから」
 「その言葉、何回使うんや!」

 観ていた執事やメイドたちが、くすくすと笑っている。
 「まぁ、仲睦まじいご夫婦ですね」
 「まるで新婚の朝ですわ」

 「新婚ちゃう! ワイはただの臨時教師や!」
 必死で否定するカイだが、口に押し込まれたソーセージの味は絶品だった。

 ルーティアはさらに張り切る。
 「旦那様、牛乳も飲んでください。骨が丈夫になりますわ」
 「ワイは子供ちゃうで!」
 「いいえ、大きな子供です」
 「いや、身長180超えとるおっさんに言う言葉ちゃう!」

 それでも、差し出されたグラスを渋々飲み干すと、周りからはまたも「まぁ素敵……」と感嘆の声。

 食事が終わるころ、兄ヴィルヘルムとユリウスが入ってきた。
 「……朝から随分と仲が良いな」
 「昨日は頑なに同室を拒んでいたのに、もう夫婦のようではないか」

 「ちゃう! これは強制や! ルーティアの暴走や!」
 「ふふん、暴走ではなく“愛”ですわ」
 「愛とか言い切るなーー!」

 最後にエレオノーラ夫人が姿を現し、にこやかに告げた。
 「カイ先生。こうして見ていると、やはりあなたは家族同然ですね」

 カイは頭を抱え、深くため息をついた。
 (あかん……この家、全員がワイを婿に仕立てあげる気や……!)

 こうして、カイの“公爵家夏休み生活”は朝から奥様気取りの令嬢に翻弄されながら幕を開けた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命
ファンタジー
 前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。  しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。  悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。  ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...