悪役令嬢が攻略対象ではないオレに夢中なのだが?!

naomikoryo

文字の大きさ
89 / 136

第88話『救出作戦』【陰謀と真実の序曲編⑧】

しおりを挟む
 学園の作戦室――普段は研究会の集まりに使われる大広間。
 クロス組と護衛団十九人、そしてルーティアとカイが一堂に会していた。
 机の上には羊皮紙が広げられ、墨で描かれた地図がランプの光に揺れている。

「敵は仮面をかぶった連中。魔法と物理を組み合わせ、縫い付けるように捕縛する手を使う。」
 ルーティアが剣の柄を握りしめながら言った。
「リリシアを攫ったのも、その方法でしょう。」

「せやな。」
 カイは腕を組み、顎を撫でる。
「ただ、“どこへ連れて行かれたか”が問題や。街の外か、森か、あるいは……。」

 そこで、彼は机にチョークを走らせた。
 地図の上に点を打ち、直線を引き、角度を測る。
「襲撃現場、消えた時間、残された痕跡……全部数値に置き換えるとやな。」
 数式が羊皮紙の上に並び、複雑な模様を形作っていく。

「式が収束する場所は――ここや。」
 カイが指差したのは、街外れの古い砦跡だった。
 今は廃墟同然で、旅人すら近づかない危険地帯。

「なるほど……!」
 ツェイルが身を乗り出す。
「時間も距離も計算が合う!」
「さすが先生!」
 双子が声を揃えて叫び、次の瞬間、さらに揃って。
「せやな!」
「せやな!」
 カイのツッコミが飛ぶ。
「“せやな”は一回でええ!」

◆◇◆

 作戦会議は続く。

「突入は三手に分かれるべきですわ。」
 ルーティアが紅剣を机に置き、真剣な目で皆を見渡した。
「正面突破、裏門からの潜入、そして上からの奇襲。」

「なら俺が先行する。」
 ツェイルが手を挙げる。
「影を駆ければ、砦の上から侵入できる。」

「幻術は私が。外から見えぬように膜を張ろう。」
 カサが眼鏡を押し上げる。

「兄者、俺たちは左右から。」
「弟よ、その通りだ。」
「せやな!」
 また揃う双子。

「私は補給。毒霧も眠り煙も用意してあります!」
 メリルは瓶を胸の前にぎゅっと抱きしめる。

 最後にゴルムが、静かに拳を握った。
「俺は正面。大盾となる。……通行止めや。」

 カイはみんなの顔を見回し、にやりと笑った。
「ええやん。完璧な布陣や。これなら十九人全員が活躍できる。」

「旦那様は?」
 ルーティアが問いかける。

「ワイは調整役や。数式で敵の魔法陣を崩す。あと、リリシアを見つけたら即座に守りに入る。」

「……頼りにしてますわ。」
 ルーティアの声は少しだけ柔らかくなった。

◆◇◆

 護衛団の一人が、おずおずと手を挙げる。
「先生……作戦の名前はどうします?」

「名前?」
「はい! こういうのには名前が必要です!」
「……せやな!」
 また双子が食い気味に被せる。

 ゴルムが腕を組み、真剣にうなる。
「“なんでやねん作戦”。」

「やめぇ!!」
 カイのツッコミに、全員が大爆笑した。
 だが笑いの奥には、確かな緊張が残っている。

◆◇◆

 会議が終わり、皆が準備に散った後。
 ルーティアはひとりカイの傍に残った。

「旦那様。」
「なんや。」
「リリシアは必ず助けますわ。……でも、もし彼女が敵の手で“何か”されていたら……。」

 ルーティアの声は低く、真剣だった。

「その時は、私が斬ります。」

 カイはしばし沈黙し、やがてぽつりと。
「……そん時はワイが先に止める。あんたの手を血で汚すんは嫌や。」

「旦那様……。」
 ルーティアは唇を結び、深く頷いた。

「魔王っていうのは、本当なのでしょうか?」
「……おそらくな」
「では、リリシアは…」
「……まぁ、そういうこったろうな」
「そもそも、魔族は人の敵だと…」
「そう教わったんか?」
「…はい。」
「じゃあ、リリシアも敵か?」
「………」

 ルーティアは黙って窓の外を眺めた。

「もう、仲間認定してしまいましたし…」
「ええで。迷ってるうちは動かんでも。」
「いえ、助け出して本音を聞いてから、判断します…」
「そやな。」

 カイは軽く笑った。

 夜風が塔を抜ける。
 明日、彼らは砦へ向かう。
 リリシアを救い出すために――。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります

はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。 「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」 そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。 これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕! 毎日二話更新できるよう頑張ります!

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...