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本編

不思議な格好

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 どう見ても、紺色のパジャマだ。
 襟とボタンのついた、パジャマオブパジャマ。

 そういえば、冬のはずなのにこのパジャマ一枚でも全然寒くない。
 夢なのもあると思うけど、今は温かい季節なんだな。

 と、それはともかく。

 この格好が日本人の普段着だと思われるのはちょっといただけない。
 きちんと責任をもって説明しなければ。

「えーと、これはパジャマで......」
「パジャマ?」

 まさか伝わらないなんて。首をかしげてしまったクロに、俺は慌てて言い直す。

「寝るときに着る服」
「寝巻きか」
「それそれ」

 お互いが分かる単語があって助かった。
 俺の服が外に着ていくものではないと分かったクロは、さらに疑問が深まった顔になる。

「なんで寝巻きでいるんだよ」
「それがわからないから、こうしてクロに案内してもらってるんだろ」

 溜息が出た。肩をがっくりと落とす俺を見て、

「そうだった」

 と、クロは納得したようだ。

「俺からしたら、クロの服の方が......」

 俺はクロの全身を見た。

 太ももが隠れるくらい長い焦げ茶の服。それを腰のあたりで太めのベルトで縛っている。
 灰色のズボンに黒いブーツを穿いていて、本当にファンタジーに出てくる人みたいな格好だ。

 隣を歩いているだけでわくわくする。
 好奇心を隠さない俺の視線に対して、クロは居心地悪そうに耳をぴくぴくさせた。

「お前からしたら不思議な格好か?」
「うん、そんでカッコいい」
「は」
「俺もそんな服着てみたい!」

 正直な気持ちだった。
 普段は服装なんてあんまり興味はないけど、この世界の服なら楽しんで選べそうだ。

「あっそ」

 でも、俺の誉め言葉が聞こえなかったかのように、クロはぶっきらぼうに俺から目を反らしてしまう。
 また何か、怒らすようなことを言ってしまったのかと様子を伺う。

 怒鳴り声は飛んでこなかった。
 その代わり、尻尾がパタパタと揺れていることに俺は気が付いた。
 犬は喜んでいるときに尻尾を振る。
 狼もそうなんじゃないだろうか。

 ついつい口元が笑ってしまう。

「もしかして嬉しい?」
「べ、べべ別に!こんな普通の服を褒めるなんて変なヤツだと思っただけだ!」

 乱暴な口調で言葉を返してくるクロの頬が赤い。
 焦っている様子が面白くて、俺はニヤニヤしながら横から顔を覗き込んだ。

「さては照れてるな?」
「うるさい置いてくぞ!」

 最終的にやっぱり怒鳴られてしまったけれど。
 照れ隠しだって分かったら全然怖くない。

 早歩きになってしまったクロの隣をキープすべく、俺は土を踏むスピードを上げた。
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