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本編
違う世界
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村長はテーブルの前に移動した揺れる椅子に座り、木のコップに入ったお茶を一口飲んでフゥっと息を吐いた。
「なるほどのぉ」
白く長い眉毛の下の目が、正面に座っているクロをチラッと見た気がした。
クロはバツ悪そうに、サッと顔を逸らしたのが俺の横目に入る。
(どうしたんだろう)
俺とクロは、ここに来た経緯を村長に全部話した。
熱を出して寝ていたらこの近くの森の中に居たこと。
子どものドラゴンを助けたつもりが、親のドラゴンに見つかって追いかけまわされたこと。
そこをクロに助けて貰ったこと。
本当に、ここがどこなのか分からないし、帰り方もわからないから知っていたら教えて欲しいということ。
テーブルにコップを置いた村長は、お腹の上で手の指を組んで口を開く。
「アユムくん、君はおそらく違う世界からやってきたんだろう」
違う世界、ということはここは異世界というやつなのだろうか。
なんとなく想像はしていたけど、やっぱり信じられない。
俺は頬を指で掻きながらヘラっと笑う。
「ていうか、俺はまだ夢だと思ってるんだけど……」
「ほっほっほ」
一応真面目な気持ちだったのに、村長は愉快そうに肩を震わせた。
「夢であることを否定する方法はないが……夢であると思うくらい、ここは君の世界とは違うか」
「うん、全然違う」
俺は大きく頷いた。
違うなんてもんじゃない。
2人に、俺の住む世界はドラゴンはいないし魔獣も人魚も獣人もいないってことを説明する。
村長は驚いた表情をしながらも、馬鹿にしたりせず頷きながら聞いてくれる。
隣に座っているクロは興味なさそうに頬杖をついていたけど、耳だけはずっとこっちを向いていた。
そして、ふと口を開く。
「魔法を使えるヤツも、いないんだったよな」
「うん。いないよ。魔法使いは空想の世界の話だ」
「聞けば聞くほど変な世界だな」
「そうかなぁ」
「大体、魔法ないのにどうやって火をつけるんだよ」
「あれ? クロは料理する時、火を使ってたけど……魔法は使ってなかったよな?」
夜も昼もご飯をクロに用意してもらったので、料理の様子は見ている。
調理場には俺たちの世界にあるのと似たような、石で出来たコンロのようなものがあった。
そこに鉄のフライパンを置いて、コンロのようなもののボタンを押すと火がついてるように見えたんだ。
「獣人はあまり魔法が得意でない種族でな。魔法道具が補助してくれるんじゃ」
楽し気に俺たちのやり取りを聞いていた村長が説明してくれる。
魔法は生きていたら必ず持っている「魔力」を使うもの。
でもその魔力のコントロールには向き不向きがあって、誰にでも自由に扱えるものではないという。
コンロのボタンのようなものは「魔石」というもので、それに触れると自動的に必要な分の魔力を吸い取って、火をつけたりしてくれるらしい。
便利だな。
この世界に魔法があることは、契約魔法の話や祭壇で見た魔法の火で知っていたけど。
そういう世界なんだなと思うだけであまり深く考えていなかった。
「そっかー……俺の世界では火をつけるときは、コンロ……火をつける機械で……ガスが……ごめん仕組みは分からないけど、魔法に代わるものが色々あるんだ」
いつも見てるものなのに説明が難しい。
コンロの仕組みなんて、そういえば知らないや。
「なるほどのぉ」
白く長い眉毛の下の目が、正面に座っているクロをチラッと見た気がした。
クロはバツ悪そうに、サッと顔を逸らしたのが俺の横目に入る。
(どうしたんだろう)
俺とクロは、ここに来た経緯を村長に全部話した。
熱を出して寝ていたらこの近くの森の中に居たこと。
子どものドラゴンを助けたつもりが、親のドラゴンに見つかって追いかけまわされたこと。
そこをクロに助けて貰ったこと。
本当に、ここがどこなのか分からないし、帰り方もわからないから知っていたら教えて欲しいということ。
テーブルにコップを置いた村長は、お腹の上で手の指を組んで口を開く。
「アユムくん、君はおそらく違う世界からやってきたんだろう」
違う世界、ということはここは異世界というやつなのだろうか。
なんとなく想像はしていたけど、やっぱり信じられない。
俺は頬を指で掻きながらヘラっと笑う。
「ていうか、俺はまだ夢だと思ってるんだけど……」
「ほっほっほ」
一応真面目な気持ちだったのに、村長は愉快そうに肩を震わせた。
「夢であることを否定する方法はないが……夢であると思うくらい、ここは君の世界とは違うか」
「うん、全然違う」
俺は大きく頷いた。
違うなんてもんじゃない。
2人に、俺の住む世界はドラゴンはいないし魔獣も人魚も獣人もいないってことを説明する。
村長は驚いた表情をしながらも、馬鹿にしたりせず頷きながら聞いてくれる。
隣に座っているクロは興味なさそうに頬杖をついていたけど、耳だけはずっとこっちを向いていた。
そして、ふと口を開く。
「魔法を使えるヤツも、いないんだったよな」
「うん。いないよ。魔法使いは空想の世界の話だ」
「聞けば聞くほど変な世界だな」
「そうかなぁ」
「大体、魔法ないのにどうやって火をつけるんだよ」
「あれ? クロは料理する時、火を使ってたけど……魔法は使ってなかったよな?」
夜も昼もご飯をクロに用意してもらったので、料理の様子は見ている。
調理場には俺たちの世界にあるのと似たような、石で出来たコンロのようなものがあった。
そこに鉄のフライパンを置いて、コンロのようなもののボタンを押すと火がついてるように見えたんだ。
「獣人はあまり魔法が得意でない種族でな。魔法道具が補助してくれるんじゃ」
楽し気に俺たちのやり取りを聞いていた村長が説明してくれる。
魔法は生きていたら必ず持っている「魔力」を使うもの。
でもその魔力のコントロールには向き不向きがあって、誰にでも自由に扱えるものではないという。
コンロのボタンのようなものは「魔石」というもので、それに触れると自動的に必要な分の魔力を吸い取って、火をつけたりしてくれるらしい。
便利だな。
この世界に魔法があることは、契約魔法の話や祭壇で見た魔法の火で知っていたけど。
そういう世界なんだなと思うだけであまり深く考えていなかった。
「そっかー……俺の世界では火をつけるときは、コンロ……火をつける機械で……ガスが……ごめん仕組みは分からないけど、魔法に代わるものが色々あるんだ」
いつも見てるものなのに説明が難しい。
コンロの仕組みなんて、そういえば知らないや。
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