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夏目 晴斗6話その1 面接 - 騙されてないよね?
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数日後、晴斗はついにその面接日を迎えた。もっとも、「面接」という形式を取るとはいえ、姫凪乃の言葉を信じるなら、すでに採用はほぼ確定している。とはいえ、やはり正式な場での挨拶となると、どこか緊張を感じずにはいられなかった。
「……」
無言のまま歩く晴斗に気づき、姫凪乃がふっと微笑みながら声をかける。
「なに、そんなに緊張してるの?もう話はついてるから、気軽にしてて大丈夫よ」
姫凪乃の軽快な口調に少し安堵しつつも、晴斗は心のどこかで警戒を解けずにいた。
「ほら、ここよ」
彼女が指し示した先には、古びた雑居ビルがそびえ立っていた。壁は黄ばんでおり、所々に塗装が剥がれた痕跡が残っている。晴斗は驚きのあまり目を見開く。
「……え、ここ?」
警察機関の姉妹組織という響きから、もっと整ったオフィスを想像していた晴斗は、そのギャップに戸惑いを隠せなかった。
「ボロいでしょ、私も最初はびっくりしたわ」
姫凪乃がイタズラっぽく笑う様子に、晴斗は思わず複雑な感情を抱く。彼女の無邪気な笑顔は相変わらず美しいが、それが却って彼を不安にさせた。
「本当に大丈夫か?ここ」
「大丈夫よ、私が保証するから!」
彼女は胸を張って自信満々に答える。その態度に、どこか説得力を感じてしまう自分が悔しい。
「ほら、行くわよ、晴斗」
「あっ……あぁ」
不意に名前を呼び捨てにされたことに、晴斗は戸惑った。まだ出会って間もない、ここでは後輩とはいえ自分が歳上にも関わらずこの呼び方に、失礼だと思う一方で、なぜか胸が高鳴る自分に驚く。
エレベーターに乗り込み、姫凪乃が迷いなく3階のボタンを押す。その間、晴斗は少しの緊張感と共に彼女に問いかけた。
「社長ってどんな人なんだ?」
「んー、話しやすいオジサンって感じかな?ちょっと馴れ馴れしいかも」
「ふーん……そっか」
3階に到着し、目の前に現れたのは「ForeSight Security FSS」と書かれた事務所の扉。10畳ほどの広さの部屋に足を踏み入れると、まず目に飛び込んできたのは、雑然と積み重ねられた書類や、無造作に置かれたデスクと椅子。
部屋の隅には、今にも倒れそうなスチール棚があり、雑誌や資料が乱雑に押し込まれている。床には古いカーペットが敷かれているが、ところどころにシミがついており、長年使い古された感が否応なく伝わってくる。クライアントと商談を行うには不似合いな場所だと感じる。
「じゃ、私はここで待ってるから。あそこの扉ね」
予想通り、姫凪乃が指差す奥の扉が社長室らしい。彼女がついて来ないことに少し驚きつつ、晴斗は扉の前で立ち止まる。
「えっ?あぁ……うん」
「なにぃ?ついてきてほしいの?」
薄笑いを浮かべながら、彼女が軽口を叩く。彼女が絶対にSだという確信がさらに強まる、彼女の言うことに否定しようとし、晴斗はついムキになってしまう。
「はっ?違うよ!」
「はいはい、わかったから、早く行ってきて」
「……わかったよ」
手をヒラヒラとさせて急かす姫凪乃に、軽くあしらわれた晴斗は、少しムッとしながらも口喧嘩が苦手な自分を自覚し、堪えて扉を開けた。
「……」
無言のまま歩く晴斗に気づき、姫凪乃がふっと微笑みながら声をかける。
「なに、そんなに緊張してるの?もう話はついてるから、気軽にしてて大丈夫よ」
姫凪乃の軽快な口調に少し安堵しつつも、晴斗は心のどこかで警戒を解けずにいた。
「ほら、ここよ」
彼女が指し示した先には、古びた雑居ビルがそびえ立っていた。壁は黄ばんでおり、所々に塗装が剥がれた痕跡が残っている。晴斗は驚きのあまり目を見開く。
「……え、ここ?」
警察機関の姉妹組織という響きから、もっと整ったオフィスを想像していた晴斗は、そのギャップに戸惑いを隠せなかった。
「ボロいでしょ、私も最初はびっくりしたわ」
姫凪乃がイタズラっぽく笑う様子に、晴斗は思わず複雑な感情を抱く。彼女の無邪気な笑顔は相変わらず美しいが、それが却って彼を不安にさせた。
「本当に大丈夫か?ここ」
「大丈夫よ、私が保証するから!」
彼女は胸を張って自信満々に答える。その態度に、どこか説得力を感じてしまう自分が悔しい。
「ほら、行くわよ、晴斗」
「あっ……あぁ」
不意に名前を呼び捨てにされたことに、晴斗は戸惑った。まだ出会って間もない、ここでは後輩とはいえ自分が歳上にも関わらずこの呼び方に、失礼だと思う一方で、なぜか胸が高鳴る自分に驚く。
エレベーターに乗り込み、姫凪乃が迷いなく3階のボタンを押す。その間、晴斗は少しの緊張感と共に彼女に問いかけた。
「社長ってどんな人なんだ?」
「んー、話しやすいオジサンって感じかな?ちょっと馴れ馴れしいかも」
「ふーん……そっか」
3階に到着し、目の前に現れたのは「ForeSight Security FSS」と書かれた事務所の扉。10畳ほどの広さの部屋に足を踏み入れると、まず目に飛び込んできたのは、雑然と積み重ねられた書類や、無造作に置かれたデスクと椅子。
部屋の隅には、今にも倒れそうなスチール棚があり、雑誌や資料が乱雑に押し込まれている。床には古いカーペットが敷かれているが、ところどころにシミがついており、長年使い古された感が否応なく伝わってくる。クライアントと商談を行うには不似合いな場所だと感じる。
「じゃ、私はここで待ってるから。あそこの扉ね」
予想通り、姫凪乃が指差す奥の扉が社長室らしい。彼女がついて来ないことに少し驚きつつ、晴斗は扉の前で立ち止まる。
「えっ?あぁ……うん」
「なにぃ?ついてきてほしいの?」
薄笑いを浮かべながら、彼女が軽口を叩く。彼女が絶対にSだという確信がさらに強まる、彼女の言うことに否定しようとし、晴斗はついムキになってしまう。
「はっ?違うよ!」
「はいはい、わかったから、早く行ってきて」
「……わかったよ」
手をヒラヒラとさせて急かす姫凪乃に、軽くあしらわれた晴斗は、少しムッとしながらも口喧嘩が苦手な自分を自覚し、堪えて扉を開けた。
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