勇者の不可分

たりきん

文字の大きさ
24 / 46

夏目 晴斗6話その3 面接 - ちょっと処理が追いつかない

しおりを挟む
晴斗は、心の中で少し躊躇しながら、姫凪乃から詳しく聞けなかった仕事内容について尋ねることにした。

「それで、その……具体的にはどんなことをするんですか?」

真取は少し驚いた表情を浮かべながら確認するように問いかけた。

「え、何も聞いてないの?」

「なんか、危険なこともあるって……そのくらいしか……」

晴斗は曖昧な答えを返す。

真取はため息をつき、肩をすくめた。

「はぁ……姫凪乃のやつ、大体説明したとか言ってたけど、全然じゃないか……」

晴斗は姫凪乃の性格がここでも遺憾なく発揮されていることを感じつつ、苦笑いを浮かべた。

「えぇと、何から説明すればいいかな。FSSがどういう組織か、そこからでいいかな?」

「たしか、SAUの姉妹組織みたいな存在で、表向きはセキュリティ会社だって聞いています……」

真取は再びため息をつき、少し呆れた様子で続けた。

「なるほど……まあ、大体は合ってるけど、それだけじゃよく分からないだろうね。ちょっと長くなるけどいいかな?」

「はい、大丈夫です」

晴斗は少し緊張しながら答えた。

真取は少し身を乗り出し話し始めた

「えぇとね、まずSAUから説明しようかな」

「Special Ability Unit  SAUは警視庁直轄の部隊で、全員ではないけどアビリティを使えるメンバーが揃ってる。直轄と言ってもSATと同じ警備部門にいるんだ。将来的には全国の警察組織に部隊を作りたいんだけど、アビリティを持っている人が都合よく見つからないし、いたとしてもSAUに入りたいとは思わないことが多いんだよね。だから、結果的に警視庁直轄になってるわけさ」

晴斗は、なんとなく聞いた事がある程度の単語が飛び交い、少し混乱しながらも、話を中断させないように頷いて聞いていた。

「SAUがやっていることなんだけど、SATやSITがやっていることをイメージすると分かりやすいかな。そのアビリティ版みたいなものだよ」

と、真取はさらに続けた。

「はぁ、たまにテレビで見かけるような……?」と、晴斗は聞き返した。

「そうそう、具体的にはアビリティを使った犯罪の捜査、摘発、追跡や逮捕、犯罪組織の壊滅、アビリティによるテロの鎮圧、人質救出、アビリティの濫用やそれを使った一般市民への危害や詐欺の防止……とにかく、かなり幅広いんだよ。」

「事前にアビリティ関連の危険な情報が入ってれば大規模イベントの警備なんかもやるしね。まあ、特殊部隊と言っても色々やるわけだ」

真取は一息つき、晴斗に向かって問いかけた。

「一気に説明しちゃったけど、なんとなく分かったかな?」

「えぇ……まぁ、なんとなく……」

晴斗は少し困惑しながらも頷いた。

「ここまでで質問とかある?」

晴斗は流れ込んでくる情報を何とか処理しながら、無理やり質問を絞り出した。

「えっと、SAUがアビリティを使って犯罪を取り締まるのは分かったんですけど、そもそもアビリティに関しての法律とかはどうなってるんですか?」

真取は再び頭を抱え、深いため息をついた。

「そこなんだよね、アビリティって最近公になったでしょ。アメリカが先立ってSAAFっていうアビリティの部隊を作ってさ、日本もアビリティの存在を認めざるを得なくなったんだ。それで急遽作られたのがSAUってわけさ」

「ということは、日本は昔からアビリティの存在を知ってたんですか?」

「その通り。でも、こんな魔法みたいな力の存在を認めちゃうと対応が大変だろ?実際に使える人なんてそんなに多くないし、でも情報化社会になって誤魔化せなくなってきたところで、アメリカが先に動いちゃったわけさ」

晴斗は、SAU設立の背景が犯罪防止のためではなく、事実がバレてしまったからというくだらない理由であったことに驚きを隠せなかった。

「警察の偉い人や政治家とも少し繋がりがあるんだけど、そうならないために早い段階から進言していたんだ。でも、日本全体の話となると、なかなか動かすのは難しいよね……」

「(この人の人脈、ヤバいじゃん……!)」

「(あぁ……個人情報バレてんのこの人が原因か……)」

晴斗は、目の前にいる人物が日本を動かすほどの影響力を持っていることに内心驚愕しながらも、表情を崩さずにいた。

「それで、まぁ本題に戻るけど、FSSの活動についてね」

真取は改めて話を続けた。

「あ、はい」

晴斗はすでに多くの情報が頭に詰め込まれており、消化しきれない状態であることを感じていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

処理中です...