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第一章 セイシュの民が翔ける黎明の空
44 大木のある大地
しおりを挟む水の村から地図の目的地である○印の目的地までは山を越えるルートと山を迂回し平地で進むルートがある。
おばばの話では、山越えルートは特に開拓された道も無くかなり険しいが、険しいために危険な大型の獣は存在しないらしい。
迂回ルートは平坦で歩きやすいが、色々な獣が陣取っており、さらに厄介なのが最近山賊が現れて旅人を襲う被害があるだとか。
そのため、山越えルートを選択することにした。
おばばの話では、急げば、一日で目的地まで到着できる距離らしい。
その山はサチが小さい頃から狩りや遊びで良く行ったことがあるとのことで、サチを先頭にして歩いた。
山の中の足場は枯れ木や葉で思うように歩きにくく、なかなか足が前に動かない。
また、木と木が互いに木陰を作り合い日を遮って暗い影と、直射日光で明るいところが混在しており、目がチカチカする。
その暗闇では、シフィルが持つコンパスの針の赤い光が良く目立ち、それに小さな虫が群がってくることもあるが、それをなんとか振り払いながら進んだ。
たまたまサチが投げた石が蜂の巣にあたり、蜂に追いかけられているところを今度はシフィルがモグラの巣に足を突っ込んで転倒するなど、一人の時とは違い退屈はしない旅であった。
もんちきはシフィルの肩から離れ、器用に木々の枝に長いしっぽでぶら下がりながら、ぴょんぴょんと飛び跳ねて進んでいる。やはり猿だと実感する。
歩くよりもこちらの方が早くて楽で安全らしい。といってもシフィルとサチにそんなまねはできないが。
夜になっても、休む場所もなく、しょうがなく山を越えるまではなんとか歩き続けることにした。
夜の森は一切明かりの見えない完全な闇で、あらかじめ水の村で用意しておいた明かりが役に立った。
オイルを布の芯に染みこませ、燃やすというシンプルなものであるが、必要な視界は確保できた。
明るく視界は開けるが、片手がふさがってしまうため、枝葉の回避が必要な山中では大変不便でもある。
シフィルが左手でランプを持ち、先頭となり歩いた。そのシフィルの首には、疲れたもんちきが首を抱くように掴みながら休んでいる。
疲れからか、会話も無くなり、ただコンパスの針を確認しながら進んでいった。
そして、徹夜して歩き夜が明け、周囲がわずかに明るくなった頃、山を越えることが出来た。
朝。よく晴れている。
山を越えると、地面には乾いた赤色の土が広がり、草木が極端に少なくなった。
シフィルの身長を超えるほどの赤色した岩石がところどころに散乱し、よく見ると草木どころか、昆虫類も少ないようであった。
生き物が見当たらない。
また、地下から水蒸気が漏れているのか、『ぷしゅー ぷしゅー』と大きな音をたてて勢いよく水蒸気が吹き出している。
その水蒸気から真っ白な湯気が立ち昇っていることから、かなり高温であることはわかる。
実際、シフィルがそのしぶきをわずかに浴びただけで熱さで飛び跳ねたぐらいである。
直撃したら・・・大変なことになるだろう。想像するだけでブルブル震える。
また、ガスが地面から噴き出る場所が所々にあり、そのせいで嫌な臭いが立ち込め、且つ視界が悪い。
「ここじゃ休めないね・・・せっかく山抜けたのに・・・」
疲れたからだをなんとか動かすサチからため息がもれた。
コンパスの針はここでゆっくりと回転を始める。目的地はここのようだが、その周囲にはなにも見あたらない。
「コンパスはここを目的地っていってるんだけどなぁ」
シフィルがさらに丁寧にあたりを見回す。建物らしき物は見あたらない。というか、人がいるという雰囲気すらない、赤土の大地が広がるだけである。
「シフィル!あれじゃないか?」
もんちきが指す方向には、霧ではっきりとは見えないが、大きな木が生えていた。
近くまで歩み寄ると、高さはその木の枝が邪魔をし、天辺がどこにあるか判らないほど高い。
空を突き抜けているのではないかと思う程の大きさである。
その高さに比較して幹はそこまで太くなく、大人が10人が手をつないで周りを囲める程度で、高さと幹の細さの比率から、すぐに折れてしまいそうに感じられた。
この木の周囲にはわずかであるが、草木が生えていた。
「今日はここで休もうか」
シフィルが腰を下ろす。サチもその横に腰を下ろすと、大きなあくびをしたもんちきは器用にツメを使ってスルスルとその大きな木を登っていく。そしてすぐに見えなくなった。
ようやく一息つける。シフィルもサチも座ったまま両手を大きく上げてからだをグーっと伸ばして、大きく息を吐いた。
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