三つの民と神のちからを継ぐ者たちの物語 ヴェアリアスストーリー

きみゆぅ

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第一章 セイシュの民が翔ける黎明の空

77 4つの原石は揃ったが

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 食事を終えて少し衣服を整えると、レグランドフィア王への謁見に臨む。

「光の村ライラのリザよ、良く来てくれた。心から歓迎する。」

 片膝をついて頭を下げるリザをレグランドフィア王が立たせると、レグランドフィア王もリザに対して頭を下げた。

 その後方で、王様とのあいさつはこれが正しいのだと、理解したシフィルとサチ。なんとなく真似てみる。

「私もお会いできて光栄でございます。これは私の兄、光の村ライラの村長ライラからの手紙でございます。」
 リザがライラより預かった手紙を渡した。早速、その手紙を開封して、内容を確認するレグランドフィア王。

「ふむ・・・ライラ村及びクリスタルレイク一帯はレグランドフィアに従属するという内容だ。そしてリザ殿をレグ
 ランドフィアに仕官させたいとのことだ。」

 レグランドフィア王はその手紙をリザに見せた。

「その内容は事前に私も聞かされております。私リザもレグランドフィアの為に一命をかけて尽くさせていただきたく。」

 少し困った顔になるレグランドフィア王。驚くシフィルとサチ。

「まあ、従属は認めるが、今まで通りの関係が良いと思う。困ったらレグランドフィアはライラを全力で助ける。だからレグランドフィアが困ったらライラは微力でも助けてくれ。それで十分だ。まあ、レグランドフィアとライラの間は猛獣や毒生物がたくさんおり、それらの被害が多発することも商人から聞いている。安全確保として、それらの駆除は進めよう。そういう意味では、レグランドフィアのちからは役に立つだろう。」

 リザは再び片膝を着いて、下を向いてうなずいた。

 レグランドフィア王も片膝をついて、握手を求めた。

 その熱心なレグランドフィア王の態度に笑ってリザも応じた。周囲から拍手が巻き起こった。

 シフィルとサチは複雑な気分である。自分たちの仲間として光の原石を扱える者を探したのに、レグランドフィアに奪われた様な嫌な気持ちになっていた。

 シフィルがもんちきを見ると、何か考えているような顔をして、今起きていることに興味が無いようにぼーっと外を見ていた。

 今後については、明日、議論を行うこととし、今日は休むことになった。

 それぞれが別々の部屋に戻る。空はすっかり暗くなっていた。



 シフィルともんちきは部屋に戻って休んでいた。

 部屋に準備されていた水をちびちびと飲むシフィルが疲れた表情でため息をついた。

「光の原石が見つかって、これで4つの原石がそろった。でもこんな調子で結界張れるのかな。」

 机の上にあるフルーツの盛り合わせに手を伸ばしたシフィルは、ベットで横になっているもんちきをじっと見る。

「・・・」

 問いかけに無言のまま、ベットで横になってぼーっとしているもんちき。シフィルの声が全く届いていないようだった。

「どうしたんだ?」

 考え込むもんちきの顔に手を振ってから、ゆっくりと横に座るシフィル。

「ニャァ。」

 大きなあくびをしたもんちきが重い口を開いた。

「シフィル・・・話しておかなければいけないことがある。サチを呼んできてくれないか?」

「え?あ、ああ。」

 いつになく、真剣な態度であったため、茶化すことなく素直にシフィルはサチを呼びに行く。


 すぐに、口をモゴモゴさせたサチを連れて戻ってくる。

 サチも部屋にあったフルーツを食べていたようで、それが入っているカゴごと持ってきた。

「どうしたの?」

 もんちきに問いかけるサチ。果汁がついた口を丁寧に綺麗にする。

「聞いてくれ。」

 もんちきの深刻な表情にシフィルとサチは何事かと、姿勢を正した。

「今、俺たちは結界が崩壊する前に結界を張るために火、水、大地、光の原石とそれを扱える者を探している。」
 シフィルもサチもうなずいた。

「それが、正しいことかどうか迷っている。リヴィエラはそもそもセイシュの民は結界を張ることが目的でなく、原石を集め、勢力を募る事が目的ではないかという。」

 悩むもんちきにシフィルが首を傾げる。

「そもそも、結界を張れって言うことがわからないんだけどさ。なんか、言われているからそれに従ってるだけで。しかも夢の中の人に。」

 シフィルは頭を抱えて混乱していたが、サチが静かにうなずいた。

「じゃあさ、難しいことわからないけど、世界樹ネットワークってやつで、本当を確認してみたらいいじゃない?考えてわからなければ直接聞いた方が良いと思うよ。良いにしても、悪いにしてもすっきりするし。私も知りたいしね。」

 そしてもんちきの両手で持ちあげて耳元に口を近づける。

「ライラの村で私、実は結構起きていたんだ。難しい話だったけど、重要じゃない?これから何するのか。」

 静かにもんちきの耳元でささやいた。

 シフィルは何を話したのか、気になって尋ねたが、サチは笑ってごまかすだけだった。

 つられてもんちきも笑いだした。

「そうだな。考えるよりも直接確認する方がいいか。そりゃそうだ。なんでこんな単純なこと気付かなかったんだ。」

 そしてもんちきもサチに耳打ちをした。

「水の村の民が火の村を追い出された場合の対応策はおばばに伝えてある。無事だろう。」

 サチから笑みが漏れた。

 なんか晴れた表情をしているもんちきを眺めてシフィルも一緒に笑っている。

 実はシフィルもライラの家についてから、入り口で隠れてリヴィエラとライラともんちきの会話をすべて聞いていた。というか、深刻な状況で、どんよりとした雰囲気で部屋に入るタイミングを逃して困っていたというのが正しい表現だが。

「馬って借りられるのかな?あれがあれば世界樹ネットワークまでピューって行けるんじゃない?」

 サチは馬の感触が忘れられなかった。あの風を切って走るのは爽快であり、快感になっていた。

「リヴィエラに聞いてみようか?」

 シフィルも同じ。馬が好きになった。

「今から行く気か?」

 もんちきが驚く。

「どうせ世界樹ネットワークって寝なくちゃいけないんだし。私たち明日の会議って出る必要ないでしょ?」

 シフィルもうなずく。

 クスっと鼻を動かして笑ったもんちきもうなずいた。

「確かにそうだな。よし、行くか!」

 もんちきが飛び跳ねると、シフィルの肩に乗って部屋の外へと移動するように催促する。
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