エレーナ・グラシアは夢を見る

机上の空想

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エレーナ・グラシアは幼い頃から見る夢がある。
見覚えのないはずの街並みを紺地に白のラインの入った地味な揃いのワンピースを着て私と女の子は楽しそうにおしゃべりしながら二人で歩いている。
黒髪黒目は私とは似ても似つかないような容姿なのに、女の子と並んで歩いているのは「私」なのだと自然と理解していた。

私とその子は幼い頃からとても仲が良く、似たような環境で育ったせいか趣味や嗜好も同じことが多く、そして初めて好きになった男の子も同じだった。
初めての恋にとまどいながらも、彼をいつも目で追っていた。
親友とはお互い彼に気があることはすぐに気づいてがんばろうね、なんて励まし合った。
でも私は気づいていた、彼の視線の先には私ではない彼女がいることを。
彼女はまだ気付いてないみたいだったけど。
2人がいつか付き合うことになるとしても、笑って祝おう。
大切な親友と大好きな彼が付き合うってすごくハッピーなことじゃない?
そう決めたはずだった。
告白シーンを目の当たりにするまでは、笑って祝福できると思っていた。

「好きです」
まさかこのタイミングで通りかかってしまうなんて。
なんてタイミングの悪さか。
急いで来た道を駆け戻る
だめだ、目からあふれ出るものを止めることができない。
ああ、これで失恋確定か
わかっていたことじゃないか、
いつかこうなったら笑って祝おうと決めていたじゃないか
なんて自分に言い聞かせるけど一度溢れてしまったものを止めることは難しかった。

ここでいつも目を覚ます。
毎朝、夢の私の気持ちがどっと流れ込んできてひどく切ない気持ちになる。
あの後、私はきちんと笑って祝福できただろうか、それだけがずっと心残りだった。

だけどその心配も今日で終わりになると、今日ふと気づいた。
夢の中の彼女と彼もエレーナと同じようにここで新しい生を受け、いまの私の親友と初恋の彼だったということに。
「どうして今まで気づかなかったのだろう。」
今日は私の大好きなふたりの結婚式だ。
夢の続きが現実のものとなり、私は笑顔で彼らの幸せを祝福することができそうだ。
ベッドから立ちあがり部屋のカーテンを開ける。
一粒零れた涙は差し込む朝日のまぶしさのせいにした。

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