銀色の願い

yuta

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噂のシスター その2

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 森の中で、火の光が灯っていた。
 火を囲うように、武装した男達が集まる。
 そこに、一人の男が駆け寄った。
「ダウルのお頭、仲間からの伝言です」
 ダウルと呼ばれたその男は、周りにいる男達と比べ一際大きく、巨大な大男であった。
 伝言を聞いたダウルは、歯を見せニヤついた。
「そうか、今回は楽な仕事になりそうだな」
「野郎共、いつも通り日付が代わり次第教会を襲うぞ、今回はカヌエの街の教会だ」
 ダウルの声と共に、男達の雄叫びが森の中で響いた。
「さぁ狩の時間だ!!」
 そして、灯る火が消えた。

「ここもよし」
 アリアは教会の入り口の扉の鍵を閉め、教会内の戸締りを見て回った。
「はぁー、怖いな、物騒だから護衛を雇いたいな、お金さえあれば…」
 アリアが愚痴をこぼしながら見回りを続けていると、調理室から物音が聞こえた。
「ひぃー、誰かいるの?」
 涙目になりながら調理室を覗くと、机の上に人影が見えた。
「きゃーーー」
 腰を抜かしたアリアは、尻もちをつきながら後ずさる。
 人影がアリアに近づいてくる。
「来ないでー」
 調理室の明かりが灯った。
「何してんだアリア」
 そこには、りんごを持ったティナが立っていた。
「えっ!?ティナ?」
 アリアは気の抜けた顔でティナを見た後、頬を真っ赤に染め立ち上がった。
「ティナ、ここで何してるの!?」
 ティナは親指を立て自信満々に答えた。
「小腹が空いたからつまみ食い」
 アリアはすかさずティナの頭を叩いた。
「紛らわしいことすんな!!!」
「痛い、何すんだアリア」
「バカティナ、もう私行くから」
 アリアは怒りながら廊下を歩いて行った。
「アリアの奴、怒り方までアンジュに似てきたな」
「さてと、続き続きと」
 ティナはりんごを齧りながら動き始めた。

 真夜中になり日付が変わろうとしていた頃、教会の周りを無数の人影が囲い始めた。
「作戦開始だ」
 教会の裏手にいる人影が教会に近づく。

 自室のベットで横になっていたアリアは飛び起き大声で叫んだ。
「あーーーー」
 叫び終わると頭を抱えた。
「しまった恐怖のあまりティナを調理室から引き剥がすの忘れてた、やばい、朝食の材料全部食べられてるかも…」
「まだ間に合うはず!ティナを止めなきゃ」
 アリアはベットから降りた。
 すると、ドアを叩く音がした。
「アリアさん、私ですキーラです」
 キーラの声はどこか切迫していた。
「キーラさん?」
 アリアが恐る恐るドアを開けると、息を切らしたキーラがいた。
「どうかしました?」
「よかった無事でしたか、私を襲った盗賊が今度はこの教会を襲いにきました」
「えっどういうことですか?」
 すると教会の裏手から窓ガラスが割れる音がした。
「きゃー」
「早く、ここは危険です」
 そう言うと、キーラはアリアの手を引っ張り走り始めた。
「裏口は危険です、表から出ましょう」
「ちょっと待ってください、ティナとアンジュさんが…」
「わかりました、案内してください」
「ティナの部屋が近いので先に…こっちです」
 2人はティナの部屋に向かった。
 そしてアリアは勢いよくドアを開けた。
「ティナ無事!?」
 そこにはティナの姿がなかった。
「あの子どこに…まだ調理室にいるんじゃ…探さなきゃ」
 焦るアリアをキーラが静止した。
「アリアさん落ち着いて下さい、私が後でティナさんを探しますから、先にアンジュさんを迎えに」
「そうですね…ティナ無事でいて」
 2人はアンジュの部屋に向かった。

「なにさね、こんな夜中に連れ出して」
 アンジュを部屋から連れ出したアリアとキーラは教会の入り口に向かっていた。
「盗賊が教会に侵入したらしいです、早く安全な場所に行かないと…」
 アリアはアンジュに状況を説明しながら走る。
 入り口がある礼拝堂に着いた時、アンジュは立ち止まる。
 アンジュは腑に落ちない顔をしながら、アリアに尋ねた。
「アリア一つ聞かせておくれ、あんたはその盗賊とやらを見たのかい?」
「いえ見てません、キーラさんが教えてくれただけです」
「そうかい」
「何をしてるのですか、2人とも早く外に」
「アンジュさん…」
「どうにも出来すぎてるね、キーラあんたどこで盗賊の姿を見たのかね」
「何を言ってるんですかアンジュさん」
 キーラは少し焦った口調で説明した。
「廊下でですよ」
「そうかい、逃げてる途中盗賊の姿を見なかったのにかい」
「たまたま見つからなかっただけでは…」
「じゃあ何故正面の入り口が安全だって言い切れるんだい」
 キーラは黙り込んだ。
 そして静かにアリアに近づく。
「キーラさん?」
「もう演技をするのも面倒だ大人しくついて来てください」
 キーラはアリアの首元に隠し持っていたナイフを突きつけた。
 キーラは怯えるアリアを笑顔で見た後、教会の扉を見て叫んだ。
「お頭もう入ってきて下さい」
 すると教会の扉が開き、ダウルと10人以上の盗賊達が教会に入ってきた。
「ご苦労だキーラ」
「はい、お頭」
「ん?一人足りなくないか?まぁいい野郎共あともう一人も探せ」
 盗賊達はぞろぞろ歩き始めた。

「どうして入り口が…鍵はしっかり閉めたのに」
「それは私が開けたからですよ」
 アリアは怯えた顔でキーラを見る。
「キーラさん私達を騙したんですね」
 キーラは高らかに笑った。
「騙された方が悪いんですよ」
「アンジュさんも動かないでくださいね、私が掴んでる商品をあまり傷つけたくないですから」
 そう言うと、ナイフをアリアの首元にさらに近づけた。
「あぁ私は動きやしないよ、私はね…」
「はぁ?何を言ってるんですか?」
 キーラの視界に銀色の光が見えると同時に、腹部に強烈な衝撃が走った。
「ごほっ」
 吹き飛んだキーラは激しい音と共に教会のベンチに叩きつけられた。
 薄暗い教会の中、銀色の髪と瞳を輝かせるティナの姿がそこにはあった。
「おいテメェら、私の家族に手出しやがって、覚悟できてんだろうな」
 
 ダウルは額に手を当て呆れた様子で首を振った。
「おいおい、しっかりしてくれよキーラ、ガキに一本食わされてんじゃねぇか、ガキいつからキーラが偽者の商人だと気づいてたんだ?」
 ティナはダウルを睨みつける。
「あんたの部下が教会に来た時からだよ、連合国の商人は、絶対に一人で旅の商売はしないからな、あんたの部下が一人で商売してるって言った時点で偽者だってバレバレだよ、もっと勉強してから来るんだったな」
 ダウルは高らかに笑った。
「そうか、確かに勉強不足だったな、ならこれは勉強代だとっとけ、野郎共シスター達を捕まえろ」
 盗賊達がティナ達に襲いかかる。
「アリア、ここから動くなよ」
「ティナ、待って」
 アリアの静止を聞かず、ティナが走り出す。
「嬢ちゃん大人しく捕まりな」
 殴りかかる盗賊の拳をティナは受け流した。
「ありゃ…」
 盗賊の顔面に強烈な蹴りが入り吹き飛ぶ。
 一人また一人と血飛沫を上げながら盗賊達が倒れて行く。
「何なんだあのガキ、足を狙って動きを止めろ」
 銃を持った盗賊がティナを目掛けて発泡する。
 ティナは弾丸を避け、発泡した盗賊に近づく。
 盗賊が何度発泡してもティナには当たらない。
 倒れる盗賊が血飛沫を上げ赤く染る空間の中、ティナの銀色の髪と瞳は一際輝いて見えた。
 ティナに怯える盗賊が言葉を漏らす。
「悪魔だ…」
「あぁ私は悪魔だよ」
 ティナは怯える盗賊を殴り飛ばした。

 ティナの戦闘を見てダウルの顔が青ざめる。
「あれは、そんなまさか…」
「お頭、あの化け物を知ってるんですか」
「あぁ、あの姿どうして気づかなかったんだ、あいつは帝国の人間兵器、銀色の悪魔と恐れられたティナ=ハーロックだ…」
「何でそんな奴が連合国のシスターをやってるんですか」
「俺が知るか、俺も連合国の元軍人だ、アイツら帝国兵の実力も知ってる、でもアイツはいや帝国のナンバーズは桁違いの化け物だ、一人で1000人規模の部隊を壊滅できる程のな」
「そんな奴に勝てるわけねえ俺は降りるぜ」
 盗賊の一人がその場から逃げよとする。
 ダウルは逃げようとする仲間をすぐさま捕まえた。
「まぁ待てよ、アイツが兵器のままだったらの話だよ、情を覚えた兵器は扱いやすいのさ」
 ダウルはニヤついた後、奥に控えていた盗賊達に指示を送った。
「お前はアイツの注意を引いとけ」
「えっお頭!?」
 そう言うとダウルは捕まえた男をティナ目掛けて投げつけた。
 ティナは顔色一つ変えず、飛んできた男を蹴り飛ばした。
「お前えげつないな…」
「仲間を投げつけるお前に言われたくはないな」
 ティナの注意がダウルに向いた瞬間、アリアの悲鳴が響いた。
「きゃー」
「しまったアリア!!」
 そこには、盗賊に捕まったアリアとアンジュの姿があった。
 ティナはダウルを睨みつけた。
「お前…」
「おっと動くなよ、こいつらがどうなってもいいのか?」
「くっ」
「普通に戦ったらお前には勝てないからな、兵器にも感情があってよかったぜ」
 そう言うとダウルは高らかに笑った。
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