銀色の願い

yuta

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魔獣 その4

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 ドンードン、ドン
 魔獣の爪が地面を抉る。
 ティナが魔獣の攻撃を避け続ける。
「うわー、当たったら痛そう」
 魔獣の前足に向け、カイルが剣を振るった。
「ブツブツ言ってないでお前も攻撃しろ!」
 魔獣の前足から血が噴き出る。
「ギュルルー」
 しかし、切れた箇所から瞬く間に出血が止まり傷が癒える。
「この程度じゃ致命傷にならないな、何度やってもきりが無い」
 ティナが魔獣に向かって突っ込む。
 向かってくるティナに向け、魔獣が爪を振り下ろした。
 魔獣の攻撃を掻い潜り、懐に入り込んだティナは、魔獣の腹部に連続で拳を打ち込んだ。
「これならどうだ!」
 激しい打撃音が響き、魔獣が後退する。
「ギュルル…」
 魔獣の様子を見てティナは頭を掻いた。
「だめだ、あんまり効いてない」
「おい、どうすんだ」
「とりあえず効くまで殴る」
「それしかなさそうだな」
 2人が魔獣に向かって行く。
「はー!」
 魔獣の攻撃を避けながら、ティナが魔獣を殴り続ける。
 ティナのタイミングに合わせ、カイルの鋭い剣筋が魔獣を斬り刻む。
 2人の猛攻の中、魔獣が両足を地面に叩きつけた。
「ギャルルルー」
 激しい衝撃と共に崩れた地面が突き上がった。
 咄嗟にジャンプして回避したティナに向かって、魔獣の尻尾が襲いかかる。
 魔獣の尻尾がティナに命中し、吹き飛んだティナが柱に叩きつけられた。
「ぐはっ」
 吹き飛んだティナを見てカイルが叫んだ。
「ティナ!?」
 よそ見をしたカイルに向かって魔獣の前足が降りかかる。
「しまった!」
 カイルは咄嗟に剣で魔獣の攻撃を防いだ。
「くうっ…」
 魔獣の前足がカイルを抑えつける。
「クソ重いんだよ、化け物ネズミ…」
 突然魔獣の身体が青く光始めた。
「なんだ?」
 すると、青い光が枝分かれし、ネズミの型になっていく。
「チュチュチュ」
「なに!?」
 生み出された数体の分身体がカイルに襲いかかり、噛みついた。
「ぐあーー」
 血を流しながら、地面に膝をつけるカイル。
「クソったれ…」
 
「カイルそいつらを斬れ!?」
 ティナの声が聞こえると同時に、ティナが魔獣の顔面を殴りつけた。
「ギャルルルーーーー」
 殴りつけられた魔獣が倒れ込む。
 魔獣の前足が離れ、カイルが立ち上がった。
「よくやったティナ!」
 そう言うとカイルは分身体を瞬時に斬り刻んだ。
 ティナがカイルの横に戻る。
「助けてくださりありがとうございましたティナ様だろ」
「調子に乗るなクソガキ」
「だとテメー」
「そんな事より、どうやってあいつを倒すかだ」
「私にいいアイディアがある」
 ティナがカイルを呼び寄せ、耳元で囁いた。
「はぁー、失敗したら俺だけやばいだろ!」
「致命傷を負わせる方法がそれしか思いつかん」
「無茶苦茶だな…」
「一発勝負だ私に賭けろ!必ず成功させる」
「はぁー、まさかお前に賭ける事になるとはな…わかった一発かましてこい!」
 ティナが口についた血を拭き取りながら気合いをいれた。
「おっし!やるぞー」
 2人が魔獣に向かって行く。
 魔獣が青い光を放ち、分身体を何体も生み出していく。
「チュチュチュ」
 2人は立ち止まる事なく前に進む。
 カイルが前に出て、剣を構えた。
「任せろ!?」
 襲いかかる分身体をカイルが斬り伏せていく。
「はぁーー」
 カイルの後に斬り伏せられた分身体が転がっていく。

「ギャャャャー」
 魔獣の攻撃を回避しながらティナが前進する。
 空振った魔獣の爪が、地面を抉っていく。
 懐に入ったティナが拳を何度も打ち込んだ。
「これでもくらえ!?」
 激しい打撃音が響き渡る。
「シャーシャー」
 倒れる様子のない魔獣が両足を地面に叩きつけた。
 ドカァァンーー
 激しい音と共に土煙が舞い上がる。
「下を向く瞬間を待ってたんだよ!?」
 魔獣の攻撃を回避したティナが、魔獣の顔を突き上げるように殴った。
「ギャルルル…」
 上にのけぞった魔獣を見て、ティナが叫んだ。
「カイル今だ!」
「任せろーーー」
 カイルは握っていた剣を槍投げの如く、魔獣に投げつけた。
 飛んでいった剣が、のけぞった魔獣の腹部に突き刺さる。
「行けーーティナ!!」
 高く飛び上がってティナが魔獣に向かう。
 ティナが突き刺さったカイルの剣に渾身の力で拳を打ち込んだ。
「はぁぁぁぁぁぁー」
 剣が魔獣を貫き地面に突き刺さる。
「ギャ…ルルル……」
 風穴の空いた魔獣の腹部から大量の血が噴き出る。
 ドーーーンンンン!!
 地響きと共に魔獣の巨大な身体が地面に叩きつけられた。
 ティナは親指を立てながらカイルに笑いかけた。
「なっ!私に賭けてよかっただろ」
「あぁそうだな」

 カイルが魔獣の亡骸に近づき、何かを探し始めた。
「お前も手伝え」
「何を探すんだよ」
「何をってお前…おっあったぞ」
「なんか見つかったのか?」
 カイルの手に見えた物を見てティナは目を見開いた。
「魔光石…」
「あぁそうだ、しかも掌サイズだ、ただのネズミが飲み込める大きさじゃない…」
「このサイズを飲み込めるくらいに成長した魔獣なら街に出れば間違いなく誰かが気付くな…」
「そうだ…今まで見つからなかったと言うことは、何者かが意図的にこの街の地下で魔獣を作り出したと言う事だ…」
 ティナは少し黙った後、カイルを見て口を開いた。
「なぁカイル、その犯人探し私にも手伝わせてくれ」
「なんだ突然…」
「カヌエの街が狙われたんだ、ここに住む人達は私にとって家族みたいなもんだ、今度こそは大切な人達を守りたいんだ!!」
 カイルを見るティナの瞳には、決意のようなものが感じられた。
「今度こそはか、あぁわかった…ティナこの街のために協力してくれ」
「おう、よろしくな!!」


同刻帝国領帝国軍本部

 軍本部の廊下を女性軍人が歩いて行く。
 大人びた容姿の彼女は、黒色の軍服を身に纏い、後ろで結んだ真紅の長い髪を揺らしながら、呼び出しを受けた部屋に向かっていた。
「失礼する」
 部屋の中では、同じ軍服を身に纏った体格のよい、古参の男性軍人がタバコを吸いながら席に腰掛けていた。
「来てもらって悪いなフレア」
「用って何グライド」
「そうツンケンするなよ!」
 グライドが自分の顎に生えたヒゲを触りながらフレアを見る。
「お前を呼んだ理由だが人探しをお願いしたい」
 フレアが呆れた顔でグライドを見た。
「はぁ?そんなどうでもいい用事で私を呼んだ訳、その顎ヒゲ叩き斬るぞ」
「そう怒るな、最後まで聞け」
「何よ」
「探して欲しい人物って言うのはティナ=ハーロックだ」
 その名前を聞いてフレアが目を見開いた。
「えっ、ティナ…生きていたの」
「それらしい人物の目撃情報が上がってきただけだがな…」
 フレアがグライドに近づき胸ぐらを掴み揺らした。
「グライドどこに行けばいいの」
「落ち着けフレアーーー窒息する」
「早く教えろ!!」
「わかったから離せ」
 フレアは掴んでいた手を離した。
「俺を殺す気かお前は…」
「早く教えて、どこに行けばティナに会えるの?」
 グライドがフレアを見て口を開く。
「場所は旧アトラス領カヌエだ」
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