公爵様が信じるのは奴隷だけ

ccm

文字の大きさ
13 / 65

13

しおりを挟む



イザベルは、リアムに温室から戻った後朝食をとると告げると、リアムはそれをルディに伝えるために厨房へと向かった。


―奴隷とはこういうものなのか?―

そう考えながらも、イザベルは一つ息を吐いた後、温室へと足を進めた。





イザベルは温室に必要最低限の人間以外近づけることを禁じている。
なぜなら、この温室にはイザベルを養母と養父が眠っているからだ。

イザベルを愛してくれた2人を死してなお、彼女は守りたかった。


2人が眠る周囲には絶対に花を咲かせる。
どの季節でも花に囲まれている用に、温室への魔力の供給はこの屋敷の中でも高かった。


眠る2人の傍に久々にイザベルは来た気がした

夢であったようだが自身が嵌めれられ捕らえられてからは、ここに来ることすらできなかった。


会いたかった

いや、会いたかったは間違いだ。


イザベルは今でも会いたい。

唯一会いたくて会いたくて堪らないのは2人だけだった。









――――――――――――――――――――――――






温室を後にし、屋敷へと向かう際に馬の世話を終えたのであろうラウルと出会う。


「馬の世話は終えたのか?」

「おはようございます、ご主人様。はい、先ほど餌やりや掃除等済ませました」

そう問いかけたイザベルに、ラウルは変わらず淡々と返答する。



「お前に一つ聞きたい。…奴隷というものはこんなにも朝早くから働くものなのか?」

イザベルは、3人の中で最も年上であろうラウルに尋ねる。

「…ご主人様。奴隷というものは人間ではなく主人の道具なのです。人が道具を使うのに時間は関係ないのです。…少なくとも私は奴隷となってからはそのように生きてまいりました」

ラウルは変わらずに淡々と告げる。

奴隷を買うのが初めてのイザベルにとってはラウルの返答は驚くべきものだった。



「…私は奴隷を買うのはお前たち3人が初めてだ。私はお前たちにはかつての使用人たちと同じように働いてくれさすればよい。…決して私を裏切ることは許さないがな」


ラウルにとってはイザベルの放つ言葉の方が驚きの連続だった。



親愛なる主人に裏切られ、奴隷として落ちてからこんなに恵まれた環境はなかった。



かつて敗戦国の騎士であったラウル。

騎士として誠心誠意、自身の主に尽くしてきたはずだった。



そのはずだった。

主従だがそれを超える信頼関係を築いてきたと思っていたのに



主はいとも簡単に自分を売り払った。




それからのラウルの人生はどん底だった。
かつて騎士だったラウルの戦闘力を買われ、数多の戦場に駆り出された。


身体が血に濡れない日はなかった。力尽きるまで戦わされるのが当然のはずだった。






新たな主人に買われ、その一つ目の仕事が馬の世話だとは、ラウルを驚かせるには十分すぎた。





「これから、食堂へと行く。ラウル、お前も同行せよ」


冷たい口調だが、新しい主人である彼女の瞳はまっすぐにラウルを捉えていた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜

具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです 転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!? 肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!? その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。 そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。 前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、 「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。 「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」 己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、 結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──! 「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」 でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……! アホの子が無自覚に世界を救う、 価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!

猫なので、もう働きません。

具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。 やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!? しかもここは女性が極端に少ない世界。 イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。 「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。 これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。 ※表紙はAI画像です

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

処理中です...