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しおりを挟む新たな3人分の奴隷の金貨を支払う。
奴隷紋の制約はもちろん、前の3人と同じものを刻む。
イザベルが契約書に血を垂らすと、3人にの首元に奴隷紋が刻まれた。
「店主よ。また来ることになるだろう」
「公爵様。…そちらの者たちは公爵様に買われ幸運でございますね」
パブロは微笑んだまま表情を変えない。
イザベルはパブロの言葉の意図が全く持って理解できなかった。
イザベルは決して物語の中にあるような慈悲の心を持ち誰に対しても思いやりを持ち、平等に接せられる姫や聖女のような人間ではない
そうなろうと思ったこともない
イザベルの辿ってきた道はそんな事では到底たどり着けなかった
若くしてたった一人。このマルシャン家の公爵の立場についた
自分自身で守らなければこの手からすべてすり抜けていってしまうのだ
奴隷たちを対等に扱ったこともないし、別段優しく接したこともなかった
「オーナー様、私共はご主人様に買われたこと、とても幸福に思っております」
イザベルの言葉よりも早く、ラウルの声が響いた。
ラウルの言葉に同意するようリアムも頷く。
それを新たに購入した3人は沈黙を貫いたまま見つめていた。
「…行くぞ」
イザベルは2人が何を言っているのか理解できなかった。
良い主人になったつもりもない、優しく接したつもりもない。
私が望むのは彼らが決して私を裏切らないこと。
普通に普通に接していた。
過去の使用人たちと一切変わらない態度で接してきた。
決して彼らに何かを与えたつもりはないのだ
――――――――――――――――――――――――
イザベルはラウル、リアム、そして新たに購入した3人の奴隷を従えたまま市の入り口に向かう。
そこで市で食材を見ているルディと待ち合わせをしていたのだ。
「ご主人様」
ルディがイザベル達の姿を見つけ、両手に荷物を抱えたまま駆け寄ってくる。
「ルディ、随分買ったのだな」
ルデイの両手に抱える荷物の中には、野菜・果物や香辛料、魚等見える範囲だけでも数種類の食材が見える。
リアムがルディの片手に持ってる荷物を何も言わずとも引き受けた。
イザベルはそれを見て、彼らの仲も随分深まったと思った。
「いや、良い。これですべてか?」
ルディは少し戸惑いが見えるが、迷いなく言葉を続ける。
「私ではこれ以上持てなく…。ラウルが来てからあそこの米を購入したいと考えていたのですが、大丈夫でしょうか?」
「米?」
「はい。この辺りでは生産がほとんどないため、ご主人様には馴染みがないと思うのですが、東国では主食として食べられているものなのです。先ほど見てみたら品質も良い物でしたので購入しておきたいと思いまして」
「ほう、そんなものがあるのか。ラウル頼んだぞ」
「承知いたしました」
先ほど買われた3人は、同じ奴隷であるはずのルディが主人に迷いもなく自身の願いを伝え、その言葉を主人が耳を貸して受けれ入れていることに驚くしかなかった。
イザベルが当然として与えるものは、奴隷として生きてきた者にとっては決して当然のことではない
目の前のこのやり取りを今日買われたばかりの3人は簡単には信じ切ることができなかった
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