公爵様が信じるのは奴隷だけ

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新たに4人を屋敷に迎え入れ、1週間
少しの不安はあったが、イザベルは平穏に過ごしていた。

4人だけで過ごしていた2か月に比べるといささか騒がしくはなったが、その騒がしさをイザベルは不快には思わなかった。


自室にいたイザベルだが、廊下をパタパタと走る音が聞こえる。

「ネアさん!次は何をすればよいですか!」

リアム、ネアやノアと違い、ニコラは成り行き上で買ったため、ニコラは貴族の屋敷での労働の経験はなかった。
それでもその経験の少なさを払拭しようと子供ながらに懸命に働く姿が目に留まった。

「…二コラ。…俺はノアだ。ネアはそっちだな」

どうやらニコラが声をかけたのは、ネアではなく、双子の片割れであるノアであったようだ。


「あ、あの、…申し訳ありません」

ノアの方は別段気にしていない様だったが間違えて声をかけてしまったことに二コラは、気まずそうに下を向き俯いた。


「いや、気にするな。次は下のフロアの窓を拭いてきてくれるか?」

ノアがネアに代わり、ニコラに次の指示を出す。


それに頷いた二コラは、階下に続く階段をパタパタと走り下りていった。







――――――――――――――――――――――――






イザベルはそんなやり取りを聞いて考える。

双子というのはあんなに区別がつかないモノなのか?

ネアとノア以外の双子というものを見たことがなかったため、その考えが正しいかどうかの判別は今のイザベルにはできなかった。



そんな事を考えていたとき、イザベルの頭に一つ考えが浮かんだ。

イザベルは立ち上がり、チェストの引き出しを開ける。
その中から目的の物を手にもち、廊下へと歩き出した。




――――――――――――――――――――――――




「ノア、ネア」

イザベルのその呼び声が廊下に響き渡った。


それにはっと気づいたノアとネアは掃除の手を止め、すぐにイザベルの元へと駆け寄った。

「「なんでしょう、ご主人様」」

そう答える今の言葉も2人そろっていた。

そんな2人を見つめ、イザベルはその手に持っているものを差し出す。

「ネア、ノア、こちらをお前たちにやろう」

それぞれに差し出したのは、ネアには赤いリボン、ノアには青いリボンだった。

いきなり差し出された2人は同じように驚きに目を見開いた。


「お前たちはそっくりだからな。それぞれを見分けるためにもそのリボンを身につけてはどうかと考えたのだ」

ネアとノアは差し出されたリボンを見つめたまま、黙り込んだままだった。


「まだ私も2人の見分けがつかなくてな。それにこれから先、お前たち2人がこの屋敷でそれぞれ別の役割につくのだ。いつまでも2人同じというわけにもいかないだろう?」

その言葉にネアもノアもリボンに留めていた視線をイザベルへと向ける

そして互いの方に顔見合わせ、視線を交じり合わせる







ネアとノアは今までの経験上、視線を合わせることで大まかな意思の疎通が可能である

しかし、主人の言葉を聞いた今の片割れの意思が久々に分からなかった




なぜなら、双子である自分たちにではなく、を求められたのは初めてだったからだ














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