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しおりを挟む「ご主人様、お荷物とお手紙が届いております」
執務室のドアをノックし、部屋へと入って来たのは両手で抱えられるほどの包みを持つネアと、その後ろに続き花束を持つニコラだった。
ニコラの持つその花を見て、イザベルは小さなため息をついた。
そして手紙を受け取り、差出人の名前を見てまた息を吐く。
「ネア、その包みを開けてみなさい」
その言葉に頷いたネアが包みを開こうとするのを見て、イザベルは受け取った手紙を開いた。
イザベルが幼い頃から見慣れた字
イザベルを案じ、気遣う内容の文面
そして添えられる季節の花
それらからはイザベルを想う気持ちが十分すぎるほどに伝わってくる
最後に破滅を迎えた1度目の人生でも変わらない
手紙の主は最初から最後までイザベルを想い続けていた
しかしそのイザベルへの想いが、彼女を逆に苦しめることに繋がったことに彼が気づくことはなかった
改めて手紙の差出人の名前を見て、再確認したイザベルは眉をしかめた
それでもその手紙を乱雑に扱うことはできない
なぜなら手紙の差出人はこの国の第三王子、アルフレート・スアレスなのだから。
――――――――――――――――――――――――
アルフレートとイザベルの初めての出会いは、イザベルがマルシャン家の養子となり迎えた7歳の春だった。
何がアルフレートがイザベルを想うこととなった所以なのかは未だにイザベルは分からない
しかしその初めてのアルフレートとの出会いから、この手紙は続いていた
アルフレートは決して卑劣な人間でも、イザベルを陥れる人間でもない
それはイザベルも十分に理解していた。
むしろアルフレートは誰からも愛されるべき人間であったのだ。
しかし、イザベルはそんなアルフレートのその想いが重い負担だった。
アルフレートは純白で優しく慈愛に満ちた人間である
王位を継ぐことはないのだが、周囲の人間からも国民からも、
誰からも慕われる清い人間だった
イザベルにとってアルフレートは眩しすぎた
彼を見ていると、イザベルは自身の人間性を思い知らされるようで胸が苦しくなるのだ
イザベルが必死に命を懸けて行う祈りの意味を汚されないために外界との接触を断っていたのに、彼はどんなに醜い人間の性を見ても彼自身の信念も行動も変わることは決してなかったのだ
そして何よりも彼の存在がイザベルを破滅に導いた一端であるのだ
この国に現れた聖女と名乗る女性
彼女はイザベルと同じ、いやイザベル以上の力を持っていた
イザベルが破滅を向かえたのは、従者の裏切りと聖女を名乗る女の存在だ
そして、聖女は愛していた
イザベルを想う心優しき美しい王子であるアルフレートを聖女は愛していたのだ
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