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しおりを挟む「なるほどな。…ユーリ様のご主人様への態度が納得いかないと」
その言葉に目の前の二コラがうんうんと頷く。
二コラの視線を受けながらナインは少し考えるが、すぐに何か思いつくことはなかった。
「ユーリ様はここに来たばかりだ。しょうがないだろ」
ナインのその言葉に納得いかないという風に頬を膨らます。
「…2人には時間が必要なんだろ」
それを聞いた二コラは、誰の目から見ても明らかな様子で肩を落とす。
ナインの言葉に何か言いたいが、ニコラ自身も何も考えが思いつかなった。
二コラは、別にイザベルとユーリが仲良くなって欲しいというよりも、
沈んだ様子のイザベルの姿を見たくない
ただそれだけだった。
あくまでも二コラの1番はイザベルなのである。
「…はぁ」
そうあからさまに目の前で気落ちする様子を見せられては、ナインもこのまま放っておくわけにもいかなかった。
ナイン自身、そういった家族の経験など幼い頃の微かな記憶しかないため、なんとかそれを掘り起こし考えを巡らせる。
「一緒に過ごす時間を増やす?…いやいや毎日食事も共にしている、魔力の鍛錬も一緒にしている」
ナインは腕組みをしながらブツブツと考えていることが口から洩れていることに気づかない。
ユーリ様が来た日から毎日2人で食事をして、ユーリ様の魔力の鍛錬の指導等もしているが、ユーリ様は怯えたように様子を窺っているし、ご主人様も決して饒舌な人ではない。
ユーリ様は怯えてはいるがこの屋敷にも少しずつ慣れてきているのと、本人も鍛錬や勉強に努力されている。
そして何の根拠もないが、前の家や家族に未練はないように思える。
ご主人様も言葉数は少ないが、ユーリ様を気にかけているのは明らかだった。
何かが嚙み合っていないのだ
屋敷で共に過ごしていてもだめなのだ、それなら環境を変えてみたら…
「一緒にどこかに出かけてみる…とか…?」
ナインの口から出たその言葉に二コラがばっと顔を上げる。
「ナイン! それだよ! 一緒にお出かけするんだ!」
二コラは名案だというように興奮した声を上げる。
ナインは自身が考えていた案がなぜ二コラに伝わっていることに驚いたが、ニコラの口から改めてそれを聞くと良案のように思えてきた。
「僕見たことあるよ! お母さんと出かけてる子供、とってもとっても楽しそうだったもん!」
無邪気に笑う二コラ。
それを見てナインはつい口から出そうになった言葉を飲み込む。
「僕、ご主人様に伝えてくるよ!」
「…んなっ!」
ナインはちょっと待てという風に手を伸ばすが、ニコラはナインの様子を気にも留めず、嬉々とした様子で屋敷へと一目散に駆けていく。
ナインは走り去る二コラの背を見ながら少しだけ眉を寄せた。
咄嗟に口から出そうになり飲み込んだその言葉
「見たことがあるか…」
なあ、二コラ
名前すら持っていなかったがお前が、親からもらったものは一体何があるのだろう
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