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しおりを挟む今までに見たことのないくらいに顔をしかめるイザベル。
テーブルを挟んだその向かいにはニコニコ顔のスアレス国の第三王子。
アルフレート・スアレスその人なのだから。
「君。お茶のお代わりをもらえるかな?」
そうドアの前に控えるリアムにお茶のお代わりを伝えると、急に声をかけられたことに驚き、肩をびくつかせたが、それでも承知したというように一礼をして部屋を出ていった。
アルフレートの態度とは相反してイザベルは額に脂汗を浮かべ、焦った早口で問いかける。
「…一体何を考えていらっしゃるのですか?」
その言葉にアルフレートは再度イザベルに向けて微笑みを浮かべた。
――――――――――――――――――――――――
―時は遡るほど数時間前―
イザベルとユーリはマルシャン家も所属する西区の貴族の舞踏会の会場を訪れている。
今日この舞踏会の会場に来ているのは、参加者であるイザベル、ユーリ。そして護衛のラウル、従者としてリアムとネアである。
参加者であるイザベルとユーリ以外は、マルシャン家に割り当てられた控室で待機していた。
舞踏会というより、多くの人間と交流する場に参加することに慣れていないユーリは、隠しきれない不安からか、イザベルの後ろをピタッと離れずに付いてきた。
「ヘルペン伯爵。こちらこそご無沙汰しております。こちら、私の息子のユーリでございます」
そう言ってイザベルは右手をユーリの方へ向け、声をかけてきた貴族に紹介する。
「ユーリ・マルシャンでございます、…どうぞよろしくお願い、いたします」
イザベルは声のかけられた貴族たちに何事もないようにユーリの存在を紹介するが、ユーリからすると紹介された後自身の名前を名乗ることで精一杯だった。
しかしイザベルは出会った時何を話しても、身体を震わせて怯えていたことを思い返すと、自分の名前をしっかりと相手の目を見て名乗っている所を見て、子供の、ユーリ自身の急激な成長を感じていた。
イザベルは前の人生でもこの舞踏会に参加していたが、その時はユーリはマルシャン家に養子に来ておらず1人での参加であった。
この会場内ではさすがに国有数の公爵家のマルシャン家の当主であるイザベルを無視する者はいない。
次から次へとイザベルに声をかける人間は後を絶たない。
そもそも舞踏会は情報交換という名目で定期的に開催されている。
交わされる情報は、有益なものや近況報告、それ以外にも他の貴族のプライベートな情報など。
○○家の娘の婚約者は誰だとか、××家の跡取りは長男ではなく、次男になるだとか。
悪事千里を走るとは言わないが、貴族たちは他人の噂話が一種の娯楽となっていた。
もちろん、イザベルのマルシャン家も例外ではない。
イザベルが従者たちを一斉解雇して奴隷を買ったことも、マルシャン家に養子に入った次期マルシャン公爵となるユーリの存在についても既に会場内で知らない人間はいないだろう。
声をかけてくる貴族たちに適当に会話を合わせていると、会場内の会話を遮るような音量でファンファーレが鳴り響く。
―それは王族が現れることを知らせる合図―
ファンファーレが会場内に鳴り響いた後、大きな拍手で迎えられ、会場の中心へと続く階段を下りてきたのはスアレス国の第三王子
アルフレート・スアレスその人だった。
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花雨様、
ええええ、本当にほんとうにありがとうございます!
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遅筆ではありますが、これからも楽しんでいただけるよう頑張ってまいります。
これからもお手すきの際に読んでもらえると嬉しいです。
何故34話が3話続いてるの?w
睦様、ありがとうございます!
このコメントで34話が何故か3話投稿されてることに気付きました…
なんでだろう…投稿終わって確認したら1話だけのはずだったのに…
自分でも謎で驚いております(笑)
ふぉぉぉ!!返信いただけるなんて!!ありがとうございます!
イザベル様は全然そんなつもりはないと思うんですが、行動に現れる優しさには心掴まれました。口調は凛とした強く美しいイザベル様にぴったりで、最高です。正直どストライクです。
これからも楽しく読ませていただきます!