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アディリナは母であるフェリシナと過ごした幼い頃、ずっ疑問であった。
『母は望みを口にしない』
それなのに母の望むものは次々と周囲の存在により揃えられた。
絶品の料理も、美しいドレスも、高価な宝石も。
自身を庇護する存在でさえ。
母が行うことは、それに対して感謝し、慈しみ、癒し、その心を自身で埋めることだけ。
ただそれだけ。
それだけで美しい彼女は多くのモノを手に入れてきた。
―それは、この国で最高の力を持つ王の心でさえも―
フェリシナは後ろ盾もなく、数ある王の妻の中でも最も身分が低かった。
いくら王の寵愛を受けたからといって、身分の低いフェリシナ自身ができることはあまりに少ない。
そして、それは王と出会う前から変わらない。
だからこそ、彼女誰よりも自身を理解していた。
そして、愛するアディリナにその術を教えてないはずがなかったのだ。
―――――――――――――――――――――
母が繰り返し伝え聞かされてきた言葉。
アディリナは自身の護衛騎士であるリチャード・クランストンにあって実感したのだ。
母の言っていた『自分を守ってくれる存在』として、彼を慈しもうと。
今のアディリナが心から信じられるものは、母から受け継いだこの美しさ、呪いを受けても11年ずっと傍にいてくれたマーサだけだ。
最大の後ろ盾であった母であるフェリシナはいない。
呪いを受け、明日を生きることだけを気にする日々は終わったのだ。
―『母を殺した』、この愛憎が蠢く王宮の中で生き抜くために、自身の身を守るためには、自身が行動を起こすしかないのだと―
「リチャード卿」
微笑みを浮かべアディリナは声を発した。
「私、お花がとても好きですの。離宮の庭園でよいのです、一緒に来てくださいますか?」
その言葉を聞き、少しだけ安堵したようなリチャードと再び視線が交わる。
いまだ、離宮の外に出ることのできない主の小さな望み。それを拒否等できるはずもない。
「ええ、もちろんです。アディリナ姫様。」
―――――――――――――――――――――
アディリナにできること。
それは、母と同じように感謝し、慈しみ、癒し、その心を自身で埋めることだけ。
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