美しきモノの目覚め

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「アディリナ様、本日は王家の方々そろっての食事会でございます。ご準備をしましょう。」



「…そう、とうとう今日ね…。」



1週間前にマーサから聞いていた国王、妻、そしてその子供たち。月に1度揃って行われる食事会。
王家の子は5歳となってから、その食事会に加わることとなっているのだが、4歳の頃に呪いを受けたアディリナにとっては今回が初めての参加であった。



「さあアディリナ様、こちらのお召し物に着替えてまいりましょう。」

マーサに着替えを手伝ってもらいながら、アディリナは今日開かれる食事会に思いを馳せる。



かつて遠目から少し見かけたことのある兄たちや兄の母はいるが、アディリナが直接対面するのは今日が初めてなのだ。

そして、イヴァノフ王国第65代国王 アディリナの父であるイスマエル・ル・イヴァノフに会うのすら11年ぶりだ。



―心を占める1番大きな感情は『不安』である―








「ご準備が整いました。さあ、こちらに。」

マーサに促され、大きな姿見の前へと移動する。


上品な花模様をあしらったレース生地、動くたびにスカートのシフォンが美しく揺れる。
色合いは蒼と落ち着ているが、それがかえってアディリナの金髪、そして彼女自身の美しさを際立てている。



呪いが解け、約1か月。


アディリナは同じ年代の少女たちと比べると幾分まだ痩せているが、元来の美しさを取り戻していた。




「ああ……、とてもお美しいです。アディリナ様。」

そういってマーサはうっとりとした笑みを浮かべ、蕩けるような声をもらした。



「アディリナ様、ご不安に思われるかもしれませんが、大丈夫です。」

そして、マーサはアディリナを落ち着かせるように両肩に手を添えた。






――あぁ、あぁ!…あぁ!なんて美しいのだ!――







――――――――――――――――――――――――






マーサは幼い頃から、美しいモノを見ることが大好きだった。

美しい花も、ドレスも、宝石も、美しいモノであれば何でも好きだったのだ。



その中でもマーサが出会ったモノで1番美しかったのは、フェリシナだ。




花やドレス、宝石は出会ったその一瞬の美しさしか感じられず、すぐ飽きてしまった。

―ああ、もっともっと、美しいモノはないのか―



そんな時出会った、フェリシナは違ったのだ。

幼いフェリシナに仕える事となったマーサは、少女から女性に変わっていくその美しさに魅了された。



―『一瞬の美』ではないモノー





さらにマーサがフェリシナに魅了されたのは、その美しさをマーサ自身が行う美しい身体のお世話、選ぶドレスや宝石で、さらに変化させられる事に気づいたからだ。


自身の手で『美しいモノ』を作ることができる


それはなんと甘美であったか




アディリナが生まれた時、マーサは自身の中で激しく高揚した。

―次は、1から自身の手で『美しいモノ』を作りあげることができると―



アディリナが呪いを受けても、マーサはその呪いの影響を自身が受けることになっても傍にいつづけた



―どうして諦められようか。目の前に自身マーサが作り上げた美しさが残っているのに―



ある種の執着であったが、フェリシナの死を受けてもマーサが狂うことなくアディリナの傍にい続けられたのはこの思い一つのおかげだ。







――――――――――――――――――――――――





美しいモノが見たい。

その思い1つ、マーサはこれからもアディリナの傍にいつづける。



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