7 / 84
07
しおりを挟む「アディリナ様、本日は王家の方々そろっての食事会でございます。ご準備をしましょう。」
「…そう、とうとう今日ね…。」
1週間前にマーサから聞いていた国王、妻、そしてその子供たち。月に1度揃って行われる食事会。
王家の子は5歳となってから、その食事会に加わることとなっているのだが、4歳の頃に呪いを受けたアディリナにとっては今回が初めての参加であった。
「さあアディリナ様、こちらのお召し物に着替えてまいりましょう。」
マーサに着替えを手伝ってもらいながら、アディリナは今日開かれる食事会に思いを馳せる。
かつて遠目から少し見かけたことのある兄たちや兄の母はいるが、アディリナが直接対面するのは今日が初めてなのだ。
そして、イヴァノフ王国第65代国王 アディリナの父であるイスマエル・ル・イヴァノフに会うのすら11年ぶりだ。
―心を占める1番大きな感情は『不安』である―
「ご準備が整いました。さあ、こちらに。」
マーサに促され、大きな姿見の前へと移動する。
上品な花模様をあしらったレース生地、動くたびにスカートのシフォンが美しく揺れる。
色合いは蒼と落ち着ているが、それがかえってアディリナの金髪、そして彼女自身の美しさを際立てている。
呪いが解け、約1か月。
アディリナは同じ年代の少女たちと比べると幾分まだ痩せているが、元来の美しさを取り戻していた。
「ああ……、とてもお美しいです。アディリナ様。」
そういってマーサはうっとりとした笑みを浮かべ、蕩けるような声をもらした。
「アディリナ様、ご不安に思われるかもしれませんが、大丈夫です。」
そして、マーサはアディリナを落ち着かせるように両肩に手を添えた。
――あぁ、あぁ!…あぁ!なんて美しいのだ!――
――――――――――――――――――――――――
マーサは幼い頃から、美しいモノを見ることが大好きだった。
美しい花も、ドレスも、宝石も、美しいモノであれば何でも好きだったのだ。
その中でもマーサが出会ったモノで1番美しかったのは、フェリシナだ。
花やドレス、宝石は出会ったその一瞬の美しさしか感じられず、すぐ飽きてしまった。
―ああ、もっともっと、美しいモノはないのか―
そんな時出会った、フェリシナは違ったのだ。
幼いフェリシナに仕える事となったマーサは、少女から女性に変わっていくその美しさに魅了された。
―『一瞬の美』ではないモノー
さらにマーサがフェリシナに魅了されたのは、その美しさをマーサ自身が行う美しい身体のお世話、選ぶドレスや宝石で、さらに変化させられる事に気づいたからだ。
自身の手で『美しいモノ』を作ることができる
それはなんと甘美であったか
アディリナが生まれた時、マーサは自身の中で激しく高揚した。
―次は、1から自身の手で『美しいモノ』を作りあげることができると―
アディリナが呪いを受けても、マーサはその呪いの影響を自身が受けることになっても傍にいつづけた
―どうして諦められようか。目の前に自身が作り上げた美しさが残っているのに―
ある種の執着であったが、フェリシナの死を受けてもマーサが狂うことなくアディリナの傍にい続けられたのはこの思い一つのおかげだ。
――――――――――――――――――――――――
美しいモノが見たい。
その思い1つ、マーサはこれからもアディリナの傍にいつづける。
10
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜
具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」
居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。
幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。
そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。
しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。
そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。
盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。
※表紙はAIです
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
能天気な私は今日も愛される
具なっしー
恋愛
日本でJKライフを謳歌していた凪紗は遅刻しそうになって全力疾走してたらトラックとバコーン衝突して死んじゃったー。そんで、神様とお話しして、目が覚めたら男女比50:1の世界に転生してたー!この世界では女性は宝物のように扱われ猿のようにやりたい放題の女性ばっかり!?そんな中、凪紗ことポピーは日本の常識があるから、天使だ!天使だ!と溺愛されている。この世界と日本のギャップに苦しみながらも、楽観的で能天気な性格で周りに心配される女の子のおはなし。
はじめて小説を書くので誤字とか色々拙いところが多いと思いますが優しく見てくれたら嬉しいです。自分で読みたいのをかいてみます。残酷な描写とかシリアスが苦手なのでかかないです。定番な展開が続きます。飽き性なので褒めてくれたら続くと思いますよろしくお願いします。
※表紙はAI画像です
転生先は男女比50:1の世界!?
4036(シクミロ)
恋愛
男女比50:1の世界に転生した少女。
「まさか、男女比がおかしな世界とは・・・」
デブで自己中心的な女性が多い世界で、ひとり異質な少女は・・
どうなる!?学園生活!!
転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜
具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、
前世の記憶を取り戻す。
前世は日本の女子学生。
家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、
息苦しい毎日を過ごしていた。
ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。
転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。
女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。
だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、
横暴さを誇るのが「普通」だった。
けれどベアトリーチェは違う。
前世で身につけた「空気を読む力」と、
本を愛する静かな心を持っていた。
そんな彼女には二人の婚約者がいる。
――父違いの、血を分けた兄たち。
彼らは溺愛どころではなく、
「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。
ベアトリーチェは戸惑いながらも、
この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。
※表紙はAI画像です
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる