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しおりを挟む第二王子、カール・ル・イヴァノフ。
カールは優れた体格を持ち、剣術にも秀でていた。
母である第二妃イーダの母国では武術が王となるのに最も重要視されていたこともあり、文学というよりは幼い頃から剣術のほうに重きを置いてきた。
幼い頃から鍛え上げていた剣術は今では騎士団の中でも有数の実力である。
その甲斐もあり、イヴァノフ王国内でも武力派の貴族たちからの支持を一身に受けていた。
口数が少なく、愚直に鍛錬に打ち込む姿が幼い頃より騎士団の中で評価され、周りから冷静な優れた将となるだろうと評価されている。
王を志し、自らを鍛え上げる立派な王子である。
それが、カールの周囲からの評価であった。
しかし、カールの本質は大きく異なる。
カールは戦うことも鍛錬も別段好きではない。
彼は理想の自分へなるために、自身を鍛えていただけだった。
―自分は選ばれた王子である―
王子として、美しき姫と結ばれるその日のために、これは必要なことなのだ。
だからカールは不平不満も言わず、自信を鍛え続ける。
――――――――――――――――――――――――
カールは自身の存在が、選ばれた尊い存在だと信じて疑わない。
それは、実母である第二妃イーダの教育の賜物であった。
イーダ自身も隣国の王女として、蝶よ花よと大切に大切に育てられ自身の存在が尊いものであるという認識はその身体の奥深くまで染みついていた。
そんなイーダが、自身の子供を同じように育てないはずがない。
―イーダもカールも特別で尊ばれるべき存在なのだ―
それも当然だ。
だって彼女はその生き方しか知らないのだから。
だからこそカールは、自分の価値を絶対的に信じている。
自身が正しいと思ったことを曲げることも曲げられることも大嫌いだった。
それが周囲には自分の意見をしっかりと持ち、妥協をせず、愚直に理想を追い求める王子として映っていた。
自分の意見を持っているといえば、聞こえはいいが、
裏を返せば一方的に思い込みが激しく、自身に都合の良い解釈をしてしまう。
カールは長い間ずっと美しい姫との自分の運命的な出会いのためその時を待っていた。
そのタイミングが今日であっただけだ。
美しい花の咲き誇る中で見つめ合う美しい姫と王子の自分。
まさに理想の物語の中のワンシーンではないか!
カールの心は歓喜に震え続けていた。
ああ!ああ!俺とアディリナは運命だったのだ。
やはり世界は俺とアディリナのために回っているのだ。
あの日俺がお前を見つけたのはやはり運命だったのだ。
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