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カールはその後リボンをアディリナに差し出し、そのまま一言二言言葉を交わした後去っていた。
アディリナは笑顔を見せないカールに最初は不信感を持っていたが、アディリナへ接する節々に見られる優しさに喜んでいた。
―もしかしてカールお兄様は私を慈しんでくださっている?-
言葉数こそ少なく、ぶっきらぼうな物言いに聞こえたが、その声にもまなざしにも敵意は全くなかった。
なぜカールが自身に優しくしてくれるのかがアディリナには思い当たる節がなかったが、アディリナにできることは自身を守護してくれる存在を慈しむことだけなのだ。
――――――――――――――――――――――――
カールはアディリナと庭園で会った後、足早に自室へと向かっていた。
自室の入り口のドアを開き、一目散に部屋の隅にある鍵のついた一室に向かう。
『ガチャ』
内側からの鍵をすぐにひねる。
そしてカールは小さな一室の床に敷いてあるクッションに倒れこむ。
「あんな……っ……あんな微笑みまさに……天使っ…じゃないか…」
恍惚の表情を浮かべて、カールは震えだす自分の体を鎮めるために深呼吸を繰り返す。
いまだ収まらない興奮を落ち着かせようと、ゆっくりと壁に飾られた数多くの絵画を見渡し息を吐く。
カールの部屋に飾られている絵画はすべて天使が描かれた作品である。
それらはカールが来る日も来る日も集め続けた絵画だ。
それも金髪で青い目を持つ天使。時には画家に自らの望む要望の天使も描かせた。
カールの部屋の中の一室。その中にその絵画はすべて飾られている。
―11年前にひどく傷ついた少年の心を、ずっとずっとこの部屋が癒してくれていた―
しかし今日運命の出会いを終えたカールの瞳には、この絵画どれもすべて色あせ見えてしまう。
それほどまでに本物の天使は美しすぎたのだ。
いまだ興奮の収まらないカールは壁の一角に飾られている1枚の絵に近づき、そっとその絵を指先で撫でた。
それはカールの最もお気に入りの絵だ。
その絵は、幼い少年に翼を羽ばたかせ舞い降りる美しい天使の絵だ。
少年はカールに、天使はアディリナにそっくりである。
なぜならばそれはカールが画家に特別描かせた、あの日のカールとアディリナの出会いを描かせたものだ。
本当はカールが一方的にアディリナを見ていただけだが、カールの中では自分が天使に選ばれたのだと変換されている。
しかし、カールの中ではその絵の光景、それこそが揺るぎない真実なのだ。
***
さあ、早く早く、今日の出会いを描かせなければ!
今日の庭園での運命を形に残さなければ!
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