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しおりを挟む「アディリナ」
庭園にて花を愛でていたアディリナを呼ぶ声がする。
「カールお兄様?」
声をかけたのは、第二王子のカールだった。
普段と変わらずの無表情ではあったが、アディリナに向けられる眼差しは穏やかなものだった。
「カール王子殿下に拝謁いたします。」
アディリナの後ろに控えていた護衛騎士のリチャードがカールを見てお辞儀をする。
「リチャード卿、構わない。」
リチャードを一瞥した後、カールはそう告げた。
「はっ。」
カールの言葉にリチャードはようやく顔をあげ、そして少し離れたところに控える。
「アディリナは、散歩か?」
「はい、秋の薔薇が美しく咲いていると聞きまして。カールお兄様もお散歩ですか?」
カールに尋ねられたアディリナは微笑みを浮かべながら返答する。
リチャードの勧めで、秋の薔薇は春や夏と比べて花数は少なくなるが、花一輪をじっくり愛でることができるということで庭園を散策していたのだ。
「いや、俺は…」
口数は少ないが、はっきり物をいうカールにしては珍しく言い淀んでいた。
アディリナはそんなカールの様子に首を傾げる。
「…こちらを。」
そう言ってカールが差し出したのは綺麗なリボンの巻かれた小さめな細長い箱である。
「これを?私がいただいて良いのですか?」
突然の出来事だったため、アディリナはひどく驚いてしまった。
「ああ。これは、アディリナのために用意した。…開けてみてほしい。」
カールはアディリナをまっすぐ見つめ、頷く。
アディリナはリボンを解いて、箱の中身を見る。
箱の中には、小ぶりだが美しく煌く一粒パールのネックレスであった。
「まあ!とても綺麗!…でもカールお兄様、本当に私がいただいてしまってよいのですか?」
アディリナはネックレスの美しさに感嘆の声を漏らしたが、どう見てもとても希少なもののように思え、本当に自分が受け取ってもよいのか不安になる。
「もうすぐデビュタントだ。お前だけを想って用意したこれを当日身につけてほしい。デビュタントに用意しているドレスとも合うだろう。」
そんな不安そうなアディリナをも愛しく思いながら、カールは優しく諭した。
カールに諭されたアディリナは、ネックレスをぎゅっと胸に抱きしめ、嬉しそうにカールへと微笑む。
「あ、ありがとうございます、カールお兄様!とても美しいです。」
そして少し照れたように言葉を続ける。
「あ、あの、ネックレスももちろんですが……」
カールはアディリナの言葉の続きを黙って聞いていた。
その微笑み以上に、これから、自分を喜ばせる言葉が来るとも知らずに。
「…何よりもカールお兄様が私の事を考えていてくださったことが1番嬉しいのです。」
――――――――――――――――――――――――
愛しい。愛しい。俺の可愛い天使。
俺はいつでも、アディリナ、お前の事だけを想っているのに
『俺に想われている』それだけでこんなにも喜ぶなんて!
心配せずとも、お前は俺のものだ。
だが、美しい。本当にお前は心まで美しい
そんな、そんなお前だから。
そんなお前だからこそ『美しさを』を象徴するこの石が最も相応しいな
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