Aegis 教皇騎士団 _一条斗真と吸血鬼_

こはちゃ

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登場人物紹介も兼ねて1話完結です

Aegis 教皇騎士団 _桐生奏多編_

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木属性 ~植物を司る~
桐生奏多  植物を自在に操る

長い長い満月の夜が明けようとしていた。辛うじて月が西の空に見える朝4時。
「あ、一条くんが帰ってきた。」
桐生奏多は窓から斗真が帰ってきたのを見て、ティーカップを置いた。
「一条(斗真)さんもお呼びして一緒にお茶になさいますか」
秘書の月宮蘭さんが奏多に尋ねる。
「いや、いいよ。一条くんは外で調剤でもしたみたいですね。すごく疲れているようだし、僕はもう部屋に戻ろうかな。ごちそうさま。」
奏多は席を立ち、自室へ戻ろうとした。その時、一瞬目の端にまばゆい光を見た。
「……。」
急に立ち止まった奏多を蘭さんが不思議そうに見る。彼女には今の光が見えなかったのか?
「わああああああ!!!!」
階下から斗真の叫び声が聞こえてきた。
「‼い、今のって…」
蘭さんが青ざめる。
「大丈夫、僕が行きます。蘭さんは他の方に、玄関には近づかないよう連絡をお願いします」
「わわ、分かりました」
蘭さんは食器を持って、慌てて奥へ引っ込んだ。
「さーて、どんなお客さんかな」
奏多はのんびりと玄関へ向かった。
______________________________________________
玄関に着くと、斗真が今にも吸血鬼に噛みつかれそうになっている。斗真は夜中に何人もの吸血鬼を相手にしたのだろう、吸血鬼の足にツタを巻いて抗っているが、疲労でうまくツタを通して吸血鬼に毒を送れないようだ。
「…クソ」
その命綱であるツタでさえもブチブチと切れてきている。ここまでボロボロな斗真を見るのは初めてだ。
「お前みたいな人間は俺ら鬼たちにさっさと血を与えて死ね。栄養分として十分に活用してやるからよ。」
「あはは。随分と物騒なお客さんだなぁ。」
「‼桐生さんっ」
「おかえり、一条くん。そちらの方は?」
「あ?誰だてめぇ」
吸血鬼の顔が怪訝そうにこちらを向いたがすぐにほころんだ。
「お前のほうが血色が良くてうまそうじゃねぇか。てめぇから食ってやるよ。」
「それは僥倖。一条くん、ツタを解いてください」
「え。でも…」
「大丈夫です、彼はもう動けませんよ。僕の術中にはまっていますから。」
「いだっ!!!」
鋭いバラの棘が吸血鬼の靴底を貫通して足の皮膚に突き刺さったのだ。
「痛ぇじゃねぇか!何すんだっ!」
「毒は、スズランでよろしいですか?」
「は?おい、何のハナシだ…っ‼」
地面に張り巡らしたバラの茎がドクンと波打って、吸血鬼に毒を送る。
「スズランの…毒は…」
斗真がバラの棘に包まれていく吸血鬼を見て呆然として言った。
「一条くんはわかるよね」
奏多が微笑んで言う。
「青酸カリのおよそ15倍の毒。症状は、良くて嘔吐、悪くて…心肺停止、です」
吸血鬼の目がドクンと生気を失ったように見えた。
「大丈夫ですよ。彼のことは栄養分として十分に活用してあげますよ。それより一条くん、大変だったでしょう。巡回お疲れ様でした」
「桐生さん、あの、ありがとうございました。俺、スズランなんて強い毒、まだとても使いこなせません…」
「本部への報告は俺がやっておくよ。一条くんはゆっくり休んで。」
吸血鬼がプシューと音を立てて灰になった。
「いい肥料になりそうだよ…それじゃあ僕はこれで」
奏多はきびすを返して3歩進んだ。が、何かを感じて後ろを振り返ると、ドアにもたれかかったまま斗真がぐっすり寝入っていた。
「…………。」
仕方がないので部屋まで運んであげた。
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