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一条斗真 木属性~植物を司る~ 特に植物から薬を調合することが得意 「ねぇ、斗真くん」 「ん、何?楓」 大分人通りの少なくなった港で、先を歩いていた斗真が振り返る。今夜は満月。しかも稀に見るスーパームーンとやらだ。 「あのね、私…」 斗真が楓の目をじっと見つめる。 「ずっとあなたの血を飲みたかったんだ」 楓の口元がニヤリと歪んだその瞬間、楓が鋭い歯を斗真の首元に突き立てて噛み付いた。 「い"っ…」 「ごめんね。この15日間、とっても楽しかったよ。」 そこにいるのは、もう斗真の知っている楓の姿ではない。恐ろしく醜いバケモノだ。 顔にも首にも血管が浮き上がる。楓が血を思い切り吸い込もうとしたその瞬間、 「ぐっ…ゴホッ」 楓の口から大量の血が溢れだし、その場に膝から崩れ落ちる。 「はぁ…痛ぇーよ。もっと噛み方ってもんがあるだろ。いきなり飛びかかって来るなんて、この礼儀知らずめ」 「?! 斗真っ…ゴホ」 「俺が、お前の正体に気づいていないとでも思った?」 座り込む楓の横に歩み寄る。 「はっ…きょ、今日のところはこれくらいで勘弁してやるわ…」 立ち上がろうと足に力を入れるが、すぐにへたり込む。楓の額に冷や汗が浮かぶ。 「おっ、そろそろ効いてきた頃かな。」 斗真が楓の顔をまじまじと覗き込んで言った。 「ゴホッ…何よ…」 斗真がニッコリ笑って言う。 「毒だよ」 「?!毒?!」 「そうだよ~。俺の首に毒、塗っておいたんだ♪」 「何考えて…っ」 「だってさぁ、見てごらんよ」 そう言ってバケモノと化した楓の肩に手を回して空を見上げる。 「こんなに月がきれいな夜に、吸血鬼のお前が襲ってこないわけ、ないでしょ?」 楓の肩がビクッと震える。 「俺が調合した毒はさ、巡りが速いんだよね。全身に巡った毒が、毛細血管の方から体の組織を分解していくの。ほら、こういうふうにさ。」 楓の足先がジュワッと音を立てて蒸発していく。 「俺を選んだのは間違いだったみたいだね♪じゃあ、せいぜい成仏してよ。じゃあね」 そう言って斗真は港を歩き出す。空を見上げると赤く染まった月が輝いていた。 「今夜は忙しくなりそうだ。」 その背後にはもう楓の姿は跡形もなく消えていた。
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文字数 2,581 最終更新日 2021.04.18 登録日 2021.04.18
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