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第一章
第11話
「お嬢様、入りますよ」
辰美が出ていってから間もなく、扉をノックする音が聞こえた。
玲子は泣き腫らした顔を上げる。
「朝食をお持ちしました」
扉に目を向けるとメイド服を着た女が立っている。女は体を丸めて端に座っている玲子の姿を見た瞬間、すぐさま駆け寄った。
「大丈夫ですか!お嬢様!」
心配そうに玲子の顔を見つめる。
玲子は酷く顔色が悪く、体も震えている。女はすぐさまシーツを持ってきて、玲子の体を包み、持ってきたカートから素早くティーカップを取り出して暖かいお茶を注いだ。
「飲んでください、温まりますから」
玲子は震える手でティーカップを受け取り、3口ほど口に含んだ。途端に冷えた体が中から温まっていく。
「あったかい……」
「それは良かったです」
女は玲子の顔を見ながら優しく微笑んだ。
「あなたは?」
「申し遅れました。今日から、お嬢様のお世話係につかせて頂きます!伊藤と申します!」
「そう……」
玲子が頷いた瞬間、伊藤は何かを思い出したように、あっと声を上げた。
「なに」
「あ、あの、お嬢様。あと30分後にはここを出ないと大学のお時間に間に合いません!」
「え、ここから出ていいの……」
「はい、辰美様から玲子お嬢様を大学へ送るようにと……」
予想外の言葉に玲子は目を見開いた。てっきり、しばらく大学には行かせてもらえないのかと思っていた。
一郎に会える、そう思うだけで心の霧がすっと晴れていく気がした。
「直ぐに準備するわ」
玲子は立ち上がり、用意された朝食を軽く食べて、準備に取り掛かった。
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