傲慢令嬢、冷徹悪魔にいつの間にか愛されて縛られてました

萩の椿

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第一章

第21話

大通りに出て、タクシーを捕まえた玲子は無事に空港に着くことが出来た。

搭乗口の近く、けれど目立たないように端の方で、玲子は一郎を待った。

時計は3時10分をさしている。

辺りを見回しても一郎の姿は見当たらない。


(やっぱり、いきなり過ぎたよな……)

突然、イギリスに行こうと言われて、はい分かりましたと、決断できる人はそう居ないだろう。

例え、それが恋人の頼みだとしても、今までの生活を捨てるということになるのだから。



「はぁー」

玲子が深くため息をついた時、スマホの着信音が鳴った。

画面には伊藤と表示されてある。


「もしもし、伊藤?どうしたの?」

「どーも」

伊藤ではない見知らぬ男の声がした。

「誰?」

「俺だよ、1回会ってるけど覚えてないか?」

「くどいわ、早く名乗りなさい」

「相変わらずだな。辰美の幼なじみって言ったらわかるか?長谷川アキラだ。今は辰美の秘書をしてる」

玲子は目を見開いた。

(長谷川アキラって、あの時の……)

玲子は1度だけ長谷川と会ったことがあった。

あれは、玲子が高校生の頃、西園寺グループ主催のパーティーに参加した時だ。

一際女性陣の注目を集めていた二人の男。辰美と長谷川アキラ。

一言挨拶を交わしただけであったが、印象が強烈でよく覚えている。

辰美と幼なじみとは聞いていたが、まさか秘書になっているとは思わなかった。

しかし、なぜ、長谷川が伊藤の電話から出てくるのか。


玲子はひと呼吸おいて尋ねた。

「なんの用?」

「伊藤は捕まえた」

「なっ……」

玲子の手が震える。

「辰美から全部聞いた。まあ、大人しく帰ってきた方がいいと思うぜ。アイツ怒ると怖いからな」

「お嬢様、私には構わず行ってください!」

電話の向こうから長谷川の声と被って伊藤の声が聞こえた。


「今、辰美がそっちに向かってるはずだ」



スマホを握っていた手に、急に力が入らなくなってだらんと下に垂れた。

バキっと、嫌な音がしてスマホが地面に落ちる。

その瞬間、妙に周りが静かになって、人々の足音が嫌に頭に響いた。

その中に、真っ直ぐ玲子に向かって来ている足音が一つ。

「みっけ」

顔をあげれば辰美が、2人の執事を連れて立っていた。
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