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二章 過去編
第54話
しおりを挟む「辰美君てさ、エッチ上手だよね」
隣で女性が満足そうに笑う。
あれから、辰美は何度か爆ぜた。溜まりまくった性欲をすべて発散させ、今はお互いに肩で息をしながら、ベットに寝転んでいる。
「え?」
「だって、こんなにイッたの初めてだもん。辰美君に好きになってもらえた女の子って幸せだねー」
「そうかな……」
「そうだよ!こんなにも気持ちよくしてくれるんだもん。その子も一回ヤったら、絶対、辰美君の虜になるよ」
その言葉は素直にうれしかった。この女性は、玲子と自分の関係なんて全く知らないのだろうけど、初めて応援されたような気がした。
玲子を好きな気持ちは変わらないけれど、アキラにも、大輔にも否定されては流石にこたえてしまっていたのだ。
「……いつか、抱きたいって思ってる。その時はうれしすぎて加減なんて絶対できないんじゃないかな」
来るはずもない未来の妄想を頭の中で繰り広げる。
「いいじゃん、その方が相手に気持ち伝わるよ。俺はあなたの事ずっと抱きたかったんですって」
適当な事を言っているのかもしれないけれど、今はこの女性の言葉が心地いい。
初めて応援者ができたことの嬉しさに、辰美は枕に顔をうずめて「うん」と頷いた。
ホテルからの去り際に、女性の名前を聞いた。
名前は小春。
それからは、週に何度か飲みに行ったり、相談に乗ってもらったりと、良き友達になった。
数日後。
辰美は玲子と共に授業を行っていた。
しかし、先ほどから玲子の顔がまともに見られない。この前、小春を玲子だと思って抱いてしまったことで、辰美の中で勝手に気まずさが生まれていた。
けれど、今まで普通に接していたのだから、何かおかしいと玲子に感づかれるかもしれない。
「はい、じゃあこれ解いてみて」
適当に玲子に問題を投げつけて教材に向かわせ、その隙に玲子を見やった。
まぎれもなく目の前にいるのは本物の玲子だ。
あの晩、思い出しながら欲望を爆ぜた女性。
(あー、くそ。だめだ)
見ていられない。実際に抱いた訳でも、穢した訳でもないのに。
辰美が眉間を親指でほぐしていたその時。
「辰美、さっきから何なの?」
玲子の不機嫌な声が飛んでくる。
「何が?」
動揺を悟られないように、極力、自然に笑顔で対応する。
しかし、玲子の眉間の皺はますます深くなっていった。
「なんか、気持ち悪い」
直球すぎる玲子の言葉が、辰美の胸を打ち抜いた。
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