バトル・オブ・シティ

如月久

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メガロポリスの掟

3.ウォーゲーム

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 ゲームのマップにも大きな変化が現れていた。「メガロポリス」以前は、プレーヤーの作っている街は、高速道路が首都につながっている設定にはなっていたが、街そのものは独立していて、他のどの街ともつながっていなかった。パソコン上には自分の街しか表示されない。他の街の状況は、「シティ」のホームページに行って、見るしかなかった。
 だが、この画面を分析する限り、「メガロポリス」と「ヨシダ・シティ」は隣り合って、同一画面に表示されていたようだ。今は一つの街、いや国になってしまったが、戦争が起きた時点では隣国だったはずだ。有限の資源を巡って隣接した国が権利を奪い合えば、戦争に発展する確率は高い。いや、この設定はプレーヤー同士の戦争を誘発している。このゲームは「メガロポリス」に昇格した途端、街同士を戦わせる「ウオー・ゲーム」へと豹変したのだ。
 リョウは、マップを移動させ、旧プレミアム・シティを見に行った。整備された大きな港には何隻もの軍艦や空母が停泊し、国境だったと思われる付近には戦車や高射砲が多数据え付けられた要塞が構築されていた。市街地の外れに元からあった空港のほかに、小規模な軍用飛行場が造成され、戦闘機が数十機並んでいた。ヨッシー側からの攻撃の傷跡も残っていた。高速道は何カ所かに爆撃の痕跡が認められたし、港湾区域内には沈没、あるいは大破した艦船が放置されていた。
 リョウはすぐに新聞社「プレミアム・シティ・プレス」をクリックした。今日の新聞のトップは、<高速道、復興計画まとまる。向こう五年間に百億円を投入>だった。そのほかの記事も、ほとんどが戦争で荒れた街の修復に関する内容で占められていた。図書館でバックナンバーも調べてみた。その中で、いろいろなことが分かってきた。
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