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■82 実は……
しおりを挟む聖夜祭が幕を閉じ、次の日。
私はモストワ卿に呼ばれ、朝から王宮術師達の部屋に赴いていた。
さて、これからどうなるか。皆には分かるだろう。
「「「「お待ちしておりましたっ!! 賢者様っ!!!」」」」
正解はこうであった。
部屋のドアが開いた瞬間、ずらっと術師さん達が並んでいたのだ。えぇと、全部で52名だよね。ね、熱量が凄すぎて飛ばされそう……
「は、初めまして、ステファニー・モストワです」
尊敬しています!
昨日の祈りの儀、感動いたしました!
錬成陣をお見せして頂けないでしょうか…?
お話したいことがございます……!!
まぁ、こんな感じだ。人数が多い為全員のは答えてあげられないけれど……と思った次の瞬間。
「わ、私の論文を、読んで頂けないでしょうか……!!!」
分厚い紙の束を目の前に。
それから、お前ずるいぞ!! 抜け駆けするな!! と皆々出してきて。
バッと渡されても……
でも、実は問題があるのだ。
「あの、ですね……皆さんの論文を読むのは構わないのですが……お恥ずかしながら小さい頃から旅をしていて錬金術以外の事はきちんと勉強していなくて、ですね……
最低限の事は大丈夫なのですが、難しい単語とかは……分からなくて、ですね……辞書を引きながらになってしまい、時間がだいぶかかってしまうのですが……それでも、いいですか……?」
そう、最低限の事は分かるけれど……それ以外は分からない。ここに来て、本を読ませてもらった時にもちょっと苦労したし、男爵となってからもだいぶ困ったし。
さっきまでガヤガヤしていた皆さんが、石化したみたいに固まってしまって。……ガッカリ、しちゃったかな……?
「よ、読んでくださるのですか……?」
「……え? あ、私で良ければ……」
「私達の為にそんなに時間を費やしていただけるのですか……!!」
「ただでさえお忙しい身でいらっしゃるのに!!」
……へ?
げ、幻滅、してないの……?
それどころか、目を輝かせている。いいのか、私でいいのか。
でも、このまま渡されるのは困ってしまうため、皆さんが集まって、あれは……じゃんけんだっけ。手を握りしめるグー、そこから人差し指と中指を立てたチョキ、全て開いて掌を見せたパーで勝負する遊びのようなものらしい。
「「「さぁいしょはグー!!!」」」
と、だいぶ気合いが入っているようだ。
「すみませんな、あの者達が……」
「いえいえ、皆さんの論文を読ませてもらえるなんてこちらこそありがたいです」
実は、このモワズリー卿。以前こっそり自分の論文を渡してきたのだ。ご意見を頂けないでしょうか、と。たぶんこの事は皆さんは知らないだろうな。
その時、だいぶ時間がかかってしまった為にさっきの事を皆さんに確認したのだ。
「読み終わったものは、感想を書いた紙と一緒にいれて王宮に送る形でいいでしょうか」
「えぇ、私がお預かりして皆に送りますので」
そうか、これから皆さん各々の場所に戻るのか。なら、とてもありがたい。
ぃいよっしゃぁ!! と勝敗が決まったような声が聞こえてきて。じゃんけんで読む順番が決まったらしい。私の前に一列に並んでくれて、自分の名前を言いながら渡してくれた。
すごい、こんなにたくさん。どれぐらいかかるだろうか。まぁ、出来るだけ早く返せるよう頑張ろう。
「そういえば、ローレンス君とジョシュア君は……?」
「え? 今日もモワズリー卿の所に来ていたと思っていたんですけど……いなかったのでどこに行ったのか分からないんです。執事が一緒に付いているから大丈夫だと思うのですが」
昨日と一昨日、モワズリー卿の所に来ていましたよね、と聞くと確かに来ていたようだ。けど、訳を教えてはくれなかった。秘密、だそうだ。
一体、何なのだろうか……?
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