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第三章 幸運のしるし
◇24 お茶会
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今日もいい天気日和。押し花のやりすぎ、とお母様に怒られてしまい今日は禁止されてしまった為散歩をしようと廊下を歩いていた。
そんな時、とある人物を見つけた。ここの人達と違った服を着た人だ。
「こんにちは、タクミ君」
「あ、ご機嫌麗しゅう、ご令嬢」
「それ、わざと?」
「バレた?」
酷いな、私それ嫌だって何回言った? 分かっててやるなんて。それに、その【なかむら】の制服でやってもキマらないよ。
「今日もコックさんの所に?」
「そう、もう帰りだけど」
「じゃあ今日も和食なのね!」
メニューは? と聞いたけれどお楽しみだそうだ。夕食の時間が待ち遠しいな。
今日はお店はお休みで、ナナミちゃんは今日は王宮へ。レスリート卿の所で炊飯器の魔道具の件を話し合いをしに行っているようだ。
レスリート卿には、出来上がったらご令嬢にもチェックをお願いします、と私にも言われてる。だから結構楽しみにしている。
お米が簡単に炊けるようになったら、きっとこの国にも日本食が広まる第一歩になるはず。楽しみだ。
「じゃあ、今日これから用事は?」
「え? あぁ、店休みだから何もないけど」
「じゃあお茶しましょ!」
「え」
半ば強引にお茶に誘ってしまったのだ。
実は今私の手にはお菓子の入ってる籠がある。さっきお母様からもらったものだ。珍しいものを頂いたからどうぞ食べてって。でも一人で食べるのはなぁ、って思っていたところ。本当に丁度良かった。
だから、捕まえてお庭の東屋に連行したのだ。
「これ……」
「ザッハリーって言うんだって」
形はリング状。上に何か色々とかかってるみたい。手で持って食べるらしいんだけど……思いっきりドーナツだ。これ。でもふっくらした方じゃなくて、サクサクした方のドーナツ。味は……
「……うん、ドーナツだ」
「ドーナツ?」
「私の故郷にあるおやつなんだ。ちょっと味は違うけど……うん、ドーナツ」
「へぇ~、美味いな」
まさかこんなところでお目にかかれるとは。上にかかってるこれは何だろうか。チョコレートじゃないと思うんだけど……私の好みはチョコレートだから誰かチョコレートを持ってきてほしいと思ってしまう。
ちょっとパサついてはいるけれど、これはこれで美味しい。
「そういえばさ、その服、お爺様が考えたの?」
「あぁ、これか。そう、お爺様が洋装店にお願い……というか、半ば強引に注文して作ってもらったんだよ」
半ば強引……一体何があったんだ。気になるけれど……聞かないほうがいい気もする。
「知ってる?」
「うん、和食のお店の従業員さん達がよく着てる感じのデザインだよ。そうね、昔の人達が着てた〝着物〟っていう服に似てるの、それ」
「あぁ、知ってる。ウチの領地の特産品の一つだよ」
「……えっ」
え、特産品? それって、着物があるって事? 彼らのお爺様が着物作っちゃったって事……?
「作業服作るなら、いっその事着物も作っちゃえ、って言って作ったって聞いてる」
「そ、なんだ……」
「因みに、領地民や俺らも普段着にしてるんだ、それ」
「え”っ!?」
ま、まさかそこまでだとは……
「後で持ってこさせようか?」
「あ、はい……」
驚きすぎて生返事しか出来なかった。着付けの出来るナナミちゃんを連れてきてくれるらしい。まさか、異世界で着物とご対面できるとは全く思わなかった。
「ナカムラ男爵領って、もしかして日本になっちゃってる感じ……?」
「俺は当然見た事ないけど……〝エドジダイ〟って知ってるか?」
……ん?
エドジダイ? 江戸時代?
「じいさんがよく言ってるんだ。ウチの領地って〝エドジダイ〟みたいだなって。まぁ、他の領地と違ってうちの領地はいろいろと特殊だからな。田んぼなんて他にないし」
あー、なるほどなるほど。そういう感じなのね。
まぁ確かに電気は通ってないし、機械もないし。そちらの国では魔道具ってあまり使われてないみたいだし。移動手段も馬が使われているし、普段着も着物らしいし、身分制度もある。建物だってこの前話したみたいに30階40階もある高い建物ないし。
あ、洋式の建物はあるけど。そう考えると確かに江戸時代だ。
「……うん、確かにそうかも。見たことないけど」
「へぇ、あんな感じなんだ。何百年も前の日本の事を言うんだろ?」
「そうそう。学校の授業で習ったんだけど、そんな感じだったよ」
そっか……着物があるんだ。じゃあ、前世で流行ってた洋服でも作ってみる? いや、きっと流行らないかも。向こうの人達と考え方が違うからね。
着物に関しては、本当に凄いと思う。だって、普段着にしちゃってるんでしょ? 80年かけてそんな領地を作りあげちゃったなんて、お爺様は本当に凄い人だ。
タクミ君が今度持ってきてくれるって言ってたから、どんなものが来るのか楽しみだな。
ドーナツは彼は気に入っていたみたいだから、ナナミちゃんの分も一緒に持ってっていいよ、と残ってるドーナツをいくつかお土産にあげた。じゃあまたな、と手を振って帰っていったのを見送った。今度来るのはいつだろうか。今度はナナミちゃんと3人でお茶しようね。
その後、何だかお母様がニヤニヤと私を見ていたけれど……あの、タクミ君とはそういう仲ではないのでそこは勘違いしないでくださいね? 今日は偶々ナナミちゃんがいなかったってだけですから。
と、思っていたら。
「あ」
「……」
またまた廊下でバッタリ。会ったのは、アルフレッドさんだった。あれ、今日お帰りが早くないですか? お仕事早く終わったのかな。と言っても、帰ってくるのが珍しいのだけど。
「おかえり、なさい」
「あぁ」
あの……どうして立ち止まったまま、なんです……? 頭下げて退散した方がいい?
と、思っていたら……あれ、アルフレッドさんが手にしているの、その紙袋のロゴ……
「ティータイムは取ったか」
「え、あ、いえ」
午前中はタクミ君と取ったけれど、午後のティータイムはまだだ。これから用意してくれる事になっている。食べすぎなんじゃと自分でも思っているけれど、お父様とお母様はもっと食べなさいと何度も何度も言ってくるから絶賛困り中である。太ったらどうしよう……
「来い」
「えっ……」
いきなり、そう言われてしまった。え、またアルフレッドさんとお茶ですか。え、ほんと?
何も聞けずに黙ったままお庭の東屋に連れてかれてしまった。さっきの逆パターンな感じがする。
「……」
「……」
しぃ~ん、とした静かなティータイム。歩いている時に会った人達に視線でヘルプを出したけれど手を振られてしまってもうどうしたらいいのか全く分からない。いきなりのアルフレッドさんだから余計だ。
……あれ、これ、最中?
「最中、というらしい」
あ、はい、よく知ってます。
「知ってるか」
「はい、知ってます……」
「そうか」
……あれ、会話はこれで終了? 今日どんなお仕事してきたんですかとかって聞いたほうがいい、のかな?
そう思っていた時、その、と言い始めたアルフレッドさん。けど、言いづらそうというか。何を言いたいのだろうか。
「……父上がカフスボタンを新調されていたのを見た」
「あ……わ、私、作ったんです」
「あぁ、聞いた」
あ、お父様本当に言ったんだ。自慢してくるって言ってたよね。まさか、冗談じゃなかったとは。
「その……押し花を使って、色々なものを、作ってるらしいな」
「は、はい」
「貰った、額縁も、気に入った」
「あ、ありがとう、ございます」
これは、もしや……いや、でも違うかな?
「……アルフレッドさん、もしかしてカフスボタン新調するところでした?」
「っ!? あ、あぁ」
お、じゃあ正解か。
「じゃあ、私が作りましょうか」
「あぁ、よろしく頼む」
めっちゃ嬉しそうだなこの人。きっとだいぶ自慢されたんだろうな。私の手作りで良いのならいくらでも作りますよ。
「アルフレッドさんは、何色が好きですか?」
「……」
……あれ? 黙っちゃった。私、何か悪い事言ったかな……?
「……君は、」
「え?」
「俺を……兄だと思ってくれていないのか」
「えっ……」
あ、あ、兄? え、私、アルフレッドさんの事、兄って思ってないの? え、あ、いや、ちゃんと思ってます、よ?
「……いや、別にいいんだ、いきなりの事だから戸惑うのも分かっている」
「あ、いや……」
「だが、母上も、父上も、もちろん俺もちゃんと君の事は家族だと認めている」
「いえ、ちょっと待って」
「だが、もし俺に何か至らない点があったのなら、言ってくれ」
「ス、ストップ!」
こ、この人、こんなタイプだった……? あ、知らなかっただけか、私が。この人と話をしたの、これで何回目だっけ。片手で数えるほどだったよね。あ、でも夕食には何回も来てたけど。
「あの、その、私、ちゃんとアドマンス家の令嬢だっていう意識はちゃんとあります。あ、まだ至らない点はありますけど、だから、このアドマンス家が私の家なんだってことも分かっていますし、アルフレッドさんが私の兄になってくださったことも、分かってます」
何となく、アルフレッドさんが言いたい事は分かったし、以前からマリア達にも言われてた。けど、本当に呼んでもいいのかよく分からなかった。お父様とお母様は、本人からお願いされたから呼べたけど、あ、いや、中々定着はしなかったけど。
でも、兄という存在は今までいなかったからどんな感じで話せばいいのかとか分からなかったというか。
「その……〝お兄様〟」
「!?」
「と、お呼びして、も……」
「許可はいらない、呼んでくれ」
おぉ、いいのか。というか、嬉しそうだな。こういう事だったのか。
「はい、分かりました。お兄様」
「……俺も、アヤメと、呼んでいいだろうか」
「はい、どうぞ!」
「……あぁ、アヤメ」
自分で許可はいらないって言ったのに、私には聞くんだ……というところにツッコミを入れたいところではある。
でも、何となく、兄妹になれたかな? でも、距離は縮まったと思う。また会った時ぎこちなくなっちゃうのは嫌だし。でも、ちゃんとした兄妹になれるよう頑張ろうかな。
とりあえず、兄妹で食べた最中は美味しかった。
でもさ、今日【なかむら】はお休みだったよね。じゃあ、これ昨日買ったって事? まぁ、日持ちするやつだし、これ。……じゃあ、もしかして昨日帰ってくるはずだった、とか? 買っておいたのに帰れなかった、ってやつ? 開封されてなかったから、もしかして私のために買ってきてくれた感じ?
……可愛いな、お兄様。お仕事お疲れ様です。
そんな時、とある人物を見つけた。ここの人達と違った服を着た人だ。
「こんにちは、タクミ君」
「あ、ご機嫌麗しゅう、ご令嬢」
「それ、わざと?」
「バレた?」
酷いな、私それ嫌だって何回言った? 分かっててやるなんて。それに、その【なかむら】の制服でやってもキマらないよ。
「今日もコックさんの所に?」
「そう、もう帰りだけど」
「じゃあ今日も和食なのね!」
メニューは? と聞いたけれどお楽しみだそうだ。夕食の時間が待ち遠しいな。
今日はお店はお休みで、ナナミちゃんは今日は王宮へ。レスリート卿の所で炊飯器の魔道具の件を話し合いをしに行っているようだ。
レスリート卿には、出来上がったらご令嬢にもチェックをお願いします、と私にも言われてる。だから結構楽しみにしている。
お米が簡単に炊けるようになったら、きっとこの国にも日本食が広まる第一歩になるはず。楽しみだ。
「じゃあ、今日これから用事は?」
「え? あぁ、店休みだから何もないけど」
「じゃあお茶しましょ!」
「え」
半ば強引にお茶に誘ってしまったのだ。
実は今私の手にはお菓子の入ってる籠がある。さっきお母様からもらったものだ。珍しいものを頂いたからどうぞ食べてって。でも一人で食べるのはなぁ、って思っていたところ。本当に丁度良かった。
だから、捕まえてお庭の東屋に連行したのだ。
「これ……」
「ザッハリーって言うんだって」
形はリング状。上に何か色々とかかってるみたい。手で持って食べるらしいんだけど……思いっきりドーナツだ。これ。でもふっくらした方じゃなくて、サクサクした方のドーナツ。味は……
「……うん、ドーナツだ」
「ドーナツ?」
「私の故郷にあるおやつなんだ。ちょっと味は違うけど……うん、ドーナツ」
「へぇ~、美味いな」
まさかこんなところでお目にかかれるとは。上にかかってるこれは何だろうか。チョコレートじゃないと思うんだけど……私の好みはチョコレートだから誰かチョコレートを持ってきてほしいと思ってしまう。
ちょっとパサついてはいるけれど、これはこれで美味しい。
「そういえばさ、その服、お爺様が考えたの?」
「あぁ、これか。そう、お爺様が洋装店にお願い……というか、半ば強引に注文して作ってもらったんだよ」
半ば強引……一体何があったんだ。気になるけれど……聞かないほうがいい気もする。
「知ってる?」
「うん、和食のお店の従業員さん達がよく着てる感じのデザインだよ。そうね、昔の人達が着てた〝着物〟っていう服に似てるの、それ」
「あぁ、知ってる。ウチの領地の特産品の一つだよ」
「……えっ」
え、特産品? それって、着物があるって事? 彼らのお爺様が着物作っちゃったって事……?
「作業服作るなら、いっその事着物も作っちゃえ、って言って作ったって聞いてる」
「そ、なんだ……」
「因みに、領地民や俺らも普段着にしてるんだ、それ」
「え”っ!?」
ま、まさかそこまでだとは……
「後で持ってこさせようか?」
「あ、はい……」
驚きすぎて生返事しか出来なかった。着付けの出来るナナミちゃんを連れてきてくれるらしい。まさか、異世界で着物とご対面できるとは全く思わなかった。
「ナカムラ男爵領って、もしかして日本になっちゃってる感じ……?」
「俺は当然見た事ないけど……〝エドジダイ〟って知ってるか?」
……ん?
エドジダイ? 江戸時代?
「じいさんがよく言ってるんだ。ウチの領地って〝エドジダイ〟みたいだなって。まぁ、他の領地と違ってうちの領地はいろいろと特殊だからな。田んぼなんて他にないし」
あー、なるほどなるほど。そういう感じなのね。
まぁ確かに電気は通ってないし、機械もないし。そちらの国では魔道具ってあまり使われてないみたいだし。移動手段も馬が使われているし、普段着も着物らしいし、身分制度もある。建物だってこの前話したみたいに30階40階もある高い建物ないし。
あ、洋式の建物はあるけど。そう考えると確かに江戸時代だ。
「……うん、確かにそうかも。見たことないけど」
「へぇ、あんな感じなんだ。何百年も前の日本の事を言うんだろ?」
「そうそう。学校の授業で習ったんだけど、そんな感じだったよ」
そっか……着物があるんだ。じゃあ、前世で流行ってた洋服でも作ってみる? いや、きっと流行らないかも。向こうの人達と考え方が違うからね。
着物に関しては、本当に凄いと思う。だって、普段着にしちゃってるんでしょ? 80年かけてそんな領地を作りあげちゃったなんて、お爺様は本当に凄い人だ。
タクミ君が今度持ってきてくれるって言ってたから、どんなものが来るのか楽しみだな。
ドーナツは彼は気に入っていたみたいだから、ナナミちゃんの分も一緒に持ってっていいよ、と残ってるドーナツをいくつかお土産にあげた。じゃあまたな、と手を振って帰っていったのを見送った。今度来るのはいつだろうか。今度はナナミちゃんと3人でお茶しようね。
その後、何だかお母様がニヤニヤと私を見ていたけれど……あの、タクミ君とはそういう仲ではないのでそこは勘違いしないでくださいね? 今日は偶々ナナミちゃんがいなかったってだけですから。
と、思っていたら。
「あ」
「……」
またまた廊下でバッタリ。会ったのは、アルフレッドさんだった。あれ、今日お帰りが早くないですか? お仕事早く終わったのかな。と言っても、帰ってくるのが珍しいのだけど。
「おかえり、なさい」
「あぁ」
あの……どうして立ち止まったまま、なんです……? 頭下げて退散した方がいい?
と、思っていたら……あれ、アルフレッドさんが手にしているの、その紙袋のロゴ……
「ティータイムは取ったか」
「え、あ、いえ」
午前中はタクミ君と取ったけれど、午後のティータイムはまだだ。これから用意してくれる事になっている。食べすぎなんじゃと自分でも思っているけれど、お父様とお母様はもっと食べなさいと何度も何度も言ってくるから絶賛困り中である。太ったらどうしよう……
「来い」
「えっ……」
いきなり、そう言われてしまった。え、またアルフレッドさんとお茶ですか。え、ほんと?
何も聞けずに黙ったままお庭の東屋に連れてかれてしまった。さっきの逆パターンな感じがする。
「……」
「……」
しぃ~ん、とした静かなティータイム。歩いている時に会った人達に視線でヘルプを出したけれど手を振られてしまってもうどうしたらいいのか全く分からない。いきなりのアルフレッドさんだから余計だ。
……あれ、これ、最中?
「最中、というらしい」
あ、はい、よく知ってます。
「知ってるか」
「はい、知ってます……」
「そうか」
……あれ、会話はこれで終了? 今日どんなお仕事してきたんですかとかって聞いたほうがいい、のかな?
そう思っていた時、その、と言い始めたアルフレッドさん。けど、言いづらそうというか。何を言いたいのだろうか。
「……父上がカフスボタンを新調されていたのを見た」
「あ……わ、私、作ったんです」
「あぁ、聞いた」
あ、お父様本当に言ったんだ。自慢してくるって言ってたよね。まさか、冗談じゃなかったとは。
「その……押し花を使って、色々なものを、作ってるらしいな」
「は、はい」
「貰った、額縁も、気に入った」
「あ、ありがとう、ございます」
これは、もしや……いや、でも違うかな?
「……アルフレッドさん、もしかしてカフスボタン新調するところでした?」
「っ!? あ、あぁ」
お、じゃあ正解か。
「じゃあ、私が作りましょうか」
「あぁ、よろしく頼む」
めっちゃ嬉しそうだなこの人。きっとだいぶ自慢されたんだろうな。私の手作りで良いのならいくらでも作りますよ。
「アルフレッドさんは、何色が好きですか?」
「……」
……あれ? 黙っちゃった。私、何か悪い事言ったかな……?
「……君は、」
「え?」
「俺を……兄だと思ってくれていないのか」
「えっ……」
あ、あ、兄? え、私、アルフレッドさんの事、兄って思ってないの? え、あ、いや、ちゃんと思ってます、よ?
「……いや、別にいいんだ、いきなりの事だから戸惑うのも分かっている」
「あ、いや……」
「だが、母上も、父上も、もちろん俺もちゃんと君の事は家族だと認めている」
「いえ、ちょっと待って」
「だが、もし俺に何か至らない点があったのなら、言ってくれ」
「ス、ストップ!」
こ、この人、こんなタイプだった……? あ、知らなかっただけか、私が。この人と話をしたの、これで何回目だっけ。片手で数えるほどだったよね。あ、でも夕食には何回も来てたけど。
「あの、その、私、ちゃんとアドマンス家の令嬢だっていう意識はちゃんとあります。あ、まだ至らない点はありますけど、だから、このアドマンス家が私の家なんだってことも分かっていますし、アルフレッドさんが私の兄になってくださったことも、分かってます」
何となく、アルフレッドさんが言いたい事は分かったし、以前からマリア達にも言われてた。けど、本当に呼んでもいいのかよく分からなかった。お父様とお母様は、本人からお願いされたから呼べたけど、あ、いや、中々定着はしなかったけど。
でも、兄という存在は今までいなかったからどんな感じで話せばいいのかとか分からなかったというか。
「その……〝お兄様〟」
「!?」
「と、お呼びして、も……」
「許可はいらない、呼んでくれ」
おぉ、いいのか。というか、嬉しそうだな。こういう事だったのか。
「はい、分かりました。お兄様」
「……俺も、アヤメと、呼んでいいだろうか」
「はい、どうぞ!」
「……あぁ、アヤメ」
自分で許可はいらないって言ったのに、私には聞くんだ……というところにツッコミを入れたいところではある。
でも、何となく、兄妹になれたかな? でも、距離は縮まったと思う。また会った時ぎこちなくなっちゃうのは嫌だし。でも、ちゃんとした兄妹になれるよう頑張ろうかな。
とりあえず、兄妹で食べた最中は美味しかった。
でもさ、今日【なかむら】はお休みだったよね。じゃあ、これ昨日買ったって事? まぁ、日持ちするやつだし、これ。……じゃあ、もしかして昨日帰ってくるはずだった、とか? 買っておいたのに帰れなかった、ってやつ? 開封されてなかったから、もしかして私のために買ってきてくれた感じ?
……可愛いな、お兄様。お仕事お疲れ様です。
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