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第十章 幸せとは
◇95 のどかな一日
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……おかしいな、どうして目をつぶったタクミの顔が目の前にあるんだろう。
寝起き、うん、寝起きだ。
うわぁ、改めて見るとこのイケメンさん本当に顔整ってるなぁ。まつ毛長っ。肌も綺麗で羨ま……
「おい」
わっ!?
「何ジロジロ人の顔見てんだ」
「目の前にイケメンがいたものですからつい」
「はぁ?」
あ、そうだ。ここ外だ。今日天気がいいから庭の芝生にレジャー用の布敷いて寝っ転がってたんだった。いつぞやのパトラさんとしたみたいに。気持ちよさ過ぎて寝ちゃってたのか。
あれ、マリアがいない。一緒に布の上に座ってたはずなんだけど。
「こんな所で寝るな」
「タクミも寝てたじゃん」
「お前が悪い」
うわぁ、人のせいにするんだ~。
ほら、と手を引っ張られて起こされてしまった。折角気持ちよく寝てたのに。
「おやつ、作ったんだけど?」
「食べる」
「ははっ、あいよ」
おやつなんだろうな~。昨日は白玉団子だった。よく小豆持ってきてたなぁ、って思っちゃった。果たしてタクミは何を持ってきているのだろうか。
「アヤメ、ちょっとあっち向け」
「え?」
タクミが指さしたのは私から見て彼の反対側。
「寝っ転がったから髪崩れてる」
「直してくれるの? じゃあお願いしま~す」
くるっとタクミに背を向けた。そういえば、初めて着物持ってきてくれた時もかんざし挿してくれたっけ。本当に手先が器用だ。
手のかかるやつだな、とつぶやいていた事はスルーしてあげた。私は心が広いんでね。
「俺さぁ、アヤメと会うまで自分と同じ黒髪の人と会った事なかったんだよね」
「裕孝さんは?」
「俺産まれた時はほぼ白髪だった。てか、お前じいさんの事裕孝さんって呼んでんの?」
「中村さんは何人もいるから気持ち悪いって言われた」
「……」
少し黙った後、ほら出来たぞ、と。今鏡がないからどうなってるのか分からないけど、触った感じ三つ編みで編みこんでくれたのかな?
「ひと編みひと編み愛情を込めて編みましたよ」
「いつぞやの私のマネ?」
「そ。あのコースターちゃんと使ってるよ。ナナミにいつも羨ましがられるけどな」
パトラさんに教えてもらいながら作ったコースター、使って貰えてたんだ。嬉しいな。お母様達に渡した時は家宝だとか何だとか言って額縁に入れられて飾られてしまっているけれど。使ってほしかったんだけどなぁ。まぁあげたものだから好きに使ってくれていいんだけど。
じゃあ、という事は私もお返しをしなくてはならない訳だ。なので彼の肩に手を付けてキスをした。ちょっと恥ずかしかったけど、あらら、やってみたかいがあった。
「あはは、驚きすぎ」
「……やったな?」
私の手を引っ張って来て、彼の方に倒れこんでしまった。支えてくれたけれど、彼にキスをされた。
「ここ、外なんですけど」
「最初にやったのはそっちだろ」
うん、まぁそうなんだけど。でもこれはやりすぎじゃない?
「おやつ」
「あーはいはい、食いしん坊お嬢様」
「それやだ」
「おやついらないの?」
「いる」
「あはは、素直でよろしい」
離してもらうために言っただけだし。決してそういうキャラじゃない、はず。
タクミがレジャー布を畳んでくれて、こっちって手を握って行き先を案内してくれた。庭の東屋だ。あ、マリアいた。けど、あの、なんでニヤニヤしてるのさ。……まさか、見てた? おのれ、タクミ。分かっててやったな?
さ、こちらにどうぞ。とまだニヤニヤしているマリアに椅子に座らされた。
「あっ! 寒天!」
「そ。フルーツ入れてみた」
今日のデザートは寒天でした~。この寒天の中に入ってる果物、なんだろう。見た事ないかも。ここ、馬車で一日の所だったけれど、手に入る食材とかは首都と違うのね。
いただきます、とフルーツを寒天の一緒に食べてみた。ん~甘ぁ。のど越しもいいし、味も最高。やばい、いくらでもいけちゃう。
これは……何となぁくみかん。見た目はキウイのような色。カットされてるからどんな形だったのか分からないけれど。そういう所は面白いよね。
「この果物食べたの初めてなんだけど、上手くいってよかったよ」
「へぇ~、知らなかったんだ」
「結構ここの食材知らないもんだらけだから試食ばっかだよ」
そっかぁ、知らない食材を使うとなると難しいよね。調理方法が分かってても食材が分からないと出来ないもん。そういう所もプロの技ってやつ?
ん?
「どしたの、タクミ」
「ん? あぁいや、ただの考え事」
「ふぅん」
なぁんかボーっとしてる。何かあったのかな。
まぁ、無理に聞く事はせずそのままそっとしておこうか。
寝起き、うん、寝起きだ。
うわぁ、改めて見るとこのイケメンさん本当に顔整ってるなぁ。まつ毛長っ。肌も綺麗で羨ま……
「おい」
わっ!?
「何ジロジロ人の顔見てんだ」
「目の前にイケメンがいたものですからつい」
「はぁ?」
あ、そうだ。ここ外だ。今日天気がいいから庭の芝生にレジャー用の布敷いて寝っ転がってたんだった。いつぞやのパトラさんとしたみたいに。気持ちよさ過ぎて寝ちゃってたのか。
あれ、マリアがいない。一緒に布の上に座ってたはずなんだけど。
「こんな所で寝るな」
「タクミも寝てたじゃん」
「お前が悪い」
うわぁ、人のせいにするんだ~。
ほら、と手を引っ張られて起こされてしまった。折角気持ちよく寝てたのに。
「おやつ、作ったんだけど?」
「食べる」
「ははっ、あいよ」
おやつなんだろうな~。昨日は白玉団子だった。よく小豆持ってきてたなぁ、って思っちゃった。果たしてタクミは何を持ってきているのだろうか。
「アヤメ、ちょっとあっち向け」
「え?」
タクミが指さしたのは私から見て彼の反対側。
「寝っ転がったから髪崩れてる」
「直してくれるの? じゃあお願いしま~す」
くるっとタクミに背を向けた。そういえば、初めて着物持ってきてくれた時もかんざし挿してくれたっけ。本当に手先が器用だ。
手のかかるやつだな、とつぶやいていた事はスルーしてあげた。私は心が広いんでね。
「俺さぁ、アヤメと会うまで自分と同じ黒髪の人と会った事なかったんだよね」
「裕孝さんは?」
「俺産まれた時はほぼ白髪だった。てか、お前じいさんの事裕孝さんって呼んでんの?」
「中村さんは何人もいるから気持ち悪いって言われた」
「……」
少し黙った後、ほら出来たぞ、と。今鏡がないからどうなってるのか分からないけど、触った感じ三つ編みで編みこんでくれたのかな?
「ひと編みひと編み愛情を込めて編みましたよ」
「いつぞやの私のマネ?」
「そ。あのコースターちゃんと使ってるよ。ナナミにいつも羨ましがられるけどな」
パトラさんに教えてもらいながら作ったコースター、使って貰えてたんだ。嬉しいな。お母様達に渡した時は家宝だとか何だとか言って額縁に入れられて飾られてしまっているけれど。使ってほしかったんだけどなぁ。まぁあげたものだから好きに使ってくれていいんだけど。
じゃあ、という事は私もお返しをしなくてはならない訳だ。なので彼の肩に手を付けてキスをした。ちょっと恥ずかしかったけど、あらら、やってみたかいがあった。
「あはは、驚きすぎ」
「……やったな?」
私の手を引っ張って来て、彼の方に倒れこんでしまった。支えてくれたけれど、彼にキスをされた。
「ここ、外なんですけど」
「最初にやったのはそっちだろ」
うん、まぁそうなんだけど。でもこれはやりすぎじゃない?
「おやつ」
「あーはいはい、食いしん坊お嬢様」
「それやだ」
「おやついらないの?」
「いる」
「あはは、素直でよろしい」
離してもらうために言っただけだし。決してそういうキャラじゃない、はず。
タクミがレジャー布を畳んでくれて、こっちって手を握って行き先を案内してくれた。庭の東屋だ。あ、マリアいた。けど、あの、なんでニヤニヤしてるのさ。……まさか、見てた? おのれ、タクミ。分かっててやったな?
さ、こちらにどうぞ。とまだニヤニヤしているマリアに椅子に座らされた。
「あっ! 寒天!」
「そ。フルーツ入れてみた」
今日のデザートは寒天でした~。この寒天の中に入ってる果物、なんだろう。見た事ないかも。ここ、馬車で一日の所だったけれど、手に入る食材とかは首都と違うのね。
いただきます、とフルーツを寒天の一緒に食べてみた。ん~甘ぁ。のど越しもいいし、味も最高。やばい、いくらでもいけちゃう。
これは……何となぁくみかん。見た目はキウイのような色。カットされてるからどんな形だったのか分からないけれど。そういう所は面白いよね。
「この果物食べたの初めてなんだけど、上手くいってよかったよ」
「へぇ~、知らなかったんだ」
「結構ここの食材知らないもんだらけだから試食ばっかだよ」
そっかぁ、知らない食材を使うとなると難しいよね。調理方法が分かってても食材が分からないと出来ないもん。そういう所もプロの技ってやつ?
ん?
「どしたの、タクミ」
「ん? あぁいや、ただの考え事」
「ふぅん」
なぁんかボーっとしてる。何かあったのかな。
まぁ、無理に聞く事はせずそのままそっとしておこうか。
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