30 / 43
◆28 もう少し隠すことをした方がいい
しおりを挟む
今日もまた、ご令嬢がブルフォード邸に来訪してきた。来ない事を願ってはいたが、また来るとは。もちろん、相手は俺より年下の婚約者のいないご令嬢。今度は何を言い出すかと思えば……
「結婚話などで今大変でしょう、1年間でいいので契約結婚なんて如何でしょう?」
いきなり、契約結婚を持ち出された。この前も契約結婚と言われたが……呆れてものも言えないな。あの手この手で俺を婚約者に、なんて、貴族の女性達が考える事は理解出来ない。
「今、公爵様との結婚を狙っている女性達が数多くいます。結婚話も今たくさん来ているのではないですか? 公爵様はお忙しい身ですから、これでは支障をきたしている事でしょう。ですから、私が期限付きの契約妻になりましょう。公爵様が妻を娶れば周りも静かになるはずです。風当たりは多少なりともあるでしょうが、それは私に任せてください。それくらい朝飯前ですから」
「はぁ……契約云々は置いておいて、その後離婚してから貴方はどうするつもりですか? 社交界じゃ良い目で見られないでしょう」
「その後の事はお気になさらないでください、考えがありますので」
「そう言われてしまっては困るのですが」
俺はその部分を聞かなければ何も答えられないんだが。
「……私は、早く実家を出たいんです。私の実家は、はっきり言って地獄です。父の命令は絶対、そんなルールが出来てしまっているのです。私は、そんな父から解放されたいと思っています」
「だから私を選んだ、という事ですね」
「はい」
前々から思っていたが、俺を利用しようとする女性達が多い、多すぎる。いや、それは口実だと分かっているが。ご令嬢の顔を見れば、心の声など丸分かりだ。少しは顔に出さない努力でもした方がいいぞ。
「契約後はこの社交界から消えますのでお気になさらないでください」
それがどういう意味なのか聞いているのだが。家出してどこか遠くでひっそりとスローライフを送る気か?
「残念ながら、私は結婚する気がありません。契約妻に、という提案ですが、必要としていませんので了承出来ません」
「ですが……」
「実家を出たい、との事でしたが、私の知り合いに婚約者を探している人物がいます。この国に影響力を持っている人物の嫡男です。私が縁談の場を作って差し上げますから、それまでお待ちください」
「でっでもっ」
「でも、なんでしょう。貴方の父、伯爵も絶対にNOとは言わないと思いますよ」
「わ、たしは……公爵様と……」
「私に契約妻は必要ありません。先程も申し上げたでしょう。ご令嬢は先ほど、私は結婚話を持ってくるご令嬢達に困っているという前提で話していましたが、一体誰がそう言ったのですか」
「えっ」
「全部憶測でしょう。私は何も言っていないのですから。勝手な思い込みで提案されるのは、正直迷惑です。それとも……あなたは私がご令嬢達が持ってくる結婚話で頭を抱え仕事もままならなくなってしまう程度の力量しか持ち合わせていない男だと、そうお思いですか?」
「あっ、いえ、そういう事ではっ……」
「お帰りください」
顔を青ざめたご令嬢は、カーチェスによって半ば強引に帰らせた。
はぁ、これで仕事がまた増えてしまった。後で手紙を書いて公爵達に連絡をしないといけないな。
ご令嬢に向かって偉そうな口ではあったが、ダンテは優秀だ。ここまで領地管理が出来ているのは、ダンテの力量あっての事だ。こんな皇族の血を受け継ぐ公爵家の当主を務める事が出来るのは、そういう事だ。俺の力じゃない。
まぁ、ご令嬢達には呆れているがな。別に危機感を覚えているわけじゃない。そうでなければここまで計画を進められないでいただろうな。
「ダンテ様、お客様がいらっしゃっております。別邸でお待ちになっております」
「……分かった」
俺が来訪者に対応している最中に来ていたのか。
別邸、という事は、来訪者は……
「来たか、ダンテ」
「……」
そう、第二皇子殿下、シリル殿下だ。いつもならここで「ご機嫌麗しゅう」と挨拶をし、「堅苦しい挨拶はやめろ」と返されるのがいつもの会話なのだが……このタイミングで殿下と会うと、もういいやと気が抜けてしまう。
ソファーに腰を掛けていた殿下の隣に、座らず膝を置き、殿下の首に腕を回して押し倒した。いきなりの事で彼も驚いただろうが、がっしりした身体の彼がしっかりと受け止めてくれた。
「……はぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
「ふっ、人気者は苦労するな」
「……」
殿下の前でこんな深いため息なんて吐いたことはない。それなのにこんな態度を取ってしまうというのは……ご令嬢達の馬鹿げたお遊戯に付き合わされて機嫌が悪かったからか。だいぶ怖がらせてしまったしな、さっきのご令嬢には。
だが、殿下に抱き着き……安心したからなのか、目をつぶっていると寝そうになってしまう。
そう、今俺は安心している。殿下の体温を感じて、落ち着くこの匂いに包まれて、聞き心地の良い声にささやかれて。
今の俺は、気が休まっていることを自覚している。……不服にも。
計画の邪魔をされないよう、俺はルアニスト嬢の婚約者である殿下に手を出した。殿下にのめり込むなんて事はないだろうと、思っていた。……はずなのに。
まだ、離れたくない。包まれていたい。そう思ってしまっている自分がいる。
……あ~~~~~~、なにやってんだろ。
「結婚話などで今大変でしょう、1年間でいいので契約結婚なんて如何でしょう?」
いきなり、契約結婚を持ち出された。この前も契約結婚と言われたが……呆れてものも言えないな。あの手この手で俺を婚約者に、なんて、貴族の女性達が考える事は理解出来ない。
「今、公爵様との結婚を狙っている女性達が数多くいます。結婚話も今たくさん来ているのではないですか? 公爵様はお忙しい身ですから、これでは支障をきたしている事でしょう。ですから、私が期限付きの契約妻になりましょう。公爵様が妻を娶れば周りも静かになるはずです。風当たりは多少なりともあるでしょうが、それは私に任せてください。それくらい朝飯前ですから」
「はぁ……契約云々は置いておいて、その後離婚してから貴方はどうするつもりですか? 社交界じゃ良い目で見られないでしょう」
「その後の事はお気になさらないでください、考えがありますので」
「そう言われてしまっては困るのですが」
俺はその部分を聞かなければ何も答えられないんだが。
「……私は、早く実家を出たいんです。私の実家は、はっきり言って地獄です。父の命令は絶対、そんなルールが出来てしまっているのです。私は、そんな父から解放されたいと思っています」
「だから私を選んだ、という事ですね」
「はい」
前々から思っていたが、俺を利用しようとする女性達が多い、多すぎる。いや、それは口実だと分かっているが。ご令嬢の顔を見れば、心の声など丸分かりだ。少しは顔に出さない努力でもした方がいいぞ。
「契約後はこの社交界から消えますのでお気になさらないでください」
それがどういう意味なのか聞いているのだが。家出してどこか遠くでひっそりとスローライフを送る気か?
「残念ながら、私は結婚する気がありません。契約妻に、という提案ですが、必要としていませんので了承出来ません」
「ですが……」
「実家を出たい、との事でしたが、私の知り合いに婚約者を探している人物がいます。この国に影響力を持っている人物の嫡男です。私が縁談の場を作って差し上げますから、それまでお待ちください」
「でっでもっ」
「でも、なんでしょう。貴方の父、伯爵も絶対にNOとは言わないと思いますよ」
「わ、たしは……公爵様と……」
「私に契約妻は必要ありません。先程も申し上げたでしょう。ご令嬢は先ほど、私は結婚話を持ってくるご令嬢達に困っているという前提で話していましたが、一体誰がそう言ったのですか」
「えっ」
「全部憶測でしょう。私は何も言っていないのですから。勝手な思い込みで提案されるのは、正直迷惑です。それとも……あなたは私がご令嬢達が持ってくる結婚話で頭を抱え仕事もままならなくなってしまう程度の力量しか持ち合わせていない男だと、そうお思いですか?」
「あっ、いえ、そういう事ではっ……」
「お帰りください」
顔を青ざめたご令嬢は、カーチェスによって半ば強引に帰らせた。
はぁ、これで仕事がまた増えてしまった。後で手紙を書いて公爵達に連絡をしないといけないな。
ご令嬢に向かって偉そうな口ではあったが、ダンテは優秀だ。ここまで領地管理が出来ているのは、ダンテの力量あっての事だ。こんな皇族の血を受け継ぐ公爵家の当主を務める事が出来るのは、そういう事だ。俺の力じゃない。
まぁ、ご令嬢達には呆れているがな。別に危機感を覚えているわけじゃない。そうでなければここまで計画を進められないでいただろうな。
「ダンテ様、お客様がいらっしゃっております。別邸でお待ちになっております」
「……分かった」
俺が来訪者に対応している最中に来ていたのか。
別邸、という事は、来訪者は……
「来たか、ダンテ」
「……」
そう、第二皇子殿下、シリル殿下だ。いつもならここで「ご機嫌麗しゅう」と挨拶をし、「堅苦しい挨拶はやめろ」と返されるのがいつもの会話なのだが……このタイミングで殿下と会うと、もういいやと気が抜けてしまう。
ソファーに腰を掛けていた殿下の隣に、座らず膝を置き、殿下の首に腕を回して押し倒した。いきなりの事で彼も驚いただろうが、がっしりした身体の彼がしっかりと受け止めてくれた。
「……はぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
「ふっ、人気者は苦労するな」
「……」
殿下の前でこんな深いため息なんて吐いたことはない。それなのにこんな態度を取ってしまうというのは……ご令嬢達の馬鹿げたお遊戯に付き合わされて機嫌が悪かったからか。だいぶ怖がらせてしまったしな、さっきのご令嬢には。
だが、殿下に抱き着き……安心したからなのか、目をつぶっていると寝そうになってしまう。
そう、今俺は安心している。殿下の体温を感じて、落ち着くこの匂いに包まれて、聞き心地の良い声にささやかれて。
今の俺は、気が休まっていることを自覚している。……不服にも。
計画の邪魔をされないよう、俺はルアニスト嬢の婚約者である殿下に手を出した。殿下にのめり込むなんて事はないだろうと、思っていた。……はずなのに。
まだ、離れたくない。包まれていたい。そう思ってしまっている自分がいる。
……あ~~~~~~、なにやってんだろ。
1,049
あなたにおすすめの小説
王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)
かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。
はい?
自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが?
しかも、男なんですが?
BL初挑戦!
ヌルイです。
王子目線追加しました。
沢山の方に読んでいただき、感謝します!!
6月3日、BL部門日間1位になりました。
ありがとうございます!!!
5回も婚約破棄されたんで、もう関わりたくありません
くるむ
BL
進化により男も子を産め、同性婚が当たり前となった世界で、
ノエル・モンゴメリー侯爵令息はルーク・クラーク公爵令息と婚約するが、本命の伯爵令嬢を諦められないからと破棄をされてしまう。その後辛い日々を送り若くして死んでしまうが、なぜかいつも婚約破棄をされる朝に巻き戻ってしまう。しかも5回も。
だが6回目に巻き戻った時、婚約破棄当時ではなく、ルークと婚約する前まで巻き戻っていた。
今度こそ、自分が不幸になる切っ掛けとなるルークに近づかないようにと決意するノエルだが……。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
美人なのに醜いと虐げられる転生公爵令息は、婚約破棄と家を捨てて成り上がることを画策しています。
竜鳴躍
BL
ミスティ=エルフィードには前世の記憶がある。
男しかいないこの世界、横暴な王子の婚約者であることには絶望しかない。
家族も屑ばかりで、母親(男)は美しく生まれた息子に嫉妬して、徹底的にその美を隠し、『醜い』子として育てられた。
前世の記憶があるから、本当は自分が誰よりも美しいことは分かっている。
前世の記憶チートで優秀なことも。
だけど、こんな家も婚約者も捨てたいから、僕は知られないように自分を磨く。
愚かで醜い子として婚約破棄されたいから。
【8話完結】勇者の「便利な恋人」を辞めます。~世界を救うより、自分の幸せを守ることにしました~
キノア9g
BL
「君は便利だ」と笑った勇者を捨てたら、彼は全てを失い、私は伝説の魔導師へ。
あらすじ
勇者パーティーの万能魔術師・エリアスには、秘密があった。
それは、勇者ガウルの恋人でありながら、家事・雑用・魔力供給係として「便利な道具」のように扱われていること。
「お前は後ろで魔法撃ってるだけで楽だよな」
「俺のコンディション管理がお前の役目だろ?」
無神経な言葉と、徹夜で装備を直し自らの生命力を削って結界を維持する日々に疲れ果てたエリアスは、ある日ついに愛想を尽かして書き置きを残す。
『辞めます』
エリアスが去った翌日から、勇者パーティーは地獄に落ちた。
不味い飯、腐るアイテム、機能しない防御。
一方、エリアスは隣国の公爵に見初められ、国宝級の魔導師として華麗に転身し、正当な評価と敬意を与えられていた。
これは、自分の価値に気づいた受けが幸せになり、全てを失った攻めがプライドも聖剣も捨てて「狂犬」のような執着を見せるまでの、再構築の物語。
【勇者×魔導師/クズ勇者の転落劇】
※攻めへのざまぁ要素(曇らせ)がメインの作品です。
※糖度低め/精神的充足度高め
※最後の最後に、攻めは受けの忠実な「番犬」になります。
全8話。
婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~
ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」
義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。
父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。
けれど――
公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。
王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。
さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。
そして下されたのは――家ごとの褫奪。
一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。
欲しがったのは肩書。
継いだのは責任。
正統は叫びません。
ただ、残るだけ。
これは、婚約を奪われた公爵令嬢が
“本当に継がれるべきもの”を証明する物語。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。
星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。
前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。
だが図書室の記録が冤罪を覆す。
そしてレイは知る。
聖女ディーンの本当の名はアキラ。
同じ日本から来た存在だった。
帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。
秘密を共有した二人は、友達になる。
人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる