魔人~気が付いたら魔人になってた~

やらお

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これが……私……?

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「……ここを少しいじれば……」

床に敷かれた魔法紙の上には二重魔法陣が描かれ、円形の陣の中に魔法言語がびっしりと詰め込まれている。

そこに魔法言語を一言追加する。
魔力を指先に集め、紙の上をなぞるとその文字を描くことが出来る。これは魔法陣学の基礎中の基礎であり、これが出来ない事には何も学ぶことは出来ない。

「ふひひ……これでこの陣がもっと強くなるはず……」

そして魔法言語を書き加えられた魔法陣が完成する。
我ながら、出来上がった魔法陣の美しさにため息を漏らさずにいられない。やはり魔法はこの世で最も美しい。

「では、行きますか」

魔法陣による魔法の事を陣魔法という。そして陣魔法を発動するには、その陣の上で自らの魔力を液体化させ一滴垂らす事が必要だ。

聞けば簡単そうだが、実際にはこの作業はどの工程よりも体力を使い、最も過酷な過程なのだ。まず魔力を液体化させる事が異常に難しい。言ってしまえば、大気を無理やり液体にするようなものなのだ。それはもう大変な作業だと分かってもらえたと思う。

しかし、私はもう長年も魔法の研究をしてきたのだ。
この程度朝飯前のお茶の子さいさいのさいなのだ。しかも、不思議なことに、最近になって更に魔力が増えたのだ。

魔力が増える適齢期は、10代から30代までの間だ。私も大いに経験した。それを過ぎるともうほぼ伸びない。だというのに、私は最近になってグンと伸び出したのだ。もう30代などとうに過ぎたのにだ。

いや、今はそんなことどうでも良い。
いかんせん歳を取ると思考があちこちに飛んでしまう。早くこの陣を片付けてしまわねば。

そう言って、私は陣の上に立ち魔力を指先から垂らす。一滴、液体化された魔力が重力に従い陣の真ん中へ落ちて行った。

すると、魔法陣に魔力が浸透していく。光が線の上を走り魔法陣全てをなぞっていく。いつ見ても、美しい光景だ。

そして全ての陣を魔力が浸透した。
魔法陣全体が大きく光りだし、もう今にもその魔法を発動させようとさせようとしている。

「きたきたきたー!」

年甲斐もなくワクワクしてしまうのはおそらく研究者のサガだろう。しかしながら、私はこの瞬間が心から大好きなのだ。

そして発動する魔法。あたりは真っ白な光に包まれた。
今回の魔法は、時空魔法の応用で作られた空間魔法で、この陣の上に異空間を作ると言うものだ。

そして光が治ると、陣の上に歪んだ空間が現れていた。

「やった!!!成功だ!!!」

これで、俺の今のところの研究は全て終わった。
はじめに詠唱魔法から始まり、舞魔法、武器魔法……などいくつもの魔法を研究した。途中で何度か挫折もあったが、研究の楽しさに勝ることはなかった。

「……終わってみると悲しいもんだ」

すこし、湿っぽい雰囲気になった。と言ってもこの研究施設には俺以外の人間は居ないのだが。みんな、家族が出来たとか、研究以外に大切な事を見つけただとか、あとは、死んだとか。色々な理由で消えて言った。

気が付いたら1人だった。そりゃはじめは寂しかった。けれどもうすっかり慣れたものだ。と言いつつも、それって何年前のことだろう。魔法の研究とは時間がかかるものなのだ、そういえばこれを初めて何年経ったのかもうすっかりわからなくなってしまった。

「……取り敢えず、顔でも洗ってくるか」

色々と思い出してしまった。かつての彼らはまだ元気だろうか、もう多分じじいだろうな。もう研究も終わったんだ、外に出て久し振りに会ってやろう。

「鏡を見るのも久しぶりだな……」

洗面所に行き、水道から水を出す。
すると何かおかしなものが見えた。

「……?な、なんだこれ……?」

流れる水の中に、小さな粒が見える。そしてそれは無数に存在しそれらがどんどんと流れて行っている。
それをすくってみる。よーく見てみるとそれは

「これ……魔素……?」

魔素というのはこの世に存在する物質に必ず含まれているものの事だ。しかし、これは肉眼で見る事は不可能なはずだ。どういう事だ……?

そして手に溜まった水を見ているとこれまたおかしなことにが付いた。

「なんだ……この手?」

水越しで歪んで見えるが、それは確かに魔紋だった。
手のひらに魔紋が刻まれているのだ。 

「ま、魔紋?おいおい、私の手はどうなっちまったんだ?それに私の目も……」

そこで私は、初めて鏡を見た。
そこには、今までのことが全部しょうもなく見えるほどの衝撃が存在していた。

明らかに、20代の頃の顔立ちの自分がいた。
しかも浅黒い色で、羊のような角を携えて。

「…………」

私は瞬時に理解した。



「魔人だ……」


私は、魔人になっていた
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